「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ワリエワのドーピング騒動が一区切りも大混乱、デザートに薬物混入?

2024 2/14 06:00堺俊輔
カミラ・ワリエワ,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

ロシア反発、4位のままのカナダも法的手段示唆

2022年北京冬季五輪のフィギュアスケート女子で当時15歳の注目選手だったカミラ・ワリエワ(ロシア)を巡る薬物違反騒動がようやく2年で一区切りを迎えた。

2種類の4回転ジャンプを武器に、圧倒的な強さで他の選手の心を折ることから「絶望」の異名を取った2020年世界ジュニア選手権女王。北京五輪中に違反が発覚し、既に国際大会から姿を消して久しいが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は1月29日、禁止物質のトリメタジジンが検出された現在17歳のワリエワのドーピング違反を認定し、2021年12月25日から4年間の資格停止とその間の全ての成績を失格とする処分を科すと発表した。

しかしメダル授与式が急きょ中止となり、暫定扱いとなっていたフィギュアスケート団体の順位を巡り再び大混乱に陥っている。

翌日の国際スケート連盟(ISU)の発表によると、4種目合計65点で2位だった米国が金メダル、63点で3位だった日本が銀メダルに繰り上がった一方で、ワリエワがメンバーだった1位のロシア・オリンピック委員会(ROC)がチーム全体で失格とはならず、74点から54点に減点されて銅メダルとなり、53点のカナダは4位のままだった。

これにロシア側は猛反発、30日以内にスイス連邦最高裁判所に上訴する権利があり、カナダも「あらゆる異議申し立ての選択肢を検討する」と法的手段も辞さない構えなのだ。

祖父の心臓病の治療薬がデザートに混入と主張

CASが2月7日に公表した詳細な裁定文書によると、ワリエワ側は狭心症の治療薬トリメタジジンに陽性反応を示した要因として、心臓手術を受けたワリエワの祖父が用意したイチゴのデザートに常用薬が混入した可能性があると主張していたことも判明。

2021年12月のロシア選手権直前にイチゴのデザートを食べたが、祖父がデザートを準備中に錠剤を落としたか、錠剤を粉砕するために使用していたまな板に薬の残留物があった可能性を訴えている。

しかし、CASは「証拠にあまりにも多くの欠点がある。この主張は具体的な証拠によって裏付けられていない。意図的にドーピング違反を行ったわけではないということを立証できなかった」などと指摘した。

16歳未満「要保護者」、周囲のコーチなども責任

ワリエワ騒動が長期化した背景は、この問題を最初に調査したロシア反ドーピング機関(RUSADA)が「当時15歳だったワリエワ選手は要保護者に当たり過失はなかった」として2021年12月のロシア選手権のみを失格とする判断を下したことが発端にある。

さらにロシア選手権で採取した検体にもかかわらず、検査結果の報告が2022年2月の北京五輪の団体終了翌日と遅かったことが混乱に拍車をかけた。CASは世界反ドーピング機関(WADA)規定で16歳未満は「要保護者」として個人種目出場を容認したが、今回の裁定は「大人の競技者と異なる扱いをする根拠はない」と判断した。

一方で当時15歳だったアスリートを守れなかった周囲の大人の責任を追及する声も上がっている。ワリエワもロシアで数々の五輪ダリストを育てたエテリ・トゥトベリーゼコーチに才能を見いだされた1人。

世界反ドーピング機関(WADA)はCASの裁定を歓迎した上で「子どもたちへのドーピングは許されない。年少者の競技力向上を目的とした禁止物質を提供した医師やコーチ、サポートスタッフは責任を負うべきだ」との声明を出し、要保護者に当たる年齢の低いアスリートが巻き込まれる現状に警鐘を鳴らした。

【関連記事】
2030年冬季五輪の主役?島田麻央が冬季ユース五輪でフィギュア女子初の金メダル
フィギュアスケート本田真凜、シニア転向後の挫折と笑顔のプロ転向表明
「りくりゅう」ペア、フィギュアスケート四大陸選手権で笑顔の銀メダル