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栃ノ心“四度目の正直”で大関復帰確定 朝乃山が初優勝

2019 5/25 18:00柴田雅人
優勝争いも佳境に入ってきた大相撲夏場所ⒸJ. Henning Buchholz/Shutterstock.com
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鶴竜下して10勝目

関脇・栃ノ心が節目の1勝を手にした。25日に行われた14日目の取組で横綱・鶴竜に立ち合いの変化で勝利し、2ケタ10勝に到達。これにより「関脇陥落直後の場所で10勝以上」とする特例を満たし、晴れて1場所での大関復帰が確定した。

先場所7勝8敗で負け越し、場所後に新大関に昇進した貴景勝と入れ替わるように大関の座を追われた。新大関となった昨年名古屋場所から、在位5場所でのスピード陥落。年6場所制以降では、1974年夏場所の大受と並ぶ史上ワーストタイ記録という歴史的な屈辱だった。

しかし、苦しみ続けたこの1年がまるで嘘のように、今場所10日目までは遠藤に敗れた以外は白星を重ねた。大関復帰に王手をかけてから3連敗したものの、年6場所制が定着した1958年以降史上5人目(6回)となる1場所での大関復帰を果たした。

これで10勝4敗。2敗の平幕・朝乃山が勝って初優勝を決めたため賜杯は逃したが、場所前は決して有力候補ではなかった力士が、堂々たる成績で優勝争いを続けたのはサプライズと言っていい。

1場所で復帰は過去4人

栃ノ心以前に1場所での大関復帰を果たしたのは、三重ノ海(1976年名古屋場所)、貴ノ浪(2000年初場所)、武双山(2000年秋場所)、栃東(2004年名古屋場所/2005年初場所)。この4人の当該場所の成績は以下の通りとなっている。

三重ノ海   ○○○●●○●○○○○○○●● 10勝5敗

貴ノ浪    ○○○○●○●○○●●●○○○ 10勝5敗

武双山    ○○○●○○●●●○○○○●○ 10勝5敗

栃東(1回目) ○○○○●○○○●○○●●○● 10勝5敗

栃東(2回目) ○○●○○○○●○●○●○○○ 11勝4敗

どの力士も、2ケタに到達したのは場所の終盤。三重ノ海が13日目、栃東は1回目、2回目共に14日目、そして貴ノ浪、武双山の2人は千秋楽での勝利でそれぞれ復帰を決めた。大関復帰が簡単でないことがよく分かる。

復帰力士としての最高成績は、栃東(2回目)が記録した11勝4敗。栃ノ心が千秋楽で勝てばタイ記録となる。ちなみに、栃東(2回目)の成績は白鵬(当時小結)と並び該当場所では優勝次点だったが、優勝した朝青龍(元横綱)は全勝だったので場所を通して優勝争いに絡んだ訳ではない。

初日からの連勝は貴ノ浪の4連勝、純粋な連勝は三重ノ海の6連勝がこれまでの最多だったが、中日の敗戦までに7連勝をマークした栃ノ心がいずれも記録更新。これらの事柄を考えると、今場所の栃ノ心は史上最強の陥落力士といっても差し支えなさそうだ。

復帰力士のその後は?

過去の4人が大関復帰した経緯は以上の通りだが、復帰後どのような成績を残したのかも気になるところ。そこで各力士のその後についても合わせて紹介したい。

三重ノ海   大関在位18場所 1979年秋場所で新横綱

貴ノ浪    大関在位2場所  復帰後連続負け越しで再陥落

武双山    大関在位25場所 大関のまま2004年九州場所で引退

栃東(1回目) 大関在位2場所  復帰後連続負け越しで再陥落

栃東(2回目) 大関在位13場所 2006年初場所で優勝

大関復帰に成功したとしても、その後成績を残し続けられるかはまた別の話。以上を見ても分かる通り、各力士の復帰後は明暗がくっきり分かれる形となっている。

「明」となったのは三重ノ海、武双山、栃東(2回目)。三重ノ海は直前2場所で13勝(優勝次点)、14勝(優勝同点)をマークしたことが評価され、場所後に第57代横綱に昇進した。

栃東は千秋楽朝青龍戦の勝利で14勝1敗とし、13勝2敗の白鵬(当時関脇)をかわして3度目の優勝。武双山は優勝や昇進こそなかったものの、約4年に渡り大関の座を守り抜いた。

一方、「暗」となったのは貴ノ浪、栃東(1回目)。この両者はせっかくの復帰も空しく、連続負け越しで再陥落。なお、再陥落直後の場所における成績は貴ノ浪が7勝8敗で負け越し。一方、栃東は前述した通り11勝4敗で史上唯一となる2度目の特例復帰を果たしており、こちらでも明暗が分かれている。

大関へと舞い戻った栃ノ心は、この後どのような道のりを辿るのか。来場所以降も要注目だ。