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東日本大震災から12年、羽生結弦が「満天の星」届ける特別なアイスショー

2023 3/9 06:00田村崇仁
羽生結弦,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

出身地の宮城で「3・11」に立つリンク

東日本大震災から12年となる3月11日、フィギュアスケート男子の五輪2大会連続金メダリストで昨年プロに転向した羽生結弦が、出身地の宮城県でセキスイハイムスーパーアリーナ(利府町)のリンクに立つ。

アイスショーのタイトル「notte stellata」はイタリア語で「満天の星」を意味する。当時16歳だった羽生は、仙台市のリンクで練習中に被災して不安な避難所生活を余儀なくされた経験を踏まえ、公式サイトに寄せたメッセージで「あの日、被災地を照らした満天の星のように希望を発信し、人々が少しでも笑顔になれるきっかけになれば」とショーヘの思いを込めた。

崩れた建物や破裂した水道管。停電で街の明かりも消え、絶望感の中、ふるさとで空を見上げると、満天の星が輝いていた。そこに「希望の光」を感じたのだという。

そんな忘れられない光景を胸に、大切な場所で特別なステージに挑む。3月10~12日の全3公演(Huluストアで独占ライブ配信)。地元宮城や福島などの被災地訪問を繰り返してきた羽生にとって、人々が笑顔になる「満天の星」を届けるショーになる。

被災地支援継続、トルコ地震にも寄付

被災地支援への思いはプロスケーターになっても続いている。

1月下旬、震災の風化防止と継続的な支援の呼びかけのため、東日本大震災風化防止イベント事務局を通じてメッセージを公開。震災当時の恐怖や不安な日々を振り返りながら「私自身、できる限りの支援金を、宮城県や仙台市、そして、被災した仙台のスケートリンクに寄付させていただいております。私の力は小さいと思いますが、少しでも貢献していけるよう、これからも継続的な活動を続けていきたいと思っております」と決意を新たにした。

トルコ・シリア大地震は3月6日で発生から1カ月が過ぎ、両国の犠牲者は5万2000人を超えた。美術展ナビによると、2月中旬には「羽生結弦展2022」のオリジナルグッズ販売売上から寄付して積み立てた災害救済基金から、1000万円をトルコ地震被災地の救援・復興に役立てることを決めたと発表された。

振り返れば、2014年ソチ冬季五輪から帰国した日本選手団のメダリスト会見でも、フィギュアスケートで日本男子初の優勝を遂げた羽生は、日本オリンピック委員会(JOC)から支給される報奨金300万円の使い道について「震災の寄付やスケートリンクへの寄付に使いたい」と述べている。当時から競技を超えた真っ直ぐな思いと姿勢は一貫したものだ。

体操界のレジェンド内村航平と「共演」も

さらに今回のアイスショーでは体操男子の五輪金メダリストでレジェンドの内村航平と初めて「共演」が実現する。 高難度の技で「美しい体操」を追求した内村と羽生は、競技の枠を超えて「同じ価値観」を共有してきた間柄でもある。

新たなステージに臨む夏季五輪と冬季五輪の金メダリスト2人のコラボはどんな化学反応を起こし、どんな相乗効果が生まれるのか―。

羽生はかつて震災から10年で「オリンピックというものを通して、フィギュアスケートというものを通して、被災地の皆さんとの交流を持てたことも、つながりが持てたことも、笑顔や、葛藤や、苦しみを感じられたことも、心の中の宝物です」と被災者にエールを送っている。競技者としても数々の試練や葛藤を乗り越えた今、プロとしての新境地を開拓する特別なショーがいよいよ幕を開ける。

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