オーギュストロダンにのしかかる”ガリレオのジンクス”
今年のジャパンCは海外の3頭も含め、GⅠ馬が10頭も参戦予定とあって、秋競馬で最も盛り上がる一戦となりそうだ。もちろん、日本のエースは天皇賞(秋)を制したドウデュース。一方、海外組で最大の注目馬はオーギュストロダンだ。
これほど話題性がある馬も珍しい。日本に6頭、海外にも6頭しかいないディープインパクト産駒の最終世代の1頭。母はGⅠ・3勝のロードデンドロンだから、超が付く良血馬だ。
昨年は英ダービー、愛ダービー、愛チャンピオンS、BCターフを制覇。今年は5戦1勝と勢いに陰りが見られるが、3走前のプリンスオブウェールズSでは6つ目のGⅠタイトルを獲得。前走の愛チャンピオンSも勝ったエコノミクスからクビ差の2着だから、まだまだ超トップレベルで戦う力はある。
迎える今回、最大のポイントは初体験となる日本の高速馬場への対応だろう。ディープインパクト産駒とあって〝難なく対応できる〟という声もチラホラ。ただ、血統を詳しくみていくと〝本当にそうだろうか?〟と思えてしまう。
その最大の理由は母の父のガリレオにある。欧州リーディングサイアーに12回も輝いた21世紀の大種牡馬。ただ、そんなスーパーサイアーにとって鬼門となっているのが日本の高速馬場だ。産駒はJRAの3勝クラス以上の芝で【0-0-0-21】とサッパリ。「母の父ガリレオ」の馬もJRAで168勝していながら、GⅠでは【0-1-2-16】と未勝利で、23年ホープフルSでのシンエンペラーの2着が最高着順となっている。
また、東京の芝では16年の青葉賞のヴァンキッシュラン、20年の目黒記念のキングオブコージと重賞を2勝しているが、この2レースの上がり3Fは35秒8、35秒9。いずれも持久力勝負が味方してのもので、上がりが速くなるとどうだったか……。
ここで改めてオーギュストロダンの成績を振り返ろう。昨年のBCターフでは2400mを2分24秒3で走れているが、英ダービー(芝12F6Y)や愛ダービー(芝12F)の勝ち時計は2分33秒台。本質的には重い芝の方がいいタイプと考えていい。
昨年のジャパンCは勝ち時計が2分21秒8。そして勝ち馬には33秒台の上がりが求められるレースだ。そこにオーギュストロダンが対応できるのか? 個人的には血統、そして成績から大いに疑問を感じる。危険な人気馬となる可能性が高そうだ。
《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。
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