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バスケ男子日本代表 ウィリアム・ジョーンズカップに向けて戦力底上げへ

バスケ男子日本代表合宿練習風景Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

平均年齢22.9歳 サイズのある若手が勢ぞろい

7月12日から21日まで、チャイニーズ・タイペイで開催される「第41回男子ウィリアム・ジョーンズカップ」。強化及び選手選考を兼ねた第2次合宿が行われており、今年は日本代表の継続的な強化を目的とし、若手主体のメンバー構成で大会に臨む。

【今回召集された選手】
太田 敦也(三遠ネオフェニックス)
ウィリアムス ニカ(秋田ノーザンハピネッツ)
張本 天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)
安藤 誓哉(アルバルク東京)
橋本 晃佑(栃木ブレックス)
ベンドラメ 礼生(サンロッカーズ渋谷)
安藤 周人(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)
フリッピン コー(千葉ジェッツ)
玉木 祥護(京都ハンナリーズ)
中村 太地 (法政大学4年)
ラシード ファラーズ(東洋大学4年)
星野 曹樹 (白鷗大学4年)
平岩 玄 (東海大学4年)
シェーファー アヴィ 幸樹(アルバルク東京)
山本 浩太 (東海大学4年)
小酒部 泰暉(神奈川大学 3年)
テーブス 海(ノースカロライナ大学ウィルミントン校1年)
渡邉 飛勇(ポートランド大学2年)
井上 宗一郎(筑波大学2年)
小川 春太(マサチューセッツ工科大学・進学予定)
田中 力(IMGアカデミー)

エルマンHCⒸマンティー・チダ

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今回召集された選手の平均年齢は22.9歳と若く、平均身長も195.5cmとサイズの大きな選手が揃った。

エルマンHCはベンドラメ礼生と張本天傑を“中心”に指名

ウィリアム・ジョーンズカップでは、アシスタントコーチのマンドーレ エルマン氏が、ヘッドコーチ(HC)としてチームを指揮する。

「若手中心で、サイズのある選手をできるだけ呼んだ。一人の選手を中心に据えてから、その周りを作るのではなく、チーム全体がうまく連携できるように、色んなタイプの選手を連れてきて、ベースを作っている段階。チーム作りでは、このような点を大事にしている」

今回のメンバー構成は、若手が中心で「1.5軍」という立ち位置。ここで結果を出した選手は、8月末から始まるワールドカップ本大会に召集される可能性もある。

「一番見るのはサイズ。そして、これまで積み重ねてきた、我々のスタイルに合うかどうかで、チームプレーが出来ない選手は召集できない」

エルマンHCは、改めて、チームプレーの重要性を強調した。合宿では21人の選手を招集しているが、最終的にはこの中から12~13名が選出されることになっている。

エルマンHCは“公式試合を見ないとわからない”とした上で、本大会の代表に近い選手として、ベンドラメと張本の名前を出した。2人とも先のワールドカップアジア予選に召集された経験があるので、このチームでは主要メンバーとなってもらわないと困るのだ。

名前があがった2人の選手は、共にチームの中で自分の役割を認識していた。

「自分はジョーンズカップを3回経験している。声を出して引っ張ることも重要で、できるだけやりやすい環境をつくれるよう、コミュニケーションを図れるようにしたい」(ベンドラメ)

「若手と一緒にやりながら、まだまだA代表のレベルには達していないが、少しずつみんなの息があってきたなと思う」(張本)

もちろん、2人とも若手から大いなる刺激を受けている。

ベンドラメ礼生選手と張本天傑選手Ⓒマンティー・チダ

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「メインのポイントガードとして、試合に出ることが多くなると思うので、チームの中心として、試合を作っていくことが大事。ポイントガードとして、何が必要かを感じることも出来る。若手には負けません。自分も上を目指さないといけない」(ベンドラメ)

「若い選手はディフェンスもオフェンスもアグレッシブで攻めてくる。合宿が始まる前に、エルマンHCから『ビッグマンではなく、ペリメーターとして使う』と指示を受けた。これまでの4番(パワーフォワード)ではなく、3番(スモールフォワード)に挑戦しながら、個人のレベルアップにつなげたい」(張本)

現在の日本代表において、ベンドラメは、ポイントガードでは、富樫勇樹、篠山竜青に次いで3番手に位置している。張本も、4番のポジションで考えれば八村塁、竹内譲次に次ぐ3番手。今回召集されているメンバーも虎視眈々とそのポジションを狙っているので、決して油断はできないが、2人とも中心を担っていかないといけない存在でもある。

サイズの大きい選手をアウトサイドに向けることの重要性

今回召集されたメンバーは、平均身長が195.5㎝と近年の日本代表で考えれば大きい方だ。

参考までに、FIBAバスケットボールワールドカップ アジア地区2次予選Window6では、平均身長193.8㎝。Window5は、194.9㎝。昨年6月、オーストラリアに歴史的勝利を飾ったWindow3でも192.9㎝なので、以前よりサイズのある選手たちが召集されていることを数字からも読み取れる。

さらに、200㎝以上の選手が8人招集さているため、これまでインサイドを主戦場としていた選手も、サイズによってはアウトサイドに目を向けなければならない。張本が指示された通り、4番ではなく3番でプレーしているのも、その一貫である。

招集されたひとりである平岩は、身長199㎝とこのメンバーで見れば平均より少し高いぐらいだ。所属する東海大学に戻れば、インサイドの要。しかし、サイズのある選手たちが揃うと、アウトサイドでプレーすることもある。昨季からアウトサイドからのプレーにも力を入れていることもあり、今回の合宿では4番として勝負ができる。

「アウトサイドについては、練習で一杯失敗して、トライ&エラーでやっている。昨季から3pシュートを打っていたけど、正しいプレーでない時もあった。今回こうして長期間、たくさんのコーチから教わって、正しいプレーを身に付けるという意味では、昨季より見えている景色は違う」

下級生の頃は、ペイントエリア付近からの得点が多く、3pシュートを放つことすら無かった平岩。しかし昨年の関東大学バスケットボールリーグ戦では30本放って6本決め、今年の関東大学バスケットボール選手権大会では、2本放って0本だったが、アウトサイドに目が向いているだけでも成長を感じ取ることができる。

もう一つの変化は、アウトサイドからインサイドに入っていく動きが多くなったこと。4番であれば、攻守ともにアウトサイドに位置することが、5番よりも多くなるため、アウトサイドからのレイアップやオフェンスリバウンドが増えているのだ。

平岩玄選手Ⓒマンティー・チダ

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「インサイドに飛び込んでいくからには、力強くこじ開けていかないといけない。逃げて外から打つのではなくて、飛び込んだ時はインサイドで体を張って、外からも攻撃できるようにしていきたい。大学でも代表でもやること自体は変わらない」

サイズのある選手が、アウトサイドにも幅を利かせると、それだけでも相手にとっては脅威だ。今回の合宿は、ウィリアム・ジョーンズカップに向けての選考が主目的でもあるが、新戦力発掘の場でもある。平岩をはじめとしたインサイド陣が、合宿や本大会で、幅を利かしたプレーをすることができるのか。引き出しが多い選手は、代表にとっても、のどから手が出るほど欲しいところだ。若手の成長は、代表の主力選手に対して、大いに刺激になるところである。

現在の日本代表におけるインサイド陣は、ファジーカス ニック、NBAドラフト1巡目指名を受けた八村塁、長年日本代表のゴール下を担ってきた竹内公輔・譲次兄弟や太田が中心になっている。しかしこうした経験を積む若手から、彼らを脅かすプレーヤーが現れると、日本代表のみならずバスケット界の底上げにつながるだろう。