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市場価値下落の久保建英21歳、レアルで活躍するために「進むべき道」

2022 6/4 06:00桜井恒ニ
久保建英,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

若手ひしめくレアル、全盛期はこれから?

5月29日に行われたサッカーの欧州チャンピオンズリーグ(以下、CL)の決勝では、優勝候補を次々撃破したレアル・マドリード(以下、レアル)と、ユルゲン・クロップ率いるリヴァプールが激突。レアルがGKティボー・クルトワのいつもどおりのハイパフォーマンスもあってリヴァプールの攻撃を無失点に抑える一方、21歳のヴィニシウス・ジュニオールが決勝点を挙げて勝利した。

今回CLを制したカルロ・アンチェロッティ監督は、2021年6月に復帰したばかり。ベテランと若手が融合したチームを見事に作り上げたが、ヴィニシウスやロドリゴ、カマヴィンガはまだこれからの選手だ。

主力のバルベルデは23歳で、存在感を見せつつあるダニ・セバージョスも25歳。エムバペの獲得にこそ失敗したものの、リーグ・アンのモナコで活躍する22歳の守備的MFオーレリアン・チュアメニの獲得などを模索している。チームとしての完成度は数年後により高まる気配がある。

マジョルカでは分からない久保の真価

そんなレアルが保有し、今季マジョルカでプレイした久保建英に関して、日本国内外のメディアの評価は「良くはなかった」という論調が多い。

スポーツ統計サイト「FBref.com」などによれば、久保の2021-2022シーズンのリーグ戦出場時間は、2019-2020シーズンの約2305分(35試合)に続く約1605分(28試合)。シーズン中盤の負傷の影響もあるが、守備重視のハビエル・アギーレ監督就任以後は出場機会が減少。残留がかかった大事な最終節では未出場に終わった。

欧州でのハイキャリアは、レアルからマジョルカに急加入した2019-2020シーズンで4ゴール・5アシストだった。今季はチーム事情もしっかり分かった上で加入して1ゴール1アシストと寂しい数字で終わってしまった。

市場でも、2020年の3000万ユーロ(当時レートで推定36億円)をピークに市場価値が年々下落。2022年夏現在は900万ユーロ(推定12億円)。欧州移籍後、最も低い数字だ。

マジョルカはもともと、全体的にパス・トラップの精度が低い。久保が好むバルサ風の細かいパス回しで相手を崩してゴールに迫る……という試合運びに長けていない。後方からのビルドアップもおぼつかず、気がつけば中盤を省略してロングパスを多用するラグビーサッカーになりがちだ。

久保は、マジョルカで自分の身に起こりうることを承知の上で、出場機会を優先して再加入したと思われる。しかしチーム戦術にフィットしない現状では、久保の真の実力が定まらない。

レアル水準では攻守ともに中途半端、課題は小柄をカバーするフィジカル

そんな久保にレアルで居場所はあるのか。

アンチェロッティ監督の戦術のベースには、まず守備がある。4-3-3の布陣で臨んだCL決勝も、久保がいたなら入るであろう右ウイングは、ボランチや右サイドハーフなど中盤で起用されるバルベルデだった。

立ち上がり、いつもどおり守備的なレアルは、ゲーゲンプレスで前のめりのリヴァプールに受けて立つ形だった。バルベルデも、左ウイングのヴィニシウスに攻撃を任せて守備的な立ち回りでチームに貢献した。

アンチェロッティに限らずどの監督にも言えることだが、現代サッカーは前線の選手も守備が求められる。レアルではヴィニシウス(17ゴール・10アシスト)&カリム・ベンゼマ(27ゴール・12アシスト)のように圧倒的な数字を残さない限り、守備が免除されることはないだろう。

久保も、数年前に比べて守備の意識が上がっていることは間違いない。ただし相手のパスコースを削る壁の役割をするだけで、タイミング良くボールを奪い切ることを狙った守備(6月2日のパラグアイ戦で堂安律が見せたような守備)ができているかと言えば難しい。フィジカルを向上させ、さらに強度の高い守備が求められる。

また、レアルには攻撃的なオプションとしてアセンシオとロドリゴも控えている。この二人は短時間で一発、二発を叩き込む可能性を秘めている。「FBref.com」におけるヴィニシウスのリーグ戦の得点期待値が13.1であるのに対し、アセンシオは7.4、ロドリゴは4.6、久保は3.1。ゴールをもぎ取る力がやや低い印象だ。

久保は被ファール数が多いことが有名で、独力で相手選手のイエローカードを誘うプレイができる。裏を返すと、リオネル・メッシのように相手DFを振り切る俊足がないため引っ掛かる。

また、久保は173センチ・63キロと小柄だ。パラグアイ戦では、三苫薫や堂安が相手のプレッシャーをはねのけるフィジカルの強さを見せたが、後半途中から入った久保はタックルされて体ごと浮くシーンもあった。

相手DFからすれば、久保は体をぶつけて潰せば決定的な仕事をさせなくて済む。“ファールでしか止められない選手”から、“ファールすれば止められるイージーな選手”になりかけている。その点から見てもフィジカルに課題がある。

アタッカーだがゴール・アシストを残せていない久保は、レアルの高い水準で考えると攻守両面において中途半端で、かなり厳しい立場だ。ジネディーヌ・ジダン前監督には好かれたが、レアルでプレイするには課題が多すぎて、アンチェロッティ監督が特別欲しがることはまだないだろう。

レンタル移籍ならスペイン国外も視野に入れるべき?

一部スペインメディアは、レアルが久保の再レンタルを画策していると報じている。

1年のレンタル期間でもコンスタントに試合に出場でき、かつ久保好みのポゼッションサッカーを信奉するクラブを探すとなると、スペイン国内だけでは数がかなり限られる。

スペインにこだわらず、フランス、オランダ、ポルトガルなどで研鑽を積むのも良いし、イギリスでフィジカルを鍛える手もあるかもしれない。古橋亨梧らが所属するスコットランド王者セルティックも面白い。とにかくパスをつなぐ(つなぐ能力がある)メンバーが揃うチームでないと久保の真価は発揮できない。

思い切ってレアルに復帰する博打もある。アンチェロッティ監督に指導を受けることで、ヴィニシウスのように覚醒するかもしれない。ただしEU圏外枠がヴィニシウス、ロドリゴ、エデル・ミリトンのブラジル人トリオで埋まっているため、今季の復帰はあまり現実的ではない。

久保も今年の6月4日で21歳になった。ヴィニシウスを筆頭に同世代が台頭する今、プレイ環境を一新して結果を出す時期にさしかかっている。

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