日本人初のプロゲーマー、梅原大吾
日本人として初めてプロゲーマーになったのが、「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネス記録を持つ梅原大吾だ。
梅原は1981年生まれ。11歳で「ストリートファイター」と出会い、弱冠17歳で世界チャンピオンになった。しかし当時はゲームへの風当たりが強く、周囲の目は冷たかった。22歳のときには一度はゲームを辞めることを決意したが、28歳の時に復帰。世界的なeスポーツ大会「EVO」で優勝したことをきっかけに米国の企業と契約し、日本人初のプロゲーマーになった。
素早い反射神経が必要とされることから選手生命は25歳までと言われているeスポーツだが、梅原は30代半ばになった今も現役で活動している。現在はプレイヤーとしてだけでなく、執筆や講演活動も目立つ。ゲームを職業にすることが考えられなかった時代にプロゲーマーとして成功した梅原は、後のプロゲーマーを目指す日本人に希望を与えることとなった。
プロゲーマーになるために海外進出が必須?
国内では梅原に続く世代として、東大卒のプロゲーマーとして有名な「ときど」や、2014年、2015年と2連覇で世界王者となった「ももち」など人気プレイヤーがいる。彼らはどのようにプロゲーマーになったのだろうか。
ときどは東大を卒業した後、東大大学院を中退してプロゲーマーを目指すという異色の経歴を持つ。2010年にアメリカの企業とスポンサード契約を結び、晴れてプロゲーマーになった。2017年からはアメリカのプロチームに所属している。
一方、日本人女性初の女性プロゲーマー「チョコ」とともに夫婦で「Evil Geniuses(世界最大級の北米プロゲーム団体)」に所属するももちは、プロゲーマーになるためにまず海外のチームに入ることを目指した。当時は別の仕事をしながら自費で海外遠征する生活だった。その間に英語でブログを書いたり、海外企業に営業をかけたりしながら1年かけてプロ契約にこぎつけた。世界王者になった2015年の年収は1000万弱だった。
このように、海外では企業がプレイヤーのスポンサーになることは珍しくないため、多くのプロゲーマー志望者は海外の大会で成果を出し、企業とのスポンサード契約を目指す。また、プロになるまではアマチュアプレイヤーとして別に職業を持ちながら生活しているケースが多い。
プロゲーマーを“社員”として育成
プロゲーマーになるには、海外の企業と契約してスポンサーになってもらうしか道がないのだろうか。実は、そうではない。最近ではプロゲーマーとして収入を得る方法も増えてきている。
たとえば国内のプロチーム「DetonatioN Gaming」は、2015年に国内初のフルタイム・給与制を取り入れた。チームのメンバーは共同生活を行いながら、毎日何時間もゲームをやり続ける。それぞれの選手が稼げる金額は大きな差があり、上は年間700万ほど、下は月に2~3万程度で、もらえるインセンティブにも差があるそうだ。
そのため、賞金以外の収入源もある。ある程度実力のある選手ならスポンサー企業がつくことはもちろん、SNSや動画サイトでファンがつけばイベント出演のオファーがくることもある。また、ユーチューバーのように動画の配信料や広告料でも収益が得られる。さらに「DetonatioN Gaming」では、ゲーミングPC・メガネなどグッズ開発・販売にも力を入れている。
給与制を導入することによって、一定の収入は確保しながら、毎日ゲームに集中できる環境はプロゲーマーにとって有利だ。チームのCEO・梅崎伸幸は、ゲームで暮らしていけることを証明し、次の世代に夢を与えることを目指している。
プロゲーマーを取り巻く環境が劇的に変化している
プロゲーマーとして活躍する人々が増えていく中、日本でも海外との格差を埋めようとする動きが出てきている。
2018年2月1日、eスポーツ大会の開催やプロライセンスの発行を目的とした「日本eスポーツ連合」が発足した。ライセンス発行対象者の条件としては、公式大会で優秀な成績を収めること、規定の講習を受けることなどがある。このライセンス制度がどのように機能するのかは未知数だが、今後のeスポーツ界の発展に良い影響を与えることは間違いない。
また、教育機関も今後は充実していくだろう。現時点でも、プロゲーマーを目指せる専門学校がいくつか存在する。カリキュラムには反射神経を養うための物理的なスポーツトレーニングや、ゲーム実況、大会を運営するためのイベントプランニングなど、eスポーツに関わることを設備の整った環境で学ぶことができる。卒業後はプロゲーマーだけでなく、イベントMC・実況や、イベントスタッフ、プロモーションスタッフ、ゲームクリエイターなどの道も用意されている。
eスポーツ強豪国の韓国では、将来なりたい職業のベスト3にプロゲーマーが入っているそうだ。日本でも賞金の問題が緩和され、収入の基盤が強固になれば、プロゲーマーを目指す子供たちも増えていくだろう。プロゲーマーが職業の一つとして国内でも広く認知されることを期待したい。