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成功事例が多い特別指定選手制度 多くの選手が制度を利用する背景とは?

2020 1/9 17:00ヨシモトカズキ
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有望選手が多い“八村世代”からすでに多くの選手が加入

2月末の選手登録締め切りに向け、例年1月と2月は選手の入れ替わりが激しい時期。今季も外国籍選手の動きが活発になってきたが、今春卒業を迎える大学4年生を中心に特別指定選手や新規加入選手も増加してきた。

今年の大学4年生は高校時代から将来を嘱望されてきた選手が多い“当たり年”。その中心は現在NBAで活躍する八村塁(ワシントン・ウィザーズ)だが、国内に残る選手にも有望な選手はいる。昨年12月に行われた全日本大学選手権終了後に、続々と契約選手が発表。数試合ながら、既に主力として活躍する選手も出てきている。

まずは昨季同様、サンロッカーズ渋谷に加入した#44盛實海翔。“モリザネセクシー”の異名を持つ盛實は12月25日のレバンガ北海道戦で初出場すると、約20分の出場で6得点、3アシスト。その後も3Pシュートと視野の広さを武器に、ローテーション入り。昨季の経験も大きく生かせていたため、今後も活躍が期待されている。

#2伊藤達哉ら実績あるガード陣を揃えた大阪エヴェッサに入団した#13中村浩陸は、嬉しい誤算とも言える程の大活躍を見せている。12月21日、22日のSR渋谷戦では、両日30分近い出場時間を得ると攻守に渡って連勝に貢献。特に22日は11得点と22歳とは思えない堂々たる活躍。派手さはないが攻守ともに高い能力を誇っており、今後もプレータイムは伸びていくと思われる。

また、東海大3年の#19西田優大は名古屋ダイヤモンドドルフィンズに加入すると、持ち味の得点力を発揮。12月29日のSR渋谷戦で13得点を獲得するなど、チームのスタイルにマッチしている。

育成に定評のあるA東京各ポジションをバランス良く補強

今季開幕前に、齋藤拓実とシェーファー アヴィ幸樹といった有望株を滋賀レイクスターズに期限付きで移籍させたアルバルク東京。ワールドカップに出場した#3安藤誓哉など若手の育成に定評があるディフェンディングチャンピオンは、今冬も若い選手を獲得した。

今季は海外リーグに挑戦していた#26津山尚大をはじめ、#21平岩玄、#22笹倉怜寿、#75小酒部泰暉とバランスの取れた布陣に。昨季もA東京に在籍した平岩は体を張ったゴール下の競り合いが持ち味の選手で、笹倉は両ガードこなせるコンボガード。中でも特に目を引いたのは小酒部だ。高校時代は無名だったが、神奈川大進学後に才能が開花。日本人離れした身体能力を武器にするスコアラーで、今年の大学No.1選手の呼び声が高く、A東京はそんな逸材を見逃さなかった。

大学のバスケットボール部を残り1年で退部し、この冬からBリーグでプレーすることになった小酒部。現在NBAのDリーグでプレーしている馬場雄大と同じ道を歩むことになり、馬場の穴を埋めるべく活躍が期待されている。ドライブでも3Pシュートでも得点が可能なため、トップレベルでプレーした経験が浅いことを考えても伸びしろは十分。

早くからBリーグでプレーすることは大きなプラスに

馬場や小酒部のように大学でのプレーを引き上げ、Bリーグ入りする選手は年々増加傾向にある。今季から京都ハンナリーズに加入し、スタートを務める#6中村太地もその一人だ(彼もまた八村世代の選手)。

また、特別指定選手で加入する選手の多くは上級生だが、今季は千葉ジェッツに#13大倉颯太(東海大2年)が加入するなど、下級生でも制度を利用できるほど門戸が広がってきている。

クラブの立場で考えると、特別指定選手を抱えている期間は“お試し”の時期。大学4年生であればシーズン終了まで、高校生を含めた大学3年生以下は自チームの活動が始まるまで、クラブは彼らが戦力として機能するか見極めることができる。

それは選手側も同様。先に挙げた京都の中村は大学1年から毎年、特別指定で加入するクラブを変え様々な経験をしてきた。すでに活躍している姿を見れば、その選択が間違っていなかったと言えるだろう。

名古屋Dの西田や千葉の大倉とともに、大学シーズンが始まる3月前後にはそれぞれのクラブを離れ東海大に戻るだろう。しかし、西田にとってはフォワードの選手層が厚い名古屋Dで得るものは多く、大倉も#2富樫勇樹と練習から対峙できることは大きなプラスだ。

成功事例が多い特別指定選手制度。Bリーグ入りを目指す多くの若い選手が活用し、リーグのレベルの底上げを図ってもらいたい。