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御嶽海2度目の関脇優勝も12勝3敗 横綱不在で優勝ライン低下

2019 9/28 11:00橘ナオヤ
イメージⒸPATARA/Shutterstock.com
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横綱不在の九月場所は同期の両関脇の勝負に

両横綱不在で大関も高安が休場と、波乱の展開となった大相撲九月場所は関脇御嶽海の優勝で幕を閉じた。3敗で並んだ優勝決定戦の相手は、同期力士の関脇貴景勝。最後まで優勝を争った御嶽海と貴景勝は二桁勝利。その結果、貴景勝は大関復帰し、優勝した御嶽海は来場所に大関昇進へ挑むことに。

関脇で2度優勝したのは名力士朝汐以来、実に62年ぶりだ。

突き押しを貫いた両力士の優勝争い

御嶽海は初日に朝乃山、八日目に貴景勝に敗れたものの、負け越していた栃ノ心と戦績が互角の豪栄道に勝利。苦手な両横綱と高安が不在だったことも追い風となり、得意の突き押し相撲で15番を取り切った。優勝決定戦では一度敗れた貴景勝相手に変化をつけるかと思われたが、自身と同じく突き押しを得意とする貴景勝に真っ向からぶつかり、引いた相手をそのまま寄り切った。

一方、貴景勝にとっては複雑な場所となった。大関陥落してから一場所での大関昇進を果たしたものの、優勝決定戦で左大胸筋を負傷。秋巡業はおろか、十一月場所の出場も危ぶまれている。御嶽海と並ぶ勝ち星を挙げた功績から技能賞候補にも挙がったが、大関陥落直後ということもあり見送り。技能賞は該当力士無しとなった。

苦手とする両横綱と大関の不在

関脇同士の優勝争いとなった今場所だが、この結果には両横綱の途中休場と大関高安の全休が大きく影響している。御嶽海は白鵬に3勝9敗、鶴竜に5勝7敗、高安に6勝12敗。貴景勝は白鵬に1勝4敗、鶴竜に1勝3敗、高安に3勝6敗と、どちらも3力士に負け越している。

このことから、優勝を争った御嶽海と貴景勝は欠場した3力士が苦手と思われる。彼らの欠場により、苦手力士との取組みがなくなっただけではなく番付が下の力士と組まれることになり、結果、2人を後押しする形になった。

両横綱の不在で優勝ラインが低下

御嶽海と貴景勝は12勝3敗、途中まで優勝を争った隠岐の海は11勝4敗。そのため、高いラインではないが優勝ラインは12勝3敗となった。

横綱の休場と優勝ラインⒸSPAIA

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実はこの2年、全休や途中休場を問わず、両横綱が休場すると優勝ラインは下がる傾向にある。

白鵬はベテランになり、この2年で休場は7回。しかし、調子が整っていた18年九月場所と19年三月場所には全勝優勝しており、依然として角界トップクラスの実力を保っている。そして、その陰に隠れがちだが歴代10位となる横綱在位33場所の鶴竜も、この2年は白鵬(2回)を上回る3回の優勝を果たしている。

彼らが健在の場所では優勝ラインが14勝や15勝になることが多い一方で、両横綱いずれかが休場した場所の多くでは13勝や12勝で優勝が決まるというのが最近の傾向だ。

白鵬が早期休場し、中盤で鶴竜も休場したことで、中盤で取りこぼした御嶽海、貴景勝は後半に建て直せばそのまま優勝を争える状況だと感じていたかもしれない。

若手の台頭、ベテランの不在の大きさを感じさせた九月

優勝を争った御嶽海と貴景勝が実力をつけていることに間違いはないが、若手の台頭にとっては朗報だっただろう。関脇による優勝争いが12勝3敗という低いラインで繰り広げられた背景には、長く幕内を牽引してきた両横綱の不在が大きく影響しているため、仮に両横綱が健在だった場合に優勝できたかどうかは怪しいところだ。

来場所に横綱大関勢と貴景勝が揃って出場できるかは不透明だが、次は苦手とする横綱大関を下して優勝に絡むことができれば、大相撲の世代交代の真の担い手となりうるだろう。