「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

「荒れる名古屋」で4大関不在の珍事 鶴竜はジンクスを破り優勝

2019 7/23 07:00橘ナオヤ
土俵ⒸIrene M M/Shutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸIrene M M/Shutterstock.com

「荒れる名古屋」は大関不在、2横綱が牽引

「荒れる名古屋」と呼ばれるが、令和になっても波乱を生んだ。それは、4人の大関全員が休場したこと。場所を引っ張った2横綱とは対照的なものとなってしまった。

優勝争いは横綱鶴竜と白鵬の一騎打ち。鶴竜が千秋楽の結びの一番、横綱同士の直接対決で白鵬を下して、見事に賜杯を手にした。成績は14勝1敗。横綱在位32場所目にして7場所ぶり6度目の優勝だった。

対する大関の豪栄道、高安、貴景勝、栃ノ心の4力士全員が休場し、千秋楽の土俵を踏むことはなかった。

カド番の貴景勝は全休。これで通算3場所目の休場となった。夏場所の休場理由は右膝内側側副靭帯損傷。これは5月場所で痛めた箇所だ。カド番での全休のため、大関陥落が濃厚だが、まだ22歳と若く、無理をして力士生命を短くするよりはじっくり治療すべきだろう。5月場所に再出場して失敗したため、焦って出場しても良いことはないとわかっているはずだ。

栃ノ心は6連敗後の7日目から途中休場。古傷の左肩と右膝の負傷が原因とされる。栃ノ心は春場所以来通算9度目の休場。2013年夏場所に右膝に大怪我を負って途中休場して以降、3場所連続で全休し幕下まで転落。その後見事に幕内に返り咲いたが、この時の右膝の怪我はその後もたびたび栃ノ心を苦しめており、今回も再発してしまったようだ。

豪栄道も3勝5敗と負けが込んだ9日目に休場。右肩に全治1ヵ月の怪我を負い、栃ノ心とともに夏巡業参加も危ぶまれる。豪栄道は昨年11月場所以来となる8度目の休場となった。

高安は11日まで土俵に上がり、8勝3敗と勝ち越しを決めていたが、こちらは左ひじを負傷し12日目から休場となった。昨年夏場所以来となる通算5度目の休場。こちらも夏巡業は見送り、途中参加を模索することとなった。

安定の鶴竜と不安定な白鵬

優勝争いを演じた両横綱にとって、名古屋場所は対照的な場所となった。鶴竜は場所前に腰を負傷、一方の白鵬は3月場所に痛めた右腕に不安を残して臨んだ場所だった。どちらもけがを押しての出場だったが、鶴竜は速攻で勝負を決める戦いに努めた一方で、白鵬は毎日どこか苦しい取り組みが続いた。

鶴竜にとっては強い覚悟で臨んだ名古屋場所だった。名古屋は鶴竜にとって「鬼門」とまで言われる場所で、過去3年連続で途中休場、優勝経験無しと、苦い思い出ばかりが募っている。鶴竜自身、「名古屋の人に申し訳ない気持ちがあった」と語るなど、名古屋での活躍を胸に誓っていたようだ。

そして2横綱とはいえ、白鵬には通算7勝41敗と大きく負け越していた。優勝回数42回を誇る大横綱が相手だったが、早めに動きを見せ、手負いの白鵬が力でねじ伏せてくる前に寄り切った。幕内通算1000日目という節目を迎えた鶴竜は、ジンクスを破り名古屋で賜杯を掲げ、優勝回数で歴代21位タイに並んだ。

鶴竜の奮闘、若手の奮起が大関不在をカバー

休場による大関不在は18年5月場所以来だが、4人以上の大関が休場するのは、昭和以降で初の事態となった。この結果、両横綱を脅かす存在はいなくなってしまった。そんな中、横綱以外で名古屋場所を盛り上げたのは、勢いのある番付下位力士たちだった。

特に前頭16枚目の照強は12勝3敗と結果的には白鵬と同じ星取りと健闘し敢闘賞も受賞。前頭7枚目の友風は鶴竜に唯一土を付け、11勝4敗と2桁勝利し、殊勲賞を受賞した。また技能賞を手にした炎鵬は小柄な身体で大型力士を倒す様子が話題となった。

しかし、大関が横綱に挑む姿が無ければやはり場所は盛り上がらない。次の秋場所は2か月後。この期間で成長する力士、調子を取り戻す力士が多く「再起の場所」として知られている。4大関は秋に再起を果たせるか。