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年間1位、ファイナルズ優勝を果たした女王バーティは万能プレーヤー

2019 12/30 06:00橘ナオヤ
オーストラリア女子プロテニス選手のアシュリー・バーティⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

新女王はオーストラリアの23歳

WTAツアーの2019年、また新たな女王が生まれた。年間ランキングの1位、そしてWTAファイナルズ優勝と、シーズン最後に2つの栄冠に輝いたのは、オーストラリアの23歳、アシュリー・バーティだ。WTAランク年間順位とファイナルズの両方で1位に輝いた選手は、2014年シーズンのセリーナ・ウイリアムズ以来、実に5年ぶりのことだ。

ランキング15位でシーズンをスタートしたバーティは、シングルスで4つのタイトルを獲得。またダブルスでも1勝をあげた。シングルスだけで計70試合(ツアー15大会64試合、フェドカップ6試合)を戦い、57勝13敗という好成績を収めた。ファイナルズ以外に獲得したタイトルは、マイアミ・オープン(WTA Premier Mandatory/ハード)、全仏オープン(グランドスラム/クレー)、そしてネイチャーバレー・クラシック(WTA Premier/芝)。シングルスの年間4勝とランク1位はいずれもキャリアハイだ。

アシュリー・バーティ2019ツアーシングル戦績(フェド杯含む)ⒸSPAIA
アシュリー・バーティ2019シーズン獲得タイトルⒸSPAIA

今季「王座」に就いたのは3人

2019年シーズン、WTAランク1位になったのは3人。シーズン序盤に1位にいたのは、シモナ・ハレプ(ルーマニア)だった。2018年2月26日から実に48週の間王座に君臨していた。ハレプからその座を奪ったのが全豪優勝を果たした大坂なおみ。1月28日から6月23日までの21週の間トップにいた。その後、大坂はコーチ解任などで調子を落とし、ポイントを取りこぼしていく。そこで1位に躍り出たのがバーティだ。

全仏での優勝に続いて、ネイチャーバレー・クラシックでも優勝したことで、一気にポイントを積み上げ、大坂を抜き去った。この時はわずか7週で大坂に1位を明け渡したが、ウェスト&サザンオープン(Premier 5/ハード)で準決勝進出、全米オープンでベスト16入りしたことでポイントを積み上げると、9月9日には再び1位を奪取。その後もアジアツアーで武漢オープン(WTA Premier 5 ハード)ベスト4、中国オープン(WTA Premier Mandatory/ハード)では準優勝。シーズン終了まで勢いが衰えることは無かった。

バーティが今季獲得したタイトル数は2位のプリスコバと同じ4つだが、年間獲得ポイントではプリスコバを2000ポイント近く突き放して圧勝。その理由は、上位カテゴリ大会での安定した成績だ。グランドスラムは全4大会でベスト16以上。グランドスラムに次ぐPremier Mandatory(全4大会)でも優勝1回、準優勝とベスト8が1つずつと、安定して成績を残した。

全サーフェスで戦えるオールラウンダー

グランドスラム初優勝以上に注目したいのは、全てのサーフェスで結果を残したことだ。バーティは多彩な球種を打ち分けられる高い技術力と、安定した守備力を持つオールラウンダー。強力なサーブは球足の速い芝で武器となり、スライスを中心とした多彩なバックハンドはクレーで真価を発揮。またお手本のように綺麗なフォームで有名なフォアハンドは、特にハードコートで相手の脅威となる。ネットプレーも得意としており、どのコートのどこにいてもレベルの高いプレーができる。

技術とともに注目したいのが、コートカバー能力の高さだ。フットワークが軽く、とても守備範囲が広い。さらにショット時の体重の乗せ方が非常に上手く、やや無理な体勢でもしっかりとコントロールした返球が可能だ。この高いボディバランスと優れた技術により、状況に応じて効果的に、相手の嫌なところに打ち分けることができる。

また大坂やセリーナほどではないが、現代女子テニスでトップに立つために不可欠なパワーも兼ね備える。シングルスだけでなくダブルスでもシーズンを通じて勝ち上がり、タイトルも手にするスタミナも持ち合わせている。彼女のポテンシャルを考えれば、今季の躍進は不思議ではない。

Big3がいまだに支配する男子テニスと対照的に、女子テニスは群雄割拠の様相を呈している。ハレプ、大坂、バーティといった今シーズン1位になった3人だけではなく、多くの選手がNo.1の座を争える実力を持っている。その中で、バーティは今季の調子を維持して首位をどこまで守り抜くことができるだろうか。