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FIFA The Bestはファン・ダイクが大本命 メッシ・ロナウドの逆襲はあるのか

2019 9/19 06:00橘ナオヤ
オランダ代表リヴァプールのヴィルジル・ファン・ダイクⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2強体制の終焉か、健在を示せるか

国際サッカー連盟(FIFA)が主催する最優秀選手賞「ザ・ベスト・FIFAフットボールアウォーズ(The Best)」の受賞式が、9月23日に行われる。同賞は各国代表チームの監督とキャプテン、各国のサッカー記者、そしてファンによる投票でシーズン最優秀選手を選出するもの。

今年の最終候補3名は、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル/ユヴェントス)、リオネル・メッシ(アルゼンチン/バルセロナ)、そしてヴィルジル・ファン・ダイク(オランダ/リヴァプール)だ。8月に発表されたUEFA最優秀選手賞でも3人は最終候補に名を連ねており、まさに今年を代表する3選手ということになる。

1年前の2018年はロナウド、モハメド・サラー(エジプト/リヴァプール)を抑えてルカ・モドリッチ(クロアチア/レアル・マドリー)が受賞し、10年にわたり続いたロナウドとメッシの2強体制に風穴を開けた。

現役最高センターバックが最有力

FIFA The Bestを受賞するのはファン・ダイクが最有力という見方が多い。

The Bestもファン・ダイクが最有力候補という見方が多い。チームタイトルはプレミアリーグこそ2位で終えたが、欧州レベルではUEFAチャンピオンズリーグ、UEFAスーパーカップを獲得。個人賞でもUEFA年間最優秀選手賞とUEFAクラブ最優秀DFを受賞している。

イングランド国内でも、プレミアリーグ年間最優秀選手賞を獲得。さらにイングランドの選手連盟であるプロフェッショナル・フットボーラーズ・アソシエーション(PFA)が主催する年間ベストイレブン、年間最優秀選手賞に選ばれた。

同僚のサラーやサディオ・マネ(セネガル)やロベルト・フィルミーノ(ブラジル)らフォワード陣ではなくファン・ダイクが選ばれたことからも、評価の高さを窺い知れる。代表ではUEFAネーションズリーグ準優勝に貢献するなど低迷期を脱したオランダ代表を最終ラインで支えた。

優れた対人能力、強靭な肉体による空中戦の強さに加え、スピードやテクニックも兼ね備えており、現役最高のセンターバックとの呼び声が高い。センターバックでThe Bestを獲得すれば、前進のFIFA年間最優秀選手賞を含めると2006年のファビオ・カンナヴァーロ氏以来の快挙となる。

カンナヴァーロ氏はワールドカップドイツ大会でイタリア優勝に貢献したことが評価された。ワールドカップではないが、ファン・ダイクも2年連続でCL決勝を経験し、今年は優勝を達成した。また欧州、国内での個人賞を複数獲得していることからも、その能力への評価の高さは明らかだ。タイトルの質と数、パフォーマンスの面でも最有力と言って良いだろう。

FW優位の個人賞でメッシが返り咲くか

対抗馬はメッシだろう。昨年は主要な国際レベルでの個人賞では最終候補に残らなかったが、今年はここまで2つの賞で最終候補に名を連ねた。

リーガ・エスパニョーラでは36点を決めピチーチ(得点王)を獲得、リーグタイトルも手にした。欧州レベルでもヨーロッパゴールデンシュー、UEFAクラブ最優秀FWと個人賞を受賞。ただCLでは12ゴールで得点王に輝いたものの、チームはベスト4止まりで、4年連続で欧州タイトルから遠ざかっている。

アルゼンチン代表でも、コパ・アメリカで3位に終わった。バルサではチームを頂へと導きいたものの、欧州ではあと一歩。そして代表では期待を一身に受けるも結果を出せなかった。The Best はCLタイトルを決定打にロナウド、モドリッチが手にしていた。その流れをくむのであれば、クラブタイトルひとつに終わったメッシはタイトル面のインパクトが弱い。

ただ、The Bestをはじめ個人賞はフォワードに有利と言われる。好守備や好セーブが売りのDF・GKはそれ以上に失点シーンが印象に残りやすい。対してフォワードは、ゴールという勝利に直結する数字を持ち、シーンとしても印象に残りやすいプレーをするからだ。

リーガとCLで得点王に輝き、タイトル数でもロナウドを凌ぐメッシが、いまだ彼の時代が終わっていないことを示せるか。

確かな結果を残すもインパクトに欠けるロナウド

最終候補で一番難しいのはロナウドか。昨年に続き今年も最終候補に名を連ねたポルトガル人ストライカーは、セリエA初挑戦となった18‐19シーズン、リーグ4位となる21ゴールを記録した。ユヴェントスのセリエA8連覇に貢献したほか、CLではベスト8で敗退したものの、チーム最多の9ゴール。この活躍からセリエA年間最優秀選手賞を受賞している。ただクラブタイトルはスクデットのひとつのみで、得点王に輝いたわけではなく、突出した成績を残したとは言い難い。

ただ、ファン・ダイク、メッシとは異なり、ロナウドは代表としてタイトルを獲得している。初開催となったUEFAネーションズリーグ王者だ。2016年の欧州選手権に次ぐ欧州タイトルの連続優勝を果たしたポルトガル代表で、主将として精神的にもプレーでもチームを引っ張った。

セリエAとCLで一定の結果を出し、代表でタイトルを手にしていることを考えれば、最終候補に選ばれたことも頷ける。ただ、ファン・ダイクやメッシほどのインパクトを与えられたとは言い難く、三番手と見るのが妥当だ。

昨年The Bestを獲得したモドリッチは、結局UEFA最優秀選手賞、そしてバロンドールも総なめにした。主要な個人賞が2年連続でメッシ、ロナウド以外の選手の手に渡ることがあれば、それはサッカー界が2人の時代から次へと移行していることを意味する。注目のThe Best発表は9月23日だ。