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日本史上最強を証明したラグビー代表 初の8強へ残り2戦の日程も味方

2019 10/1 17:23藤井一
ラグビー日本代表のリーチ マイケル主将と田村優ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

W杯が始まっても混迷しているように見えた日本だったが……

「きょうの試合で見つかった課題を修正していけばいい。まだ時間はある。大丈夫」

リーチ マイケル主将は今まで試合に敗れる度に、上記の言葉をお題目のように繰り返してきた。

ワールドカップ前の壮行試合、9月6日の南アフリカ戦が完敗だった後も彼の発言は変わらなかった。そして「日本代表は史上最強」と言い切った。

確かにフィットネスの向上、フィジカルの強化に成功したことは、はっきりしていた。だから1試合80分間の戦いの中で実際のプレータイムを少しでも長くし、最後にはフィットネスで走り勝つというイメージを皆が共有できたのだろう。それが「我々は史上最強だ」という自信につながっていたのだ。

日本は2016年からティア1と呼ばれる格上のクラス10か国すべてと対戦し、イタリアからの1勝とフランスとの引き分け以外、すべての試合で敗れ続けた。課題は少しずつ修正できていたのかもしれないが結果が伴わなかった。とてもワールドカップまでのたった2週間で勝てるチームにできるとは思えなかった。

事実、2週間後の開幕戦であるロシア戦でもパフォーマンスに顕著な違いは見い出しにくかった。パスミス、判断ミス、ハンドリングエラー……。最終的には4トライを奪い、ボーナスポイントも獲得して勝ったが、前半の落ち着きのない戦いぶりには愕然とした。

ロシアとは昨年対戦し苦戦しているが、明らかに格下、8強を目指す上では手こずっていい相手ではない。こんな戦い方では8日後に対戦するランキング2位のアイルランドに勝つことなど到底できないと思えた。

何が彼らを変えたのか?日本は史上最強を大一番で証明した

ところが、その8日間で、彼らは劇的に進化、いや、“劇的に課題を修正”した。今までわざと大事なところでノックオンしてきたのか?と思えるほどミスが極端に減った。

蒸し暑い中、ひたすら走って右に左にゆさぶりをかけ、アイルランドのスタミナを奪い、鍛え上げたフィジカルでアイルランドのアタックを封じる強烈なタックルを見舞い続けた。

タックル成功率93%は、アイルランドの89%を上回った。前半の22分までに2トライこそ奪われたが、自分たちの強味を活かし、史上最強の日本代表を大一番で証明した彼らには賛辞しか贈れない。

試合前ジェイミー・ジョセフHCは「誰も日本が勝つと信じていない。接戦になるとは思っていない。でも信じられるのは自分たちだけ」と言って選手の気持ちを高揚させ送り出したというが、HC就任後、一番の大仕事をやってのけたのではないだろうか。付け加えるとそのジョセフに日本協会はHC続投を正式に要請、すでに大筋合意との報も出ている。

また、SO田村優はしっかりとしたパスを投げ続け、中途半端なキックは蹴らなかった。無論、彼が4PG1Gを決め計14点を奪ったことも評価しなければいけないが、それよりもゲームを冷静にマネジメントし続けたことが勝利に結びついた。71分にドロップゴールを狙った場面だけが唯一疑問符が付いたが。

日程も追い風。それを今後も最大限に活かして悲願の予選プール突破だ!

それにしても、今回のワールドカップの日程は開催国である日本が圧倒的に有利である。

開幕戦のロシア戦からアイルランド戦までは7日の準備期間があった。一方アイルランドは、初戦の相手が積年のライバルスコットランド、プール内最強の相手といきなり対戦なのだから心身ともにかなり消耗したであろう。

アイルランドは強さを見せつけ勝ち点5を獲得したが、そこから中5日で日本との対戦だったのだ。慣れない蒸し暑さもある。勝った日本はもちろんすばらしいのだが、対戦前から日程的には日本が有利だった。

日本の次の相手は中6日でサモア。そのサモアのW杯初戦の相手は、日本との開幕戦で敗れ、そこから中3日のロシア。戦う前から有利なサモアが予想通り圧勝し勝ち点5を奪ったが、2戦目は中5日でスコットランドと対戦し、敗れ、さらにそこから中4日で日本戦に臨むことになる。

これまたかなり日本が有利な条件でサモアと戦える。スコットランドは、サモア戦のあと8日のインターバルを経てロシアと戦い、そこから中3日でプール最終戦の日本戦である。日本はサモア戦からスコットランド戦まで中7日だ。つまり2戦目以降、すべての試合で日本は日程的に有利なのだ。

アイルランド戦勝利後「30分ぐらい喜んで次のサモア戦に備える」と語ったリーチ マイケル主将以下、選手たちは想像以上にたくましく成長していた。4年前、南アフリカに勝ち、3勝しながら予選プール突破を果たせなかった日本代表は、地元でのW杯でその二の舞だけは避けたいと思い戦っているはずだ。予選プールあと2戦、しっかり戦い抜き新たな歴史を刻むと信じたい。