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大相撲秋場所で“大金星”が狙えそうな平幕力士は?

2019 9/8 11:00柴田雅人
秋場所も大本命の白鵬Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2横綱は順調、一方3大関は…

大相撲秋場所(9月8日~22日/東京・両国国技館)が間近に迫っている。先の名古屋場所は貴景勝(初日~/場所後に大関陥落)、栃ノ心(6日目~)、豪栄道(8日目~)、高安(11日目~)と4大関全員が休場に追い込まれたこともあり、優勝争いは白鵬、鶴竜の2横綱の一騎打ちという状況に。結局、千秋楽での直接対決を制した鶴竜が、14勝1敗で6回目の優勝を手にする結果となった。

迎える今場所も、優勝争いの中心となりそうなのはこの2横綱。“ディフェンディングチャンピオン”の鶴竜は、母国モンゴルで英気を養った甲斐もあってか、先場所後からここまで順調な調整ぶり。度々悩まされてきた腰痛も、全く問題ない状態になっているという。

賜杯を譲った白鵬も徐々にコンディションを上げてきており、3月の春場所で負った右腕の負傷についてもかなり回復しているとのこと。この調子のまま場所を迎えられれば、全勝優勝を果たした昨年に迫るような強さが見られるかもしれない。

2横綱がここまで順調にきている一方、貴景勝を含む先場所の4大関はいずれも少なくない不安を抱えている。先場所8勝で辛くもカド番を免れた高安は、左ひじの怪我の影響により夏巡業を全休。右肩の怪我で同じく巡業を全休した豪栄道は、ここ数日になってようやく相撲を取る稽古を再開したという状況となっている。

また、右ひざ、左肩に故障を抱える栃ノ心も精彩を欠く稽古が続いていることが伝えられており、貴景勝に至っては21日に行われた健康診断を4名の中で唯一欠席してもいる。こうした状態にカド番脱出(豪栄道、栃ノ心)、大関復帰(貴景勝)といった目標への重圧も加わることを考えると、以上の4名に2横綱に対抗する役割を期待するのは少々酷。いずれの力士も優勝ではなく、2ケタ勝利が現実的な目標と言えそうだ。

なお、豪栄道、栃ノ心がカド番脱出に、貴景勝が大関復帰に失敗した場合は大関が高安1人だけとなり、次の九州場所では「横綱大関」(横綱が大関を兼任する制度)が適用されることになる。実現すれば約37年ぶりの緊急事態となるだけに、展開によっては優勝争いよりも注目を集めることになるかもしれない。

代わりに対抗できそうな力士は誰?

“角界ナンバー2”の大関陣が軒並み不安を抱えていることを考えると、“角界ナンバー1”の横綱陣にかなりの追い風が吹いている点は否めない。ただ、だからといって優勝争いに殴り込みをかけそうな力士が、他に全くいないというわけではない。

その急先鋒としてまず期待したいのは、今場所で三役連続在位が16場所まで伸びた関脇御嶽海。良くも悪くも“安定”が続くが、昨年の名古屋場所で初優勝、そして今年の初場所では怪我もありながら3横綱1大関を撃破と地力は十分。大関とりへの足固めも含め、2横綱に迫るような成績を期待したいところだ。

今年初場所から勝ち越しを続ける小結の阿炎は、新小結として臨んだ先場所も8勝7敗と勝ち越しをキープ。“役力士の戦い方”を経験した25歳が、今場所もう一皮むける可能性も決して少なくはないだろう。

先場所10勝5敗をマークした遠藤は、番付が下の相手には負けなしと取りこぼしの少なさが際立っている。8場所ぶりに三役(小結)に返り咲いた今場所も同様にいければ、大関陣が万全でないだけに星を大きく伸ばすことも十分にあり得るかもしれない。

先場所11勝4敗の友風は、幕内経験は今場所を含めまだ4場所だが、実は序の口としてデビューした2017年名古屋場所から、先場所まで13場所連続で勝ち越し中。その勢いを上位陣との対戦が待ち受ける今場所でもキープできれば、夏場所の朝乃山に続く“大金星”も見えてくるかもしれない。

今年最後の両国開催となる今場所。全15日間を終えた後の表彰式では、果たして誰が賜杯を手にしているのだろうか。

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