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東京五輪7人制ラグビーのホープら躍動 アシックス杯、流経大柏が初優勝

2018 7/27 15:00藤井一
ラグビー,ⒸShutterstock.com
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高原の菅平でも異常な暑さの中、熱戦は繰り広げられた

アシックスカップ2018 第5回全国高校7人制ラグビーフットボール大会が7月21~23日、長野県の菅平で開催された。47都道府県の各地区大会を勝ち上がった1校ずつを代表校とし、さらに前回優勝校を加えた全48代表による7人制の高校日本一決定戦である。(第1回大会は地元長野が2代表)

開催地は第1回、第2回が菅平、第3回、第4回は場所を東京に移していたが、今年は東京の高温も考慮されて3年ぶりに菅平に戻った。高原の菅平は確かに東京よりは涼しかったが、今年は全国的に異常な暑さである。気温は連日35度近かった。

東福岡3連覇ならず、流経大柏が悲願達成 国学院栃木も好チーム

本命と目された大会3連覇を目指す東福岡(福岡)は、カップトーナメントの2回戦で桐蔭学園(神奈川)に19-38で敗れた。その桐蔭学園を準決勝で26-21と破った流経大柏(千葉)が、決勝では東海大大阪仰星(大阪)(東海大仰星から今春校名変更)を17-5で破って全国大会初優勝を飾った。ちなみに、桐蔭学園は15人制で争われる今年春の選抜の王者であり、昨年度の花園を制したのは東海大大阪仰星だ。

流経大柏は、近年急速に力をつけている。3年前に、現役時代トップリーグのリコーで活躍した相亮太が監督に就任後、さらに戦力が充実してきてはいたが、15人制の全国大会では優勝を争うというところまでは中々いかなかった。この大会には昨年、ほとんど1、2年生だけで臨み、カップトーナメントに進出。そのメンバーが着実に成長し、1年後に実を結んだ形だ。

プログラムには、出場全48チームがチームのアピールコメントを載せているのだが、文末で明確に「日本一を目指します」と記しているのは流経大柏だけ。それだけ相監督も選手もこの大会にかける強い思いと手ごたえがあったのだろう。大会MVPに選ばれた主将の永山大地も「大会前1か月間、しっかり準備してきた」と語っているように、個々の判断力、スキルには見るべきものがあり、準決勝も決勝も勝負どころで相手を突き放すトライを奪って快勝した。

初の3位になった国学院栃木(栃木)は、昨年の流経大柏のように1、2年生が主体。アタックセンスに優れた好素材が目立つチームだった。特にゲームキャプテンを務めた2年生伊藤耕太郎はすべてに非凡。ラグビーファンなら名前を憶えておいたほうがいいだろう。

県立普通校の城東も健闘

この大会は48校を3校ずつ16のプールに分けて予選リーグを行い、1位から3位を決める。その後、順位別に16校ずつ3つのトーナメントにわかれ、それぞれカップ、プレート、ボウルを争い、優勝を決める方式だ。つまり1位グループであるカップトーナメントの優勝が大会の優勝校でもあるのだが、プレート(2位)、ボウル(3位)にも頂点を目指す戦いがあり、高校生にとってこの3日間で得られるものはとても大きい。

そして7人制ならではといってもいいアップセットも毎年のように見られる。今年はその象徴的な高校が城東(徳島)であった。予選プールでは愛知の名門・西陵を破るも、国学院栃木には敗れて2位。プレートトーナメントでは決勝まで勝ち進み、石見智翠館(島根)と死闘の末19-19の同点、優勝を分け合ったのだ。石見智翠館は、7人制には力を入れており、特に女子は常に全国トップレベル。無論、男子も全国から選手が集まってくる私立の強豪である。一方、城東は部員数が全部で20人を少し超えた程度の県立普通校。全員がよく走り、よくタックルしていた。

7人制の強化は急務

2016年のリオデジャネイロ大会からオリンピックで採用された7人制ラグビーの普及と育成が目標で始まったこの大会。近年叫ばれている高校ラグビー部の部員不足は深刻な問題だが、15人制なら無理でも7人制なら出場できるメリットがこの大会にはある。そして城東のように『やればできる』ことを証明してくれる高校が出現するのも、この大会の大きな魅力である。

思えばリオデジャネイロオリンピックでニュージーランドを破るという番狂わせを演じ4位に入賞したのは、我らが日本代表だ。だが、それから2年。今大会と時を同じくしてアメリカで行われたワールドカップセブンズで、日本代表は24チーム中15位に終わってしまった。『やればできる』ことをリオで見せてくれたはずだったが、まだまだ常に上位進出できるほどの実力は兼ね備えていない。

若いセブンズの好素材は今年も生まれていることが今大会で証明された。彼らが7人制で将来大きくはばたくためにも、強化をより充実させなければいけない。東京オリンピックまであと2年しかないのだ。