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【Bリーグ第1節】SR渋谷が全員バスケで千葉に連勝

2019 10/11 17:00マンティー・チダ
>サンロッカーズ渋谷・円陣写真Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

【DAY2前半】出だしからリードを奪われるが、SR渋谷・石井の活躍で逆転に成功

開始早々、千葉#21ギャビン・エドワーズ、#34小野龍猛のシュートでリードを許したSR渋谷だったが、#2セバスチャン・サイズの得点を皮切りに、#10チャールズ・ジャクソンのダンク、千葉から加入した#27石井講祐が3pを沈めて1点差まで追い上げる。

しばらく拮抗した展開であったが、11-12から石井のバスケットカウント、オフェンスリバウンドからサイズなどが得点。SR渋谷が4点リードしたところで、千葉がタイムアウトをコールした。

残り3分を切って、SR渋谷は途中出場の#14杉浦佑成が3pを入れるなど試合を優位に進める。千葉は#10ニック・メイヨが3pとダンクなどで得点に絡むも、23-21でSR渋谷がリードして終える。

サンロッカーズ渋谷・サイズⒸマンティー・チダ

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2Q。SR渋谷は石井のキックアウトから、コーナーで待ち構えていた#9ベンドラメ礼生が3pを決める。続いて、石井もこの日2本目の3pを沈めて8点リードとすると、千葉に前半2回目のタイムアウトをコールさせた。

タイムアウト後、息を吹き返したように4点差まで詰める千葉だが、SR渋谷はベンドラメの3pで再びリードが広がる。しかし、#23野口大介がオフェンスファウルとテクニカルファウルをコールされて、再び流れが千葉に傾き始める。

残り5分38秒。SR渋谷は選手を入れ替え流れを変えようとしたが、千葉・富樫にフローターを入れられ、終盤も富樫のレイアップ、メイヨのバックショットなどを決められた。しかし千葉に詰められるものの、SR渋谷がかろうじてリードを保ち、38-36で終了した。

【DAY2後半】SR渋谷が粘りを発揮して千葉に2連勝

後半、千葉#5田口成浩に3pで逆転を許すが、SR渋谷は#1関野剛平が3pとレイアップで5点を稼ぎ、再び勝ち越す。しかし、ベンドラメと関野に個人ファウルがコールされ、千葉にフリースローで再び逆転されるというシーソーゲームに。そこからさらにエドワーズと富樫に得点されたSR渋谷は、残り4分48秒でサイズ以外の4選手を交代させた。

その選手交代が功を奏し、#73田渡修人のシュート、サイズのバスケットカウントでリードを奪う。千葉がここでタイムアウトを請求するが、明けてもSR渋谷の勢いは止まらない。野口の3p、山内のジャンプショットなど、優勢に試合を進めるSR渋谷。最後に田渡が3pとレイアップで5点を獲得し、リードを2桁に乗せたSR渋谷は、61-51で最終Qへ。

4Q。追いかける千葉がメイヨの3pなどで6点差に縮めると、SR渋谷・石井がオフェンスファウルをコールされてタイムアウトを取る。ここから両チームともファウルが増え、それぞれがフリースローで得点するシーンが続く。

その後、SR渋谷はベンドラメ、千葉は富樫が速攻から得点し、お互いに譲らないシーンがあったが、千葉・エドワーズのドライブ、田口のジャンプショットで抜け出し、千葉は2点差まで追い上げた。

サンロッカーズ渋谷・石井講祐Ⓒマンティー・チダ

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残り2分30秒、78-72でリードされていた千葉はエドワーズのスティールからメイヨのポストプレーやフリースローで、2点差まで詰める。千葉の猛攻が始まるように見えたが、SR渋谷のベンドラメが3pを決め、オフェンスリバウンド3回の粘りを発揮して止めた。

終盤、SR渋谷・サイズのファウルで獲得したフリースローを千葉・田口に2本決められ、さらに残り11.4秒からファウルゲームを仕掛けられるが、SR渋谷・関野が2本のフリースローをきっちり入れて勝負あり。83-78でSR渋谷が開幕2連勝を果たした。

「選手たちはとても大きな仕事をやってくれた」SR渋谷・伊佐HC

SR渋谷が最高のスタートを切った。昨シーズンは開幕から勝利に恵まれず、シーズン途中で指揮官交代という状況に陥ったが、その際チームの指揮を任された伊佐勉HCは、このシーズンオフからしっかりチームを作りこんで開幕に備えた。

「同一カンファレンスで2勝することはタフなこと。開幕で千葉戦ということで選手たちはとても大きな仕事をやってくれました」

伊佐HCが試合後の記者会見で開口一番、素直に喜んでいた。SR渋谷はオフェンスリバウンドで粘りを発揮すると、昨シーズンまで千葉に所属していた石井が得点に絡み、互角の展開に持ち込んだ。伊佐HCは石井を大いに評価した。

「彼も思い入れはあったと思う。どうにか勝たせてあげたかったです。彼が多く得点したわけではないですが、ゲームが落ち着くということに関しては、ここ数年のSR渋谷には無かったものですから。スタッツに出ない部分、ウィナーズメンタリティーを注入してくれているのかな」

今季から新加入した関野も、石井の存在を次のように語る。

「改めて千葉は石井さんが抜けたのが大きいと思います(笑)。千葉はどんな形であれ富樫さんが悪くても誰かが良いみたいな、それで流れを掴んできたチーム。流れを掴む選手の一人が抜けたのは大きいです。石井さんからは、千葉に関して特に何もなかったですが(笑)」

そしてこの2試合、昨シーズンとの違いが数字で表れていた。選手のプレータイムだ。

サンロッカーズ渋谷・伊佐勉HCⒸマンティー・チダ

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「私は選手のタイムシェアをしたいコーチ」と公言した伊佐HC。

昨シーズンは、引退したロバート・サクレと、#34ライアン・ケリー、ベンドラメに1試合平均のプレータイムが集中していた。(サクレ33:55、ケリー33:52、ベンドラメ29:19)。しかし、今シーズンは選手間で消化試合の差はあるものの、サイズの33:04以外は概ね20分台だ。(サイズ33:04、ベンドラメ23:59、田渡22:36、関野21:23、石井20:13)

そして、インサイドに目を向けると、#3ファイ・サンバと野口の奮闘が目立つ。

「昨シーズンとバスケが変わった。サンバも必死に足を動かしていますし、野口は元々あのサイズで足も動けます。ベテランならではのスマートなプレーをしてくれますので、使いやすいということは相当あると思います」

プレータイムとパフォーマンスを考えて全員でバスケをするということに拘ったチーム作りをしてきた伊佐HC。手ごたえ十分の試合だった。

「誰がコートに入っても同じようなパフォーマンスができる」SR渋谷・関野

タイムシェアをしながら試合を進めていく事は容易ではない。でもそれを実現させているのは他ならぬ選手たちの頑張りによるもの。石井、#16渡辺竜之佑(前新潟)、田渡(前三遠)の加入も大きい。ガード陣で言えば、この3選手と関野、ベンドラメと山内、この6人が小刻みにローテーションでコートに入ってプレーできたのはかなり大きな成果を生んだ。だが、前北海道コンビの関野と野口にも注目している。まずは関野。

「誰がコートに入っても同じようなパフォーマンスができる。交代してもみんなに安心して任せられるので、チームとしては良い状態ですね」

スタート5で出場した関野は、チームとしてやるべきことができたと強調するが、課題も拾っている。

「無駄なファウルもあった。苦しい状況で無駄なファウルを続けていたら、勝てる試合も勝てなくなると思うので、無駄なファウルは押さえていきたい。ゴール下も少し強くしていきたい」

サンロッカーズ渋谷・関野剛平Ⓒマンティー・チダ

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ディフェンスにおいても手応えを掴んでいた。

「みんなでやるディフェンスは、誰が出ても調子は関係なくて、ローテーションも全員が動けるので(センターも含めて)、良い形で戦えるのでは」

関野は今シーズンでプロ4年目を迎える。昨シーズンまで北海道に所属し、開幕戦はおろか、開幕2連勝はプロになって初めての経験だった。

「千葉に2勝もしたことないので良かったです。A東京戦はディフェンスの強度を落とさずに、チャレンジャーとして臨みたい」

千葉に勝った自信と謙虚な気持ちを忘れずに、次節王者A東京に臨む。

「全員バスケで勝てた」SR渋谷・野口

「しない方がよかったですか?」

これは、個人ファウル4つ目での、野口から伊佐HCへの質問だった。

伊佐HCは「ファウルをしないといけない時は、悪いがファウルをしてくれ。スマートではないファウルは我慢しろ」という指示を出していた。しかしこの時は、ジャクソンのファウルがすでに3つで、状況的にはファウルはしない方が良かった。そう伝えるだけだったが、「今後はこのようなことはないと思う」と伊佐HCはそう認識する。このように意思疎通が出来ているのもチームの強みだ。

共に北海道から加入した関野は「(野口)大介さんの良さを知っているので、困った時でも安心感がありますね。オンザコート1でも、機動力でカバーし合えば問題ないと思っていました」と野口に信頼を寄せていた。

「全員バスケで勝利できて、個人としても開幕戦に勝ったことが無かったので、そういう意味でも嬉しいです。ジェッツさんにもしばらく勝てていなかったので、もう何倍も嬉しいです」

野口はプロ入りから13シーズン目を迎えたが、開幕戦の勝利には縁が無かったのだ。

「毎回試合に入るときは、ディフェンスから入って流れを作っています。セカンドユニットですが、点差を離されないようにして、徐々に相手を離していくのが僕の考え方なので、きちんとできたかなと。ムービングスクリーンに苦しめられましたが、僕らの仕事はできたのかなと思います」

野口はチーム内で自分の役割を全うしていた。

「ファウルをしないようにというのはあります。消極的にならず5つ目をしないようにとか、そういうことは考えていました。ディフェンスがソフトになって、相手のポストマンにやられましたが、周りがオフェンスで何とか取り返してくれたので、全員バスケで勝てたと思います」

ファウルが重なった場面についてこう語り、ここでも「全員バスケ」という言葉を使った。それだけチームの雰囲気が良いという事だろう。

サンロッカーズ渋谷・野口大介Ⓒマンティー・チダ

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「(チームの雰囲気は)より一層良くなりました。わだかまりもなく、みんな良い選手です。この仲間たちと最後シーズン終わった時に、より高いところにいれれば良いかな」

野口は北海道で12シーズン過ごして、SR渋谷に移籍した。

「環境にはまだまだ慣れていない。デリケートな部分があるので。チームメートにも徐々に慣れてきて開幕を迎えたので、これからどんどん良くなる一方です。仮にぶつかって雰囲気が悪くなった時でも、どうしていくのかが僕らの課題。いずれ来ると思うので、その時が楽しみ」

野口はチームに手応えを感じていた。全員バスケで課題を克服する力を蓄えられれば本物だ。