データで見る「穴候補3頭」
今週日曜は東京競馬場でジャパンCが行われる。日本競馬のチャンピオンコース・東京芝2400mに国内外の優駿を迎え、最強馬の名誉と1着賞金5億円を争うレースだ。
予想に取り掛かる前に軽く前提を整理すると、ジャパンCではここ10年間、8番人気以下の馬が【0-0-0-98】と馬券に絡めていない。また6歳以上馬【0-0-0-52】、海外馬【0-0-0-25】も好走例ゼロだ。穴を狙うにせよせいぜい「中穴」くらいまでで、なおかつ「若い日本馬」にヤマを張るのが定石となる。
その点も踏まえつつ、様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。
「JRA・GⅠ勝ちの4歳馬」は複勝率66.7% ドゥレッツァ
まず1頭目はドゥレッツァをチョイス。昨年は条件戦から5連勝で一気に菊花賞を制した。今夏の英インターナショナルS遠征は5着に終わり、国内で仕切り直しの一戦となる。
ジャパンCはそのレースレベルの高さゆえに「GⅠ未勝利馬」の好走をほとんど許さない。また冒頭で触れた通り海外馬も振るわない。必然的に、3着以内馬の大半は「JRA・GⅠの勝ち馬」が占めている。
過去10年でデータを見ると「JRA・GⅠ勝ち馬」【8-6-8-34】複勝率39.3%に対し「JRA・GⅠ未勝利馬」は【2-4-2-104】同7.1%と大きな差がある。まずは日本でのGⅠ実績を重視しよう。
さらにJRA・GⅠ勝ち馬のうち、4歳馬は【5-2-3-5】複勝率66.7%、単回収率165%、複回収率116%という成績だ。脂が乗った4歳の実績馬はマークしておきたい。
今年はドゥレッツァとソールオリエンスの2頭が該当する。ソールオリエンスについても後述するが、まずはドゥレッツァからだ。
菊花賞を最後に勝ち星から遠ざかっているが、金鯱賞は59kgを背負った上にプログノーシスとは進路取りの差が大きかった2着。天皇賞(春)は「軽度の熱中症」の症状があり、レース後の検査では右第1指骨の剥離骨折が明らかになった。前走は海外遠征のため参考外でいい。
そして今回は逃げ、先行馬がほとんどいないメンバー構成。菊花賞で見せた先行力は展開面で大きなアドバンテージを生む。軽視禁物の一頭だ。
社台ノーザン系の「短期免許騎手起用」は勝負手 ジャスティンパレス
続いてはジャスティンパレスを取り上げる。天皇賞(秋)4着からの参戦で、鞍上にはC.デムーロ騎手が予定されている。
11月下旬は欧州の平地競走のオフシーズン。そのためジャパンCの時期は海外の名手が比較的来日しやすい状況にある。社台ファーム、ノーザンファーム系の陣営は鞍上の浮いた有力馬に外国人ジョッキーをしばしば起用し、そして好結果を得ている。
過去10年の当レースで「社台ノーザン系生産馬」(※社台ファーム、ノーザンファーム、社台コーポレーション白老ファーム、追分ファームとする)の成績を確認すると、JRA所属騎手では【4-6-6-50】複勝率24.2%、複回収率47%。一方の短期免許騎手は【4-2-2-14】複勝率36.4%、複回収率82%とコチラが優勢だ。
年齢を掛け合わせ「短期免許騎手が乗る5歳以下馬」なら【4-2-2-8】複勝率50.0%、単回収率198%、複回収率113%と信頼度がさらに上がる。海外トップジョッキーの腕は侮れない。
ちなみにC.デムーロ騎手は今秋、来日から3週間で早くも16勝。芝のレースでは【10-10-3-11】複勝率67.6%、単回収率120%、複回収率126%と絶好調だ。ジャパンCのデータを持ち出すまでもなく、今のC.デムーロ騎手が「買い」という話もある。
ジャスティンパレス自身、ここ4走は不完全燃焼な競馬続き。有馬記念は4角3-2-1番手の馬が上位を占める決着に差し遅れ、ドバイSCも超スローペースでキレ負け、宝塚記念は道悪に泣き、天皇賞(秋)もスローペースで差し届かなかった。展開が噛み合えばもっと走れる地力の持ち主だ。
キタサンブラック産駒は4歳秋に開花 ソールオリエンス
ラストの3頭目にはソールオリエンス。昨年の皐月賞馬であり、ドゥレッツァの章で述べた「JRA・GⅠ勝ちの4歳馬」にも該当している。
これに付け加えたいのが血統データ。JRA重賞におけるキタサンブラック産駒の年齢別成績を調べると(障害競走を含む)、2歳~4歳9月では【12-11-4-65】複勝率29.3%、複回収率66%という数字だが、4歳10月以降は【3-5-2-14】複勝率41.7%、複回収率215%に跳ね上がる。4歳秋以降の重賞では人気以上に走る。
思えば代表産駒のイクイノックスも2歳時から一線級ではあったが、4歳シーズンはドバイSCの逃げ切りから始まり、さらに手が付けられない大器へと成長した。ソールオリエンス自身も横山武史騎手が常々「晩成型」と評してきた馬。キタサンブラック産駒は古馬になってから完成するタイプが多いのかもしれない。
また、ソールオリエンスは右回りのコーナリングにぎこちなさを残す不器用さがある。コース形態的には左回り大箱の東京がベストだ。前走は自己最速タイの上がり33.3秒をマークしながらもキレ負けした形。400m延長でもっとタフな展開、あるいは馬場になってくれれば反撃可能だ。
<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
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