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1万メートル27分台の選手がいないと勝てない?進む箱根駅伝の高速化

2023 12/27 06:00鰐淵恭市
イメージ画像,ⒸPavel1964/Shutterstock.com
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上位10人の平均タイムは徐々に速く

近年、学生駅伝のレベルが上がっていると言われるが本当なのだろうか。第100回箱根駅伝(2024年1月2、3日)で「1強」と言われる駒大の戦力はどれだけすごいのか。過去の優勝チームの走力を調べてみた。

箱根駅伝過去5年優勝校と100回大会の駒大の比較


比較したのは直近5大会の優勝校の1万メートルの平均タイム。各校の登録選手は16人だが、実際に箱根を走るのは10人のため、登録選手で1万メートルの自己記録を持つ選手全員の平均と、上位10人の平均を比べてみた。

95回大会優勝の東海大は短い距離で強い選手が多く、1万メートルのタイムを持っていない選手が5人もいたため、比較が難しいが、上位10人の平均タイムは98回大会優勝の青学大を除いて、右肩上がりで速くなっている。

一方で、98回大会の青学大は別の意味で驚異的だった。層の厚さが抜群で、16人全員が28分台で走っていた。誰が出ても同じレベルで走れる選手で構成されていたことの表れであり、ほかの大会を見ても突出した選手層だったことがわかる。

27分台や28分台前半などトップ層が増えつつある

選手の自己タイムの内訳を見ると、トップ層の高速化が分かる。かつて、1万メートル27分台と言えば、実業団にも多くなく、学生では「超」がつくほどのトップレベルだった。28分台前半でもかなり力のある選手とされ、28分台後半でも十分速いと見られていた。

現在もその見方は変わらないかもしれないが、トップ層が増えてきた。27分台の選手は97回大会優勝の駒大で1人、99回の駒大で2人いた。そのほかは0だ。

27分台を含めた28分30秒以内の選手でみると、95回大会から、2人、1人、4人、4人、6人とおおよそ右肩上がりになっている。「高速化」の傾向にあることが分かる。

上位10人のタイムが過去5大会優勝校を上回る駒大、27分台も3人

今回優勝候補の筆頭として上がる駒大のタイムを見てみる。

登録選手16人の平均で見ると、そこまで速くないが、上位10人の平均は過去5大会の優勝校の平均を上回っている。

さらに、選手個々のタイムでみると、今回は27分台の選手が、佐藤圭汰、鈴木芽吹、篠原倖太朗と3人いる。ほかにも28分30秒以内の選手が3人もいるのは驚異的だ。青学大の原晋監督が「今回の駒大は史上最高」と評するのもうなずける。

箱根駅伝の区間距離はおおよそハーフマラソンと同じであることや、「山」という特殊要素もあり、トラックのスピードだけでは計れないところがあるのは事実。

しかし、シューズの開発やトレーニング方法の進化もあり、かつてのように1万メートル29分台の選手が何人かいても勝てるという状況ではなく、27分台や28分台前半の選手が多くいないと、勝てない状況になっていると言えるだろう。

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