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スタッツでも錦織圭はフェデラーに完敗 全英8強止まりでも成し遂げた快挙とは?

2019 7/11 15:40中村光佑
ウィンブルドン2019でフェデラーに負けた錦織圭
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Ⓒゲッティイメージズ

フェデラーの壁を破れなかった錦織

10日、ウィンブルドンの準々決勝が行われ、8強進出を決めた錦織圭はR・フェデラー(スイス)と対戦。日本人男子86年ぶりのウィンブルドンベスト4進出が期待されたが、惜しくも錦織はフェデラーの前に屈した。

第1セットはギアの上がらないフェデラーに対して正確なリターンでポイントを重ねた錦織が先取。しかし、その後はフェデラーが繰り出すサーブ精度の高さとテンポの速い攻めを前にチャンスをつかめず、第2、3セットを連続で落とした。

第4セットの錦織は何度もブレークチャンスを握られながらも何とかしのいだが、第9ゲームでブレークを許し力尽きた。2年連続で8強進出を果たした錦織、またしても”3強の壁”を前にベスト4進出はかなわなかった。

サーブの精度に大きな差が

ここからは錦織とフェデラーのスタッツを見ながら比較してみる。

錦織とフェデラーの2019年ウィンブルドンのスタッツⒸSPAIA

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差が出たのは1stサーブの確率と1stサーブ成功時の得点率だった。フェデラーは66%の割合で1stサーブを決め、錦織は57%。錦織自身も試合後に「サービスゲームの確率が低かった」と述べた通り、サーブの確率は明らかにフェデラーが上回った。また、1stサーブ成功時の得点率はフェデラーが81%だったのに対し、錦織は57%と大幅に下回ったことも敗因の1つといえる。

ブレークチャンスもフェデラーは14回あったのに対し、錦織は6回しかなく、いかにフェデラーのサーブに錦織が苦しめられたかが見て取れる。つまり錦織にはほとんどチャンスがなかったのだ。

また、他にも差が出ているのがリターンゲームでのポイント。合計ポイント数はフェデラーが138、錦織は106ポイントであったが、そのうち錦織がリターンゲームで奪ったのは28ポイント。対するフェデラーは60ポイントと4割以上の数字を残している。

錦織は自身のゲーム回数18のうち、半分の9ゲームでブレークポイントを握られた。これはフェデラーがリターンで攻めの姿勢を最後まで崩さなかったことが挙げられ、錦織は自分のサービスゲームをキープするのに精いっぱいだったと言える。

省エネのテニスで上位進出を果たした

敗れはしたものの、今回のウィンブルドンでは錦織にある変化が見られた。それは錦織がベスト8まで「省エネ」で勝ち上がってきたことだ。19年1月の全豪及び6月の全仏では、8強に勝ち上がるまでにすでに13時間以上コートに立っていた。それが今回は9時間以内まで抑えられ、フェデラー戦でも錦織が疲れ果てる様子は見られなかった。

2019年四大大会のここまでのベスト8までの試合時間ⒸSPAIA

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こういった試合時間の減少を支えたのは、錦織の速い攻撃の展開や、好調のサーブであった。特に1stサーブの確率の高さが際立ち、1回戦から3回戦までは全て70%以上の成功率だった。常に短く試合を終わらせることを意識し、1回戦から4回戦まで失ったセット数はわずか1。上位進出までに体力を削ってしまった反省を生かし、得点に結びつけていく姿がファンの間でも話題になった。

また、錦織はこの大会で一つ「快挙」を成し遂げている。今大会の8強進出により、18年のウィンブルドンからグランドスラム5大会連続でベスト8以上を果たした。この記録を達成したのは、他にナダルとジョコビッチしかいない。「我ながらそこは評価できる」と語った錦織、結果の安定性が光る。

次なるグランドスラムは8月末に開かれる全米オープン。昨年ベスト4に進んだだけに期待が高まる。今回の敗戦を糧に、更なる飛躍を遂げられるだろうか。