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バスケ女子日本代表 アジアカップ4連覇へ本格的な準備期間に突入

バスケ女子日本代表候補選手の集合写真Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

「守備時にコミュニケーションが必要なのに声が出ていない」ホーバスHC

バスケットボール女子日本代表は、9月24日に中国で開幕する「FIBA女子アジアカップ2019」で大会4連覇を目指し、本格的な準備期間に突入した。

第7次強化合宿(8月1日から5日)のメンバーは以下の17名。

藤髙 三佳(トヨタ自動車 アンテロープス)
髙田 真希(デンソー アイリス)
渡嘉敷 来夢(JX-ENEOSサンフラワーズ)
本川 紗奈生(シャンソン化粧品 シャンソンVマジック)
町田 瑠唯(富士通 レッドウェーブ)
宮澤 夕貴(X-ENEOSサンフラワーズ)
谷村 里佳(シャンソン化粧品シャンソンVマジック)
本橋 菜子(東京羽田ヴィッキーズ)
三好 南穂(トヨタ自動車 アンテロープス)
長岡 萌映子(トヨタ自動車 アンテロープス)
藤岡 麻菜美(JX-ENEOSサンフラワーズ)
林 咲希(JX-ENEOSサンフラワーズ)
馬瓜 エブリン(トヨタ自動車 アンテロープス)
中田 珠未(早稲田大学 4年)
梅沢 カディシャ樹奈(JX-ENEOSサンフラワーズ)
赤穂 ひまわり(デンソー アイリス)
オコエ 桃仁花(富士通 レッドウェーブ)

この17名から、8月中旬の中国遠征と、8月24日・25日にさいたまスーパーアリーナで行われる「バスケットボール女子日本代表国際試合 三井不動産カップ2019」にて、アジアカップに向けて12名か13名に絞り込まれる予定である。

第7次強化合宿から、藤髙三佳、唯一の学生である中田珠未が新たに合流した。第5・6次強化合宿から3年ぶりに代表復帰した渡嘉敷来夢も積極的に声を出して、ホーバスHCと動きを確認するなど、すっかりチームに溶け込んでいるようだった。

しかしそんな中、5対5の実戦練習中に、コート上で緊張感が走った。

「声が出ていません!」

ホーバスHCが、ポゼッションで守備をしていた選手5人が声を出していなかったため、叱咤した。

バスケ女子日本代表トム・ホーバスHCⒸマンティー・チダ


「今のチームで駄目なところ。守備時にコミュニケーションが必要なのに、誰からも声が出ていない。少しずつ良くなっているけどね。コミュニケーション以外でも課題はたくさんあるが、時間もあるので、しっかり準備していきたい」

ホーバスHC率いる女子日本代表は、コミュニケーションをしっかりとり、叱咤することにより緊張感をも高めている。アジアカップ本番の準備に余念がない。

「アジャストされた時にチームとしてどう守っていくのかが大事」本橋菜子

今回の合宿では、4人のポイントガード(PG)が招集されている。6月のベルギー戦にスタート5として出場した本橋が、コート上では存在感を発揮しており、チームの課題を語る。

「これまでの合宿を通じて、少しずつステップアップできているが、連携や守備のコミュニケーション、攻撃面も完ぺきではないので突き詰めていきたい」

本橋は、前回の合宿(第5・6次強化合宿)から渡嘉敷が合流したことで「高さも出る」と期待している。今回招集された代表選手の平均身長が178.8cmに対し、渡嘉敷は身長193㎝だからだ。

「サイズが大きくなる分、守備面ではミスマッチを突かれてやられることも少なくなるし、リバウンドも取りやすくなる。(馬瓜)エブリンが3番に入ると、アース(宮澤夕貴)が2番に上がってくるのかな。まだ合宿でこの形をやっていないが、このメンバーになった時どうなるのか楽しみ」

さらに「やるべきことは変わらない」と、まだ試していないフォーメーションに期待を膨らませている。続けて「日本のバスケットは、コートに誰が入っても基本的には変わらない。その上で、個々の強みをどんどん出すことになるから」と話す。

日本女子は、リオオリンピックでベスト8に入って以来、アジアカップでは3連覇中と世界からマークされる立場になった。

「世界から日本に注目が集まり、研究されている。日本の速いバスケットやチーム全員がアウトサイドシュートを打てることなどは、アジャストされるだろうと考えている。アジャストされた時にチームとしてどう守っていくのかが大事」

バスケ女子日本代表・本橋菜子選手Ⓒマンティー・チダ


試合では、守備に多くの時間を割かれる可能性もある。そういう時に、声を掛け合いながら守備をやりきって攻撃へ転じることができるのか。ホーバスHCが話す「守備におけるコミュニケーション」の改善は、本橋も理解している。そこをチームとして改善ができれば、アジアカップ4連覇もより現実的になるだろう。

「大学生なので、フレッシュにプレーすることが一番」中田珠未

チームで唯一の学生である中田。

「私は大学生なので、フレッシュにプレーすることが一番だと思う。走ることとかリバウンドなどの技術的なことで勝てない部分がたくさんあるけれど、頑張れるところは頑張り続けたい」

ホーバスHCからポストプレーの守備で褒められる場面もあり、チーム内ではハツラツとした動きを見せていた。

中田は、7月にイタリア・ナポリで行われた「第30回ユニバーシアード競技大会」日本代表の主力としてチームの4位に貢献したことで評価を受けて、今回の合宿に参加している。

「ユニバーシアードで、海外の経験ができたのは大きい。前回とは違って、主力として出場することができたので、経験値を上げることができた。スリーポイントシュートやスリーポイントからのドライブはユニバーシアードでも求められていたので、今回の合宿では違和感なく入れている」

中田は、早稲田大学入学当初、ゴール下中心のプレースタイルだったが、大学3年生になってからアウトサイドにも目を向けるようになった。「センターはスリーを打たないという概念が勝手にあった」と話すが、去年のアジア競技大会や代表の1次合宿で呼ばれた際に、チームから「スリーポイントシュート」を求められ、本格的にアウトサイドシュートの練習を始めた。

「始めてから一年半ぐらいなので、スリーポイントシュートが入らなくても、落ち込んだことがない。始めたばかりでシュートが入らないのは当たり前のこと。他の選手は、何年もシュートを打ち込んでいるのに、1年半でそこに追いついたらすごい。だから、気負わずに思い切ってできる」

中田は「代表のすごい主力ではない」と言う。だから、挑戦者という気持ちで臨んでいた。「どこまで通用するのか、どこまで評価されるのか」というスタンスで合宿に参加しているので、気負うこともないようだ。

「メンバーに入れなかったらどうしようという立場でもない。これ通用したとか、これやられたというのがシンプルに楽しい」

大学でも4番ポジション(ゴール下に近いポジション、パワーフォワード)ながら、アウトサイドからのシュートも積極的に打っている。

バスケ女子日本代表・中田珠未選手Ⓒマンティー・チダ


「相手にとっても、私にスリーを決められたら嫌だと思う。勝手に大学へ持ち込んでプレースタイルを変えている」

笑いながらそう答える中田。来年に控える東京オリンピックに向けて、中田は日本の秘密兵器になるかもしれない。

役者がそろった女子日本代表。アジアカップ4連覇へ向けた準備が着々と整っている。この大会で結果を残し、東京オリンピックへ向けてのステップにしたいところだ。

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