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国内リーグの合併へ道開くか、FIFAが方向転換へ

2020 1/11 06:00Takuya Nagata
ジャンニ・インファンティーノFIFA会長Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

国単位から複数国での開催も可、FIFA会長が一石投じる

国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長は、原則的に国単位で行われている国内リーグについて、今後は大規模な合併も承認する構えを見せている。

前任者のゼップ・ブラッター氏、そしてヨーロッパを管轄する欧州サッカー連盟(UEFA)は、その様な動きに頑なに反対してきた。インファンティーノ会長の提案が、現実のものになれば、世界のリーグは今後、大きく変貌していくことになるだろう。

FIFAがクロスボーダーリーグへの再編承認へ

ジャンニ・インファンティーノFIFA会長「打開策はクロスボーダーリーグしかないかもしれない。欧州、そしてアフリカもこれを検討する必要があるでしょう。この件について、研究する責務があると考えています」

欧州等で、これまでも国境をまたいだリーグ創設の提案が出てきたが、それは一体なぜなのだろうか。その大きな理由が、欧州5大リーグ、イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスに対抗するためだ。

UEFAには55の国・地域が加盟しているが、小国のクラブが大国のクラブと経済的に同等のレベルで競争することは難しく、小国のクラブに有望な選手が現れるとたちまち青田刈りされるなどの問題がある。戦力差も年々拡大しており、UEFA最大の大会である欧州チャンピオンズリーグでは、本戦に出場できれば大成功で、決勝トーナメント進出は夢のまた夢というのが現状だ。

例えば、クロアチアは代表単位で見ると強豪国で、代表チームはイングランド代表と比べても勝るとも劣らない。しかし、代表の主力選手のほとんどが国外、すなわち欧州主要リーグでプレーしている。イングランドの人口が5000万人以上いるのに対して、クロアチアはその10分の1の500万人にも満たない。どんなにいい選手がいても、オーディエンスの規模に圧倒的な差がある。それは、入場者収入にとどまらず、グッズ販売、スポンサー契約料、放映権料などに大きく影響する。

欧州主要リーグは、世界中に視聴者がいるため放映権収入も桁違いだ。それと比較して小国のリーグの放映権は、すずめの涙ほどのもの。この愕然とする格差を是正すべきとの声は、欧州内で年々大きくなっており、UEFAや他の欧州の統括団体の間で議論が続けられている。

UEFAとしては、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグといった欧州大会の拡充を進めており、分配金は小国のクラブの貴重な収入源になっている。しかし、やはりサッカー競技の基本は国内リーグだ。イングランドやドイツなどのリーグとクロアチアやボスニア・ヘルツェゴビナなどのリーグでは市場規模に雲泥の差があると言わざるを得ない。

小国リーグのボトムアップを支援、主要リーグ切り崩しなるか

ジャンニ・インファンティーノFIFA会長は次のように語る。

「プレミアリーグは最も成功している大会であり、素晴らしい大会とプロダクトを生み出したことを祝福します。向こう100年間、トップの座にあり続けたいと間違いなく考えているでしょう。

一方で、他にもトップに上り詰めたいという人々はいます。世界のサッカーの発展に多くのメリットを与えられるトップの人々から何も奪うことなく、他の人々により良い方策を提供することは、出来ないでしょうか。

誰かを引きずり下ろす、ということではありません。むしろ今日、低迷している人々をもう少し上に引き上げるということであり、あらゆる人々と、ざっくばらんに議論したいと思います。その結果が、どうなるか考えてみましょう」

ここに来て、大会の在り方をめぐり議論が繰り広げられている欧州に対して、FIFAが上から大きな石を放り込んできた格好だ。この波紋は、国内リーグの今後の行方を大きく左右するものになるかもしれない。