規律を守ったサモアに手こずったが、要所で加点し快勝
ラグビーW杯で3連勝中の日本は10月13日に日産スタジアムで、目標のベスト8をかけてスコットランドと戦う。大一番を展望する前に、まずはサモア戦を振り返りたい。
日本に勝てばまだベスト8進出の可能性があったサモアは、ロシア戦、スコットランド戦のような規律を守らないプレーが極端に減り、密集への働きかけも早く、日本の反則を誘い、着実に得点してきた。しかし、日本はそれ以上に冷静な試合運びだった。
両チームのPG合戦で9-6と日本リードの前半24分、シンビンで相手が一人少ない時間帯のアタックだ。確実にボールをつなぎ、しっかりとギャップを見つけ、CTBラファエレティモシーが初トライを奪い、ゴールも決めて16-6とした。
後半は、それがさらに顕著だった。54分、ラインアウトからモールを押し込みナンバー8姫野和樹がトライ、ゴールも決まって26-12となった後、サモアのキックオフをリーチマイケルがキャッチミスした。サモアがボールを奪い、突進を繰り返してきたが、日本のディフェンスは乱れず、しっかりタックルを決め続けた。
約2分後、オフサイドの反則を犯したがトライが欲しいサモアはスクラムを選択。日本はこのスクラムをめくり上げ、直後の密集でサモアの反則を誘った。「取り返されてはいけない時間帯」を守り切ったのだ。
サモアの必死の攻撃は続き、そこから約15分後にようやくゴール前のラインアウトからCTBヘンリー・タエフが日本のDFラインを突破してトライを奪い、ゴールも決めて7点差としたが、その直後、日本は鮮やかな連続攻撃でアイルランド戦に続いて途中出場の福岡堅樹が右スミに飛び込んだ。まさにあっという間の得点だった。
ようやく取ったのにすぐ取り返されたサモアの精神的なダメージは大きい。事実上の勝負を決めたこのトライまでの約20分間に現日本代表の強さが集約されている。これで「もう一つトライを取ってボーナスポイントを!」と士気が高まり、ノーサイド直前に達成できた。
スコットランドはほぼ2軍でロシアを完封
さて、台風の影響が心配だが、13日に対戦するスコットランドは9日にロシアを完封した。しかも主力を温存しながら9トライを奪って61-0と一蹴し、日本戦はベストメンバーが休養十分で出場してくる。
ロシア戦を見た限りでは、高温多湿の日本の気候にも慣れ、むしろこのところ涼しくなってきたことで1戦ごとにパフォーマンスが向上してきたように見える。それに初戦のアイルランド戦完敗の後は最終戦の日本戦にフォーカスしてきたことは明らか。日本の戦力、戦術は徹底的に分析されているはずだ。
日本の対応力が試される
日本の最も不安な点はバックスリー(WTB、FB)のキック処理だ。
スコットランドは様々なキックを上げてくると予想される。当然、日本も対策は立てているだろうが、いかんせん、松島、福岡以外は経験値が低い。
また世界有数のハーフ団であるスコットランドのSHグレイグ・レイドロー、SOフィン・ラッセルは視野も広く、自由にさせたら大変やっかいだ。日本のFWが前に出てプレッシャーをかけたいが、そうさせてくれるほどスコットランドFWも弱くはない。モールも警戒だ。
つまり、整理すると、可能な限りスコットランドのハーフ団を自由にさせないことが一番だが、仮にある程度自由にさせることになってもその後、的確な判断でピンチを未然に防げるかどうかが大事なのだ。キック処理同様、SO田村の真価も問われる。
無論、少なくともジャパン戦士は、アイルランドに勝ったからといってスコットランドを微塵ほども楽観視していないと思う。とにかくW杯開幕前にも指摘したように、スコットランドはアイルランド同様、「80分間切らすことなく挑み続けるスピリットと緻密な戦略がかみ合い、大きなミスなく戦えたとき初めて勝機が見えてくる強敵」なのだ。
日本とスコットランド、精神的に優位なのは?
さて、それらのことを踏まえながらも、ちょっと視点を変えて改めて客観的に考えたい。予選プール最終戦を前に日本とスコットランド、どちらが精神的に優位か。
日本は初めてホームで開催されたW杯で、初のベスト8進出という国民全体の期待がある。当然、大きなプレッシャーだ。
ではスコットランドはどうだろうか。スコットランド協会はイングランドに次いで世界で2番目に古い歴史を持つ。第1回W杯から決勝トーナメント進出は半ば義務付けられている伝統国だ。それが完全アウエーとはいえ、今までベスト8に進出したこともない極東の島国に負けて予選プール敗退となったら…。選手たちにかかるプレッシャーは日本より大きいのではないか。
大一番を前に、何度も語り尽くされてきた勝負事の格言を日本代表に贈りたい。
「自分が苦しい時は相手も苦しい」
日本が持てる力を100%出し切って、文句なしのベスト8進出を決めてくれるものと信じている。
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