混戦必至の1部リーグ 開幕戦は2大学に注目
第94回関東大学バスケットボールリーグ戦が8月25日に駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場(東京都世田谷区)で開幕した。2部が先駆けてスタートし、1部は9月1日から。1部は2日までに各大学2試合を消化し、昨年の全日本大学選手権(インカレ)を制した大東文化大学や過去5年で3度のリーグ優勝を誇る東海大学などが連勝した。一方で、昨年のリーグ覇者である拓殖大学や、2位の専修大学、4位の青山学院大学などが連敗を喫した。
今季から2大学増やして12大学に編成された1部リーグ。1大学あたりで考えれば前年に比べ4試合増加した。選手にかかる負担やケガに対するリスクは上がるかもしれないが、中身のある緊迫した試合を多く行うことで強化につながるとしている。
12大学に増えた1部リーグ戦は、昨季よりも混戦が予想される。その証拠に、春に行われた第67回関東大学バスケットボール選手権大会の結果を見てほしい。準決勝の2カードはともに得点差はわずか1、準々決勝も4試合中2試合が1点差で終えている。つまり、各大学の実力差は拮抗していると言っても過言ではない。
そんな中、昨季、9位に終わり2部との入れ替え戦でぎりぎり1部に踏みとどまった東海大学と、リーグ戦2位と惜しくも優勝を逃し、今季こそ優勝を狙いたい専修大学、この2大学に注目した。
Ⓒマンティー・チダ
昨年リーグ覇者・拓殖大学に完勝 連勝発進の東海大学
東海大学は過去5年で3度のリーグ優勝を誇り、Bリーグにも数多くの選手を輩出している。しかし、昨季は立ち上がりの悪さも響き、リーグ戦7勝11敗という成績に終わった。さらに、陸川章監督自身が、昨年開催された第29回ユニバーシアード競技大会日本代表HCとして、代表活動に帯同し主力も代表に召集されていたので、東海大学としてのチーム作りが思うように進んでいなかった。
昨季の反省を踏まえ、今季は「6月からチーム練習をスタートさせた」と陸川監督。平岩玄、西田優大、大倉颯太、八村阿蓮がU22日本代表(8月に韓国で開催された2018アジアパシフィックユニバーシティチャレンジ)へ、津屋一球もデフバスケットボール男子A代表(7月に米国で開催された第3回U21デフバスケットボール世界選手権)に派遣されることが決まっていた。「大会が近くなり、ファンダメンタル(基礎練習)を多くした。手応えを感じている」とチーム作りがうまく進んだようだ。
チーム状況の好仕上がりは早速開幕戦に現れた。顔を合わせたのは昨季リーグ王者の拓殖大学だった。主力の#23ゲイ・ドゥドゥが不在だが、#1岡田侑大を中心に昨季のメンバーが多く残る。
1Q立ち上がりに、東海大学はディフェンスファウルからフリースローを献上し先制を許したが、オフェンスリバウンドから#10鶴田美勇士がシュートを入れて勝ち越しに成功。伝統の「ディフェンスの東海」らしく激しい守備を見せ、攻撃では自陣エンドラインからの縦パスに反応した#25平岩が得点。さらに#28津屋が3pシュートを2本連続で決めるなど優位に進めていく。守備も手を抜かず、残り6分9秒に拓殖大学がタイムアウトを請求するまで、相手には開始早々のフリースローによる1点のみに抑えていた。
タイムアウト後、東海大学は平岩のインサイド、津屋の3pシュートなどでさらにリードを広げる。拓殖大学は岡田の個人技に頼る場面が目立ち、得点を重ねることができず、1Q終了時点で31-9と東海大学が拓殖大学に大きくリードした。
前半だけで59得点を獲得し、拓殖大学に22点しか許さなかった東海大学。3Qで平岩が得点源となりリードを33点まで広げた。終わってみると116-76で東海大学が開幕戦を100点ゲームで勝利を飾った。
立ち上がりの貯金を生かして勝利を飾った東海大学だったが、後半だけで54失点、試合を通じては70点台の失点に終わった。「3Qが駄目だった。後半を迎える前に目標を失点に向けたが、点差が離れて油断したのか初めの1歩が遅れた」と課題をあげた。
今季は12チームになり4試合増えることになるが、陸川監督は「うちはどんどん選手を変えているので、試合を通じて戦力は落ちないと考えている。9月は14試合あるが優位だと思っている」と自信をのぞかせた。そして、2日目は明治大学を下し開幕から連勝スタートに成功した。
言葉一つとっても、陸川監督は自信を持っていた。昨季のように入れ替え戦に回りたくないという想い、以前「大混戦の中で戦う事は楽しい」とコメントした様に、混戦模様を抜け出して栄冠を勝ち取りたいという想い。「ディフェンスの東海」復活を大いに感じた開幕戦だった。
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連敗スタートの専修大学
前年インカレ覇者の大東文化大学と昨季リーグ戦2位に躍進した専修大学の試合は、開幕戦屈指の好カードとなった。
「モッチ・ラミンのところ以外は、ほぼ予想通りの展開だったが、予想できないところもたくさんあった。盛實海翔、アブ・フィリップは警戒していた」と大東文化大学・西尾吉弘監督が少し笑みをこぼしながらコメントする。「ホッとした」というのが正直なところだろう。
一方の専修大学は#34盛實の個人技、#30フィリップのポストプレーやリバウンド、2年生ながらチームの司令塔を担う#88重冨周希など、高校時代でも沸かせた選手たちが中心だ。それぞれが一人で打開できる力を兼ね備えており、勢いに乗せると手が付けられない。
それは試合展開にも表れていた。1Q立ち上がり、大東文化大学はモッチがポストプレーから得点し先制すると、7点リードまで広げる。しかし、専修大学は#30フィリップがシュートを入れてからは、じわりじわりと点差を詰めて、終盤には盛實の3pシュートが炸裂し逆転に成功して1Qを終える。
2Q・3Qで逆転に成功した大東文化大学は7点リードして4Qを迎える。すると、専修大学はケガから復帰したばかりの#12西野曜がゴール下で存在感を発揮する。「4番ポジションでは優位に立てる。西野で優位に立てることを、西野も含めチーム全員に理解させた」とは佐々木優一監督。西野はゴール下で粘りを見せ、相手のファウルから獲得したフリースローを確実に決めて10点ビハインドのまま大東文化大学に喰らいついていく。
西野の粘りは功を奏し、バスケットカウントを含め5点を稼ぎ7点ビハインドまで持ち込む。「全員が理解をして攻めることができた。試合の中で成長出来ていた。状況によって対応できたのは良かった」と佐々木監督も手応えを口にする。
その後、盛實が3pシュートを沈めて、相手のディフェンスファウルから獲得したフリースローを着実に揃えて逆転に成功する。しかし、タイムアウトで気持ちを切り替えた大東文化大学が、モッチと#12熊谷航の得点で再度逆転に成功して1点差で辛くも逃げ切った。
試合後、佐々木監督は「久々の公式戦で、正直最初は浮ついていた。攻撃がうまくいかない中でも、守備で頑張ってきて1点ずつというのはできた」と試合を通じて手応えも感じていた。そして、課題にしていたのが「リバウンド」だと話す。
オフェンスリバウンドは専修大学の14本に対し、大東文化大学は21本に終わった。「相手のオフェンスリバウンドを半分に減らせれば、イニシアチブは取れたかな」と無念そうに振り返る。
「力のあるチームが相手だったので、どういう状況になるのか?選手も我々も不安があった。しかし、やることを整理してやり切れば十分に戦えるし自信になったと思う。ただ、黒星ではなく白星をつけることが大事だ」と話し、選手たちには気持ちを切り変えることを促した。残念ながら2戦目も白鴎大学に敗れ連敗スタートとなったが、始まったばかりでまだ20試合ある。開幕戦の敗戦を経験として生かせるよう、今後の躍進に期待したい。
Ⓒマンティー・チダ