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九州場所で決まる年間最多勝は幸運のジンクスかワースト記録か

2019 11/10 06:00井川博輔
今年の年間最多勝は誰の手に?Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

御嶽海と阿炎が45勝でトップ

年間6場所が開催される大相撲の1年。その締めくくりとなる九州場所(福岡国際センター)が、11月10日に初日を迎える。

賜杯の行方、栃ノ心の大関復帰に注目が集まる今場所だが、注目すべき点は他にもある。その内の1つが「年間最多勝」。1年で全90日間行われる取組の中で、最も白星を記録した幕内力士に贈られる賞だ。

昨年は59勝をマークした大関栃ノ心が、自身初となる受賞を果たした。今年も九州場所の結果をもって受賞者が決定するが、ここまで5場所を終了した時点で“タイトル争い”を演じているのが以下に挙げた上位5名の力士たちだ。

1位 御嶽海 45勝
1位 阿炎  45勝
3位 朝乃山 44勝
4位 豪栄道 43勝
5位 遠藤  42勝

現在、同じ勝ち数で1位タイに位置するのが関脇御嶽海と小結阿炎。御嶽海は秋場所の優勝、阿炎は初場所から秋場所までの連続勝ち越しによりここまで数字を伸ばしている。ちなみに、ここまでの5場所で全て勝ち越しを記録している力士は阿炎の他にはいない。

その両名を星の差1つで追うのが5月場所、そして令和初の優勝力士である小結朝乃山。現時点でも“飛躍の1年”といっても過言ではないほど活躍している今年の朝乃山だが、この勢いを最後まで維持してタイトルを狙っていきたいところだ。

43勝で4位につける大関豪栄道は、上位5名の中では唯一となる大関以上の力士。裏を返せば今年はそれだけ横綱・大関陣が不甲斐なかったということだが、その最後の砦として今場所はなんとか意地を見せたいところだろう。

42勝の小結遠藤は1位と3勝差の5位となっているが、ここ2場所は平幕上位、小結の位置でそれぞれ勝ち越していることから、幕内上位との戦いに適応してきていることが窺える。九州場所でもそのような相撲が取れれば最多勝と共に、自身初となる関脇昇進も十分に現実味を帯びてくるだろう。

今年の年間最多勝のボーダーラインは、55勝以上となることが予想される。現時点での上位5名から受賞者が決まるのか、それとも6位以下の力士の大逆転受賞があるのか。優勝争いに負けじと、こちらも熾烈な戦いが繰り広げられるのは想像に難くない。

関脇以下なら史上3人目

上位5名の内、豪栄道を除く4名は1年を通じて関脇以下に位置している力士たち。この4名の中から受賞者が出れば、大鵬(元横綱)、貴乃花(元横綱/当時は貴花田)以来史上3人目の快挙となる。

1960年に66勝で初受賞した大鵬は、同年の九州場所後に大関に昇進。さらに、翌年の秋場所後には横綱昇進を果たすなど出世街道を駆け上がっていった。なお、大鵬は初受賞の年を含め、合計6回(史上3位)同賞を手中に収めている。

合計60勝をマークした1992年に年間最多勝に輝いた貴花田も、翌年の初場所後に大関の座を射止めると、さらにその翌年の九州場所後には横綱に昇進した。

大鵬・貴乃花が同賞の受賞を機に角界を代表する大横綱へと成長していったことを考えると、関脇以下の力士にとって同賞の受賞は今後の出世を約束してくれる「幸運のジンクス」であるといっても過言ではないだろう。

56勝のワースト記録更新は?

過去の年間最多勝の中で、最も勝ち星が低かったのは2017年。横綱白鵬が2年ぶり10度目の受賞を果たした年だが、勝ち星は56勝と1場所平均で2ケタにも満たない数字だった。

今年の年間最多勝は、現在1位の御嶽海・阿炎が45勝であることから最大で60勝。つまり、現在の上位5名がそれぞれ12~15勝を挙げないとワーストタイ記録、もしくは記録更新が現実のものとなってしまう。

2年間という短いスパンでのワースト記録更新となると、ファンや有識者から「相撲のレベルが下がっている」という烙印を押される可能性も捨てきれない。上位5名の力士には、不名誉な記録を作らないため奮起が求められているといえるだろう。果たして、今年の受賞者は一体どの力士になるのだろうか。

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