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男子バレーのエース石川祐希、セリエA7季目は「過去イチ悔しい」

2022 5/15 06:00米虫紀子
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自身最高の5位もプレーオフ準々決勝で敗退

バレーボールの世界最高峰リーグと言われるイタリア・セリエAでの7度目のシーズンを終えた日本代表主将・石川祐希が、5月11日、オンラインで会見を行った。「2021-22シーズンを一言で表現すると?」と問われた石川は、開口一番に言った。

「過去イチ、悔しいシーズンでした」

石川は「世界のトッププレーヤーになること」、「イタリアのリーグで優勝すること」を目標に掲げている。その最終目標へのステップとして、今季は「リーグで準決勝進出」を目指していた。

トップバレー・ミラノでプレーした今季、レギュラーラウンドで自身最高の5位となり、その目標に近づいたかに見えた。しかしプレーオフは準々決勝でモデナに敗れ、準決勝進出は果たせなかった。

ベストゲームであり、一番悔しい試合として石川が挙げたのが、4月3日に行われたモデナとの準々決勝第2戦だった。モデナのホームで行われた第1戦に敗れて後がなくなったミラノは、ホームで行われた第2戦、第1、3セットを制して先に2セットを奪った。だが第4セットを失い、フルセットの末に敗れた。

「勝てば次の試合がある、負けたら終わりという試合だったので、プレーの良し悪し関係なく、勝たなければいけない試合だった。窮地に立たされた時に、力を発揮できるかできないか。自分のプレーだけじゃなく、チームを勝たせることができるかできないかも問われていた試合だったので、そこで結果をつかめなかったことが、今でも非常に悔しいです。僕自身はパフォーマンスが非常に良かったので、だからこそ余計に悔しい」と振り返る。

悔い残る準々決勝第2戦の第5セット

石川が特に悔やむのが、第5セットの最後のシーンだ。

第5セットはリードされる展開だったが、10-13からミラノのオポジット、ユーリ・ロマノの連続サービスエースなどで3連続得点を奪い13-13と追いついた。モデナは浮き足立っており、そのまま一気に押し切りたいところ。再びユーリの強力なサーブで相手を大きく崩し、チャンスボールが返ってきた。

だが、そのチャンスボールをオポジットのユーリが取りに行ってつぶれ、ブロックチェンジして前衛のライトにいたアウトサイドのトーマス・ジェスキーが苦し紛れに打ったスパイクがブロックに捕まった。絶好のチャンスを逃すと、最後はユーリのスパイクがアウトとなり、13—15で敗れた。

この場面を石川は今も鮮明に記憶している。

「13-13と追いついて、そこからまたサーブで崩して、ブレイクするチャンスがあったのに、そこで取りきれなかった。その最後の2点に関しては、僕はボールに1回も触っていないので、そこに絡めなかったのも非常に悔しいなと思っていますし、もっとできることがあったんじゃないかと、この経験をこれから先につなげるために、試合が終わってからもずっと考えていました。

あの場面(13-13)は、ユーリ選手が非常にいいサーブを打っていたので、次も崩せるだろうなと想定していたんですが、相手からチャンスボールが返ってきた時に、ユーリ選手がレシーブして、その時の体勢もあまり良くなかったし、返球の質も良くなかった。あのボールは(ユーリの隣にいた)リベロも取ることができた。事前に、『次も(相手が)崩れるから、チャンスボールが返ってきた時のために、ポジションしっかりしておけよ』と確認しておくだけでも変わったと思う。

それに、前衛がブロックチェンジしていて、セッターがレフト側にいたので、(後衛にいた)僕が『パイプじゃなくてレフトから入るよ』とセッターに事前に伝えていれば、セッターも選択肢が広がったと思う。もっとみんなに確認したり、事前の準備、コミュニケーションが必要だった。そういうところが足りなかったのかなと思います」

単に自分のプレーをすればいいという立場ではなく、チームをコントロールする、できる立場にあるからこその悔いでもある。

パリ五輪に向け代表合宿合流へ

石川は中央大学在学中からセリエAでプレーし、技術力やフィジカルの強さを着々と積み上げてここまできた。今、世界トップレベルの選手たちと比べて足りないものは、「勝つ経験」だと言う。

「負けて学ぶことももちろんあるんですけど、勝って学ぶことのほうが多いと僕は思っている。やっぱり勝って学んだほうが成長スピードも早いと思います」

来季の所属先はまだ決まっていないが、イタリアでのプレーを希望している。これまでは試合に出られる環境を重視しながら、セリエAの下位チームから中堅チームへとステップアップし、4強と呼ばれるモデナ、ペルージャ、チビタノーバ、トレントに立ち向かってきた。今後は、「勝つ経験」をより得られる強豪チームに身を置くことも選択肢に入ってくるかもしれない。

その前に、2024年パリ五輪に向けた代表シーズンが始まる。すでに代表合宿は始まっており、石川もまもなく帰国し、合流する。今シーズンは、東京五輪メンバーのオポジット・西田有志、アウトサイド・髙橋藍が初めてセリエAでプレーし、セッターの関田誠大もポーランドリーグで過ごした。

石川は「引き続き(日本代表は)個が活躍できるチームであり続けたい。今回は西田選手、髙橋選手、関田選手と、海外でシーズンを過ごした人たちも多いので、僕が求めることや、こうしたいなという思いに対して、理解してくれると思う。そういう選手たちと強いチームを作っていきたい。僕だけじゃなく、他の選手たちの中にも、チームを引っ張ってもらえるリーダーをもう1人、2人作りたいなと思っています」とビジョンを語る。

海外経験を経た選手たちとの再結集が、日本代表にどんな進化をもたらすのか、楽しみだ。

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