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バレーボール日本代表・西田有志 驚異のジャンプサーブがさらに進化した理由

2022 8/24 11:00大塚淳史
バレーボール日本代表の西田有志,筆者提供
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筆者提供

バレーボール世界選手権26日開幕

バレーボール男子の世界選手権が8月26日からポーランドとスロベニアで始まる。

日本代表は6、7月に行われた国際大会「ネーションズリーグ(VNL)」で9勝3敗の好成績で、初めて決勝トーナメントに進出した。準々決勝で東京オリンピック金メダルのフランスに敗れたものの、東京オリンピックに続くベスト8入りで、着実にチーム力が上がっている。世界選手権でもベスト8入りが期待される。

一方で、キャプテンであり攻守の要である石川祐希が、VNLのフランス戦前に左足首を負傷。長引いているのか、8月21日にあったイタリアとの親善試合でようやく途中出場して復帰はしたものの、まだ不安が残る。

石川の状態が不安視される中、活躍に期待が集まるのが西田有志だろう。身長186センチながら、海外の高いブロックをものともしないスパイクと、世界トップクラスで時速120キロを超えるジャンプサーブを武器に、まだ22歳ながら世界有数の選手となっている。

バレーボール日本代表の西田有志

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日本がメダル争いするような強豪国相手に勝利するために必須なのがサーブだ。VNLでも西田と石川がベストサーバーランキング2位、3位を占め、決勝トーナメント進出要因となっていた。

西田は、オランダ代表のニミルに次ぐ29点を決めているが、サーブ成功率だけ見ると18.24%でニミルの17.14%を上回り、ランキング上位者ではトップの数字だ。石川がどれだけプレーできるかわからない現状、西田のプレー、そしてジャンプサーブにはより期待がかかる。

ジャンプサーブの助走ポイントを変更

その西田のサーブだが、VNLを通じてさらなる進化が見えた。高速ジャンプサーブがより左右両サイドのライン際へ打ち込まれるようになり、その精度が非常に高くなっていたのだ。西田がコートの左側から対角線上に打ち込むジャンプサーブは、横に鋭く曲がっていくので相手は対処がしづらい。

一方で逆側の(サーブを打つ方から見て)左のライン際を狙ったジャンプサーブが、それまで以上に決まるようになっている。対角線上に打って右のライン際を狙うジャンプサーブとの組み合わせで、恐ろしさが倍増している。

バレーボール日本代表の西田有志

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7月頭にあったVNL大阪大会で、西田にこの点について質問すると、精度が上がった理由を明かしてくれた。

「多分場所を変えたからだと思います。それまでジャンプサーブを打つ時、6から助走していたのですが、5からの助走に変えました。きっかけはブラン監督から『トライしてみてはどうだ』とそうアドバイスされて、VNLからやり始めました」

ここでいう6や5というのはスロットのことで、バレーボールネットに正対してコートを9分割して左から5、4、3、2、1、0、A、B、Cと定めている。つまり6は5の1つ左のスロットになる。助走のポイントを1つ中寄りにしたことで、特に真っすぐ打ち込むジャンプサーブの、ライン際を狙った精度が高まった。

既に十分恐ろしいビッグサーバーがさらにレベルアップするとは、驚異の22歳としかいいようがない。世界選手権でもこの男がサーブで大暴れするのは間違いない。

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