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【高松宮記念回顧】サトノレーヴが短距離界の頂点へ 令和に蘇る父ロードカナロアと兄ハクサンムーンのドラマ

2025 3/31 12:45勝木淳
2025年高松宮記念、レース結果,ⒸSPAIA
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層厚い6歳馬が上位独占

春のスプリント王決定戦・高松宮記念はサトノレーヴが制し、GⅠ初制覇。2着ナムラクレア、3着ママコチャで決着した。

6年ぶりに良馬場で行われるも、決着時計は1:07.9とそこまで速くなかった。金曜日までの雨の影響もあったが、なにより高速決着になるようなペースにならなかった。

先手が予想されたペアポルックスが大外枠に入り、ハナを奪えず、ビッグシーザーが先頭に立つという予想外の流れは当然、速くなるはずがない。

序盤は12.3-10.2-11.3で3F33.8。GⅠ戦らしく先陣争いは激しくなりかけ、2ハロン目こそ10.2と速かったが、その後は11.3で後半の入りも11.6と、コーナーでしっかり息を入れる態勢ができた。コースにおけるコーナーと最後の直線が占める割合が高い中京では、こんな平均的なラップ構成になることが多い。

今年もそんな形になり、直線部分に当たるラスト400mは11.3-11.2。スプリント戦ながら上がり勝負に持ち込んだ。決め手比べになり、弾けたのはサトノレーヴ、ナムラクレア、ママコチャ。そして4着トウシンマカオまで6歳馬が独占した。

イクイノックス、ドウデュースの世代はただ強いだけではなく、層が厚い。スプリントGⅠ馬もママコチャ、マッドクール、そして今回のサトノレーヴと3頭も出た。同世代の分厚い壁の前にまたも2着に敗れたナムラクレアはちょっと切ない。


まるで風林火山!? 堀宣行厩舎の見事な戦術

サトノレーヴは6歳といえど、キャリアはたった12戦。3歳春に既走馬相手にマイル戦でデビューVを飾り、その後は函館まで待機。2着を挟んだ3戦目、函館で2勝目をあげると、続く札幌開催はパスして秋の中山で3勝目をあげた。

そこからさらに半年ほど休み、4勝目をあげ、オープン入り。故障による長期休養を経て、5歳春から3連勝で重賞2勝。スプリンターズSでは7着に敗れるも、その経験が高松宮記念勝利につながった。

中山のスプリンターズSと中京の高松宮記念は相反する関係にある。コース形態が異なり、前半が速くなりやすい中山とそうなりにくい中京では、同じスプリントGⅠであっても適性が異なるからだ。

サトノレーヴが得意とするのは前後半600mの差が小さい、いわゆる平均寄りの流れ。速力と末脚勝負への対応力とのバランスは父ロードカナロアの強みでもある。

中山と香港でGⅠを体感し、得意ゾーンの高松宮記念。鮮やかすぎる道のりをきっちり決めたのは、堀宣行厩舎の真骨頂だ。じっくり進めるべき時期には決して焦らず、ここが勝負と踏んだときには迅速に。単にゆっくり育てるだけでなく、静と動とのメリハリがこの厩舎最大の特徴。まるで風林火山。武田信玄を彷彿とさせる戦術は見事だった。

父ロードカナロアに1勝2敗だった兄ハクサンムーン

サトノレーヴの血統とロードカナロアは不思議な関係にある。

短距離で活躍した母チリエージェが白井牧場に戻って最初に出産したのが快足ハクサンムーン。GⅠで2着2回、3着1回。もう一歩だった。

しかもその3回のうち、2回はひとつ年上のロードカナロアに阻まれた。ロードカナロアとの対戦は通算1勝2敗。初対決の高松宮記念は3着(1着ロードカナロア)と壁にはね返され、セントウルSではクビ差先着を果たすも、次走スプリンターズSは3/4馬身差つけられ、GⅠできっちりリベンジされてしまった。

ライバルというか越えなければならない壁だったロードカナロアと、母チリエージェとの間に生まれたサトノレーヴが高松宮記念を勝つ。血の物語が魅力の競馬の世界でも、珍しいことだ。

チリエージェの血統は4代母ミスゲランから続く白井牧場の基礎牝系。牧場にとってこの上ないプレゼントだった。ハクサンムーンもロードカナロアと握手したくなっただろうか。快足でならし、クルクル回ってばかりだったハクサンムーン、元気かい。


思いっきり褒めてあげたいナムラクレア

前後半600m33.8-34.1で後半400mラップが上昇する先行優位の展開を考えると、4コーナー13番手から差してきたナムラクレアは立派だ。

これで同一GⅠ3年連続2着。今回は上がり33.3の瞬発力を繰り出しており、掛け値なしに強い。強いが、タイトルがない。3年連続2着ならもうタイトルをひとつあげたいほどだが、そうもいかない。

ナムラクレアもサトノレーヴと同じく平均的なスプリント戦が得意であり、高松宮記念は適性としてもっとも合う。それだけに勝てなかったのは辛い。

勝負所で前に進路がなく、わずかに待たされた分ではあるが、2着に終わったという事実が重い。勝つと2着は大違い。いくらナムラクレアを絶賛しても、この事実だけは動かせない。だからこそ、思いっきり褒めてあげたい。

3着ママコチャはスプリンターズSを勝ち、前走はオーシャンS勝利と中山芝1200m向き。だが、力量は文句なしのGⅠクラス。軽くみすぎては痛い目に遭う。6番人気は少々、低すぎた。

タイトルをとってからも良馬場の1200mでは崩れていない。3コーナー手前で内の馬が外に出て、一列下がってしまった。一列前でアドバンテージを活かしきる、粘る形がベストなだけに、末脚比べに持ち込まれたのも痛かったか。

4着トウシンマカオは上位馬たちとほぼ同じ位置にいたが、少し反応の差が出た印象で、加速力で遅れた。もう少し全体的に時計が速い決着が理想だろう。

昨年の覇者マッドクールは6着。こちらはママコチャと同じく伸ばすより粘ることで力を出す。スタート直後はいい位置にいたが、結果的に少し下がって、末脚比べに入ってしまっては分が悪かった。


2025年高松宮記念、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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