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Bリーグファイナル展望、琉球と宇都宮の守り合いを制するのはどっちだ?

2022 5/27 11:00ヨシモトカズキ
比江島慎,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

苦しみながら粘り勝ちの琉球が初のファイナルへ

琉球ゴールデンキングスと島根スサノオマジック、川崎ブレイブサンダースと宇都宮ブレックスが対戦したセミファイナル。全試合最後まで分からない激戦となったが、琉球と宇都宮が2連勝し、ファイナル進出を決めた。

シーズン勝率1位の琉球と、唯一リーグ連覇を達成しているアルバルク東京を下した島根の一戦。幸先の良いスタートを切ったのは島根だった。3Pシュートが面白いようにリングに吸い込まれ、1クォーターだけで8本の3Pシュートを沈め34得点を挙げたのだ。ディフェンスチームの琉球に対して、素晴らしいスタートとなった。

2クォーターはロースコアの展開の中、島根がリードを明け渡さなかったが、琉球のディフェンスがボディーブローのようにじわりと効き、徐々にオフェンスが停滞。後半から琉球のリズムが出てくると、#7アレン・ダーラム、#30今村佳太の活躍で62−62の同点に。21点差から振り出しに戻した。

4クォーターになっても琉球の勢いは衰えず、強固なディフェンスから全員がボールをシェアしながら今村や#13ドウェイン・エバンス、#14岸本隆一などバランス良く得点。島根は#2ペリン・ビュフォードの個人技頼みとなり、オフェンスが単発になってしまう。勝負どころで総合力の差が出て94−85で琉球が大逆転勝利を収めた。

翌日のGAME2は序盤から拮抗した展開になる。島根は序盤からビュフォードが好調でオフェンスを牽引し、琉球も今村が小気味良くシュートを沈める。お互いこの2選手以外の得点が伸びなかったが、島根が#3安藤誓哉、琉球は岸本が勝負強さを見せ、残り11秒70−70で琉球のオフェンスを迎える。

スローインから岸本が早い段階で3Pシュートを放ちリングに嫌われるも、エバンスがリバウンドを取ってすぐさまシュートを打つとブザーとともにネットを通過し72−70。劇的な勝利で、8309人の観客は大盛り上がりとなった。

2戦とも相手のマークに遭い主軸が活躍できない厳しい状況の中、驚異の粘りで島根を退け、まさに琉球の真骨頂だった。

一方、島根はビュフォードの活躍に加え、琉球のリバウンダー#45ジャック・クーリーに仕事をさせず、ドライブが得意のエバンスの対策も成功し、ディフェンスで健闘した。しかし安藤、#14金丸晃輔にボールがなかなか渡らず、外国籍選手のみで攻撃が展開されることが多く、シーズン中とは違った戦い方に。

またGAME2は終盤で4本連続のフリースロー失敗やスローインターンオーバーも響いた。疲れが影響した部分もあり、選手層を厚くすることも来シーズンの課題となった。

“矛盾”決戦は宇都宮に軍配、川崎は高さを生かせず

シーズン平均得点が88.2の川崎と、平均失点が69.1の宇都宮。それぞれの部門でリーグ1位の強力な武器を持つ両クラブの対戦は、昨シーズン同様セミファイナルで実現した。

川崎は210cmの#22ニック・ファジーカス、208cmの#35ジョーダン・ヒースに加え、203cmながらスモールフォワードをこなせる#34パブロ・アギラールをそろえたビッグラインナップを誇り、スタメンになって平均得点が10.5から14.1にアップした#0藤井祐眞、シューターの#23マット・ジャニングと高い攻撃力を誇る。クォーターファイナル(QF)の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦でも97点、85点と圧倒した。

宇都宮は平均失点がリーグで唯一の60点台で、QFでは攻撃力が持ち味の千葉ジェッツを2試合ともに70点に抑えることに成功。エース#6比江島慎や外国籍選手が好調で、試合ごとに活躍する選手が変わる選手層の厚いチームだ。

そうしたタイプの違うクラブ同士の対戦だったが、初戦の立ち上がりからロースコアと宇都宮のペースで試合は進む。川崎は何とかファジーカス、ジャニングで追い掛けるも、4クォーターに宇都宮#20チェイス・フィーラーに立て続けにオフェンスリバウンドを許すなど、攻撃につなげられない。試合全体でも宇都宮は2桁得点が5選手とバランスの良い攻撃を展開し、83-70で先勝した。

続く第2戦は外国籍選手の活躍で川崎が先行し、2クォーターは宇都宮、3クォーターは再び川崎が主導権を握り、52-52の同点で最後の10分を迎える。最終クォーター、躍動したのは宇都宮の比江島だった。終盤まで1点を争う展開が続いていた中、このクォーターで得たフリースロー8本を全て成功させるなど11得点。さらには勝負どころでのルーズボールでもチームを救った。

劣勢になった川崎はファウルゲームを仕掛けるも、ディフェンスで数字に現れないミスが生じて前日同様攻撃に転じられず、77-73で宇都宮が接戦を制し2連勝を飾った。

川崎の誤算はアギラールがコンディション不良で欠場したことだろう。今シーズンは主力選手が複数名退団し、選手層が決して厚いとは言えない中、ビッグラインナップや藤井と#7篠山竜青の2ガードで何とかしのいできたが、アギラールに加えて復帰したばかりの#33長谷川技がケガをする不運も。第2戦はファジーカスがフル出場、ヒースもほぼ40分の出場時間から分かる通り、選手起用が難しく得点が伸びなかった。

宇都宮もシーズン中に比べれば主力選手の出場時間は長くなったが、1戦目は全員、2戦目は11選手がコートに立ち、シーズン中に近い選手ローテーションで戦うことができた。普段通りの宇都宮と、緊急事態に対応し切れなかった川崎という構図も勝敗を左右する要因になった。

琉球と宇都宮のファイナルは熾烈な守り合いに?

こうしてファイナルの対戦は琉球と宇都宮の対戦になり、5月28日より決戦の火蓋が切って落とされる。

シーズン中の直接対決では琉球が66-65、65-62と接戦を制して2連勝している。この点差から分かるように両クラブには大きな差はないと考えていいだろう。

また、ともにディフェンスを持ち味としており、このポストシーズンの平均失点は琉球が67.75、宇都宮は70.75と守備で相手を圧倒している。これまで築き上げてきた組織力の賜物と言える。

ともにディフェンスが安定していることを考えれば、鍵はオフェンスだ。琉球はダーラム以外の外国籍選手が島根との相性が悪かったが、宇都宮の外国籍選手がインサイド寄りの選手が多いことから、エバンスのスピードが生きてくるだろう。日本人選手も今村を筆頭に好調で、エバンスとクーリーの得点が伸びてくれば琉球のペースに持ち込めそうだ。

宇都宮は外国籍選手と比江島が安定した活躍を見せており、特に比江島の勝負強さが際立っている。全選手がオフェンスリバウンドに絡む泥臭さも健在で、複数回攻撃ができる強みも生かせている。

昨シーズンからフォーマットが2戦先勝に変わり、最大3戦までもつれる。共通項が多いチーム同士の対決で、このポストシーズンも4連勝中と互角。ファイナルに相応しいシリーズになることは間違いない。

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