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【日経賞回顧】ゴールドシップ産駒らしくないのが魅力のマイネルエンペラー 100年目の京都でも楽しみ

2025 3/31 12:18勝木淳
2025年日経賞、レース結果,ⒸSPAIA
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スローペースが定番の日経賞

天皇賞(春)の前哨戦・日経賞はマイネルエンペラーが重賞初制覇を飾り、2着チャックネイト、3着アーバンシックで決まった。

舞台は有馬記念と同じ中山芝2500m。有馬記念は暮れの大一番のため、スローペースもあれば、ハイペースもあり、持続力を問う流れのなかスタミナを試されることもある。一方、日経賞は春先のステップレースという位置づけから、ほぼスローペースの後半勝負に持ち込まれる。

今年も先手をとったバビットに飛ばす理由はなく、リビアングラス、マイネルエンペラー、マテンロウレオが好位を固めると、隊列はそのまま。1000m通過は1:03.0(推定)。淡々と流れ、勝負所まで目立った動きはなく進んだ。

朝から続く雨の影響もあり、後半も極端に速いラップは刻まれず、後半1000mは12.1-12.0-12.3-12.2-12.7。強気に進んだマイネルエンペラーが抜け、最後の1Fでリビアングラスを2、3着チャックネイト、アーバンシックがとらえた。最後の最後に格がものをいった。


ビッグレッドファームの結晶マイネルエンペラー

先行優位の流れを味方に重賞初制覇を飾ったマイネルエンペラーは、父ゴールドシップ、母マイネテレジアで、オークス馬ユーバーレーベンの全弟。ステイゴールド産駒のマイネルファンロンの半弟にあたる。

マイネテレジアの仔はプロヴェルビオ以外の競走馬登録された全馬がJRA勝ち上がりと非常に優秀。その母マイネヌーヴェル、さらにマイネプリテンダーと遡るビッグレッドファーム基幹牝系でもある。

マイネルエンペラーは父ゴールドシップ、母の父ロージズインメイと基幹牝系に注がれる父の血も牧場を支え続けた血であり、ビッグレッドファームの結晶のような馬だ。

4歳9月から3着以下がないまま、GⅡ制覇と軌道にのった。日経新春杯3着に続き先行できた点が成績安定の要因。姉ユーバーレーベンなどゴールドシップ産駒は機動力を欠き、後ろから進めるタイプが多いため、ちょっとイチかバチかの大勝負的な部分がある。これもゴールドシップ、ステイゴールド系の魅力ではあるものの、マイネルエンペラーはイメージが違う。

父は阪神大賞典3連覇も、天皇賞(春)は5着、7着、1着と三度目の正直で勝った。宝塚記念連覇など成績を考えれば、必ずしも京都を得意としていなかった。3、4コーナーに待ち構える淀の「丘のようなアップダウン」を苦手とする面があり、産駒にもその傾向は引き継がれた。3月23日時点で、芝ダートを合わせた京都での勝利数は、全10場で下から2番目の19勝(ちなみに最下位は函館8勝)にとどまる。

ゴールドシップっぽさがないマイネルエンペラーはこの傾向を受け継いでいない。京都は【2-2-0-3】、本格化した昨秋以降は【1-1-0-0】で問題ないだろう。開設100周年の京都競馬場で行われる天皇賞(春)でも輝くか。


前哨戦としては上々だったアーバンシック

2着チャックネイトは今回も含めて良馬場以外【2-1-1-0】の道悪巧者であり、渋った馬場のあと押しを受け、巻き返した。

来日初日のJ.モレイラ騎手が終始、内を意識して走らせ、勝負所も外へいったアーバンシックとは対照的に内を突いて抜けてきた。内の状態は決していいとはいえないが、チャックネイトなら問題なし。そんなジャッジもあった。騎乗馬をよく研究して騎乗していることがわかる。

アーバンシックを抑えられたのは、4コーナーのコース取りの差だろう。緩い馬場が得意という適性を忘れず、今後も馬場状態を踏まえてジャッジしたい。道悪巧者は母の父ロベルト系ダイナフォーマーの底力ゆえ。終盤で速いラップが入らず、一定のリズムで流れ、最後に少し時計がかかるといった形はロベルト系が得意とするところ。型にハマったときのロベルト系は怖い。

3着アーバンシックは1番人気6着に敗れた有馬記念以来の出走。馬体重2kg減と決して仕上がり途上にはみえなかった。最後の伸びは目立っており、今回は安全策で終始、外を追走し、勝負所も大外へ回ったがゆえの着順だろう。

前哨戦は成績以上にまず順調に滑り出すこと。下手に厳しい競馬を強いてしまえばケガもそうだが、馬が競馬に対して後ろ向きな気持ちを抱きかねない。いくらGⅠ馬といっても、キャリアはまだ9戦。競馬をイヤになる可能性は残る。サラブレッドは繊細だ。なにをきっかけに変わるかわからない。

そういったことを踏まえれば、外を回った競馬は理解できる。ここを使って次に期待しよう。今回も最後まで伸びており、菊花賞馬らしく距離延長はプラスでしかない。

最後に日経賞の着差が全馬で0.7秒以内だったことが話題になった。長距離の道悪競馬ではバラバラに入線する場面も多く、0.7秒以内に全馬がゴールしたのはさすがだ。

だが、これもスローペース、かつ終盤までレースが動かなかった静かな流れだったことも影響しているのではないか。各馬最後までしっかり脚を残せたからこそ、大きく後退する馬もいなかった。この0.7秒以内を根拠に強調評価を与えるのは若干、危ない気がする。

2025年日経賞、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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