「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

大坂なおみがサービスエースゼロのベンチッチに敗れた理由とは

2019 9/4 17:12中村光佑
2019年全米オープン女子シングルス4回戦、日本の大坂なおみ選手のプレーⒸゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

2年連続の全米優勝を阻まれた大坂

全米オープン女子シングルス4回戦に日本の大坂なおみが登場。ベスト8入りをかけてベリンダ・ベンチッチ(スイス)と対戦。2人は1997年生まれで同年代だが、同年代対決を制したのはベンチッチだった。

第1セットから大坂が先にブレークを許す苦しい展開。第4ゲームでブレークバックに成功するが、ベースラインより前でアグレッシブにプレーするベンチッチの前に大坂はリードを奪えない。

第11ゲームではパッシングショットを決められてブレークを許し、大坂は第1セットを5-7で落としてしまう。

第2セットでもベンチッチは大坂の強烈なショットに応戦。お互いにキープが続いたが、第5ゲームでは大坂がダブルフォルトやショット選択ミスを重ねてブレークを許した。そのまま大坂は流れをつかめず、第10ゲームもラブゲームでキープされ、4-6で試合終了。

大坂の全米2連覇の夢は潰えた。大坂は2019年シーズン、ベンチッチとすでに2度対戦しているが2戦とも敗北を喫しており、今回の全米でもリベンジを果たすことはできなかった。

エースなしでも大坂に勝ったベンチッチ

それではここからはこの試合のスタッツを振り返ってみる。

大坂なおみ 対 ベリンダ・ベンチッチ戦スタッツⒸSPAIA

ⒸSPAIA

まず2人の間に1stサーブの確率の差はほとんどないが、1stサーブポイント獲得率と2ndサーブポイント獲得率に大きく差が出ている。ベンチッチは大坂の1stサーブも辛抱強く返し、特にセカンドサーブ時には前に踏み込んで深いボールでリターンをする場面が多く見られ、大坂はその対応に苦しんでいた。よって、大坂はサーブが入ったとしても得点が思うように伸びなかった場面も多く見られた。

また、ラリー戦になってもベンチッチは常にベースラインより前で積極的に打ち込んでいたため、大坂は常に後ろに踏ん張りながら苦しい体勢でストロークを強いられた。

アンフォーストエラーの数は大坂が21でベンチッチを上回ったものの、決して多いとはいえない。しかし、ベンチッチはエラーを大坂よりも少ない12本に抑え、力のある深い球で大坂の持ち味であるパワーを封じ込めた。

ベンチッチのサーブ・ストロークへの対応力の高さがレシーブポイントで大坂を大きく上回る原因となり、サービスエースが0でも勝てたことにつながった。

ベンチッチの前に大坂がブレークポイントをつかんだのは第1セットの第4ゲームのみで、それ以降は1度もチャンスがなかった。

ベンチッチは常に主導権を握り、7回つかんだブレークポイントのうち、3回をものにしたことも勝利に直結した。大坂は得意のサーブでエースを9本放ち、ある意味持ち味は出せていたと言えるが、全体的なスタッツでベンチッチの方が上回っていたのだ。

大坂は敗退も気持ちは前向き

大坂は敗退したものの、特段落ち込むことはなく、「多くを学べた」と前向きに語った。今回の大会ではメンタル面でも成長が見られ、自分からミスを連発して崩れていく試合はなかった。

ただ、大坂は全米の前哨戦で痛めていた左膝についても言及し、「少し気になった」とコメント。それでも7月にウィンブルドンの1回戦で敗退した時と比べても、この日の大坂は比較的充実した表情を見せていた。

次回出場の大会は大阪で開かれる東レ・パンパシフィックオープン。前回大会ではプリスコバ(チェコ)に決勝で敗れ準優勝となったが、生まれ故郷の日本で開催される思い入れのある大会だ。次こそ日本のファンの前で優勝を見せられるか。ここからの躍進に期待が高まる。