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箱根駅伝出場校の決め方は?予選会は10人の合計タイム

2019 11/12 17:00鰐淵恭市
箱根にある駅伝走者の像Ⓒcdrw/Shutterstock.com
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Ⓒcdrw/Shutterstock.com

シード10校、予選会から10校

東京箱根間往復大学駅伝競走、いわゆる「箱根駅伝」は、来年1月2、3日に開催される。令和最初となる96回大会はシード権を持つ大学と予選会を突破した大学の計20校と、関東学連選抜が出場する。

毎年人気が高まる箱根だが、どうやったらシードを獲得でき、どうしたら予選会を突破できるのだろうか。その仕組みを簡単に説明する。

予選会を突破して優勝したのは2校のみ

まず、出場校数。第1回は4校でスタートした箱根だが、段階を踏みながら出場校は増え、現在では20校(関東学連選抜は除く)が出場する。ただ、5回ごとにある記念大会では出場校が増える。90回では23校、95回では22校が出場している。

20校のうち、シード校は10校になる。シード権を獲得するには、前年の箱根で総合10位以内に入る事が条件になる。シード校は予選会に出場しなくていいため調整の面で有利。過去、予選会を突破して箱根で優勝したのは73回の神奈川大、89回の日体大の2校しかなく、いかに予選会から優勝するのが難しいのかを歴史は教えてくれる。

今回のシード校は東海大、青山学院大、東洋大、駒沢大、帝京大、法政大、国学院大、順天堂大、拓殖大、中央学院大の10校になる。それ以外の学校は、予選会から本戦を狙うことになる。

予選会はハーフマラソン、麗澤大は26秒差で涙

今季は10月26日に予選会が行われた。駅伝の予選会ではあるが、たすきをつなぐ駅伝のスタイルはとらない。各校10~12人が出場し、一斉にスタートをする。順位は各校の上位10人の合計タイムで決まる。もし、同タイムで並んだ学校があれば、上位10人の合計順位が少ない方が上位となる。それでも並んだ場合は、各校の最上位者が上の学校が上位となる。

選手が走る距離はハーフマラソン(21・0975キロ)。実際の箱根の区間に近い距離だ。以前の予選会では10マイル(約16キロ)や20キロを走っていたこともある。

今回の予選会の結果は以下の通りである。

①東京国際大 10時間47分29秒
②神奈川大  10時間50分55秒
③日体大   10時間51分9秒
④明治大   10時間51分42秒
⑤創価大   10時間51分43秒
⑥筑波大   10時間53分18秒
⑦日大    10時間54分29秒
⑧国士舘大  10時間55分21秒
⑨早稲田大  10時間55分26秒
⑩中央大   10時間56分46秒
~ここまでが予選会を突破~
⑪麗澤大   10時間57分12秒

近年、躍進著しい東京国際大が頭一つ抜ける形で予選会を突破した。また、第1回優勝の筑波大(当時は東京高等師範)が26年ぶりに出場を決めた。

苦しんだのは名門2校。過去最多の14度の優勝を誇る中央大はぎりぎりとなる10位での通過。13度優勝の早大も9位通過と、波に乗れなかった。

それでも、予選会を突破できれば本戦で挽回のチャンスはある。ぎりぎりで敗退した学校にはその機会もない。11位の麗澤大は、初の本戦出場まで26秒足りなかった。麗澤大は2年連続で順位が一つ及ばず、予選敗退となった。中央大の選手が安堵の涙を流す一方、麗澤大の選手は悔し涙にくれていた。その対比が、印象的な今回の予選会だった。

2020年は東海大の「1強」、止めるなら青学大か

今回の箱根は、どこが優勝するのだろう。今季の学生駅伝は、近年「3強」と呼ばれることが多かった東海大、青山学院大、東洋大に加え、駒沢大、国学院大を加えた「5強」の戦いになるのではないかと言われてきた。その予想通り、10月14日に行われた出雲では国学院大が初優勝、11月3日の全日本では東海大が16年ぶり2度目の優勝を果たした。ただ、全日本を終えて見えてきたのは、箱根で連覇を狙う東海大の「1強」である。

学生3大駅伝は、それぞれタイプが違うコースになる。出雲は6区間45・1キロで競うスピード重視の大会である。全日本は8区間106・8キロ。最短9・5キロ、最長19・7キロでバランスのとれたチームが勝つ。箱根は10区間217・1キロで、スタミナと選手層の厚さが要求される。

東海大は4年生が「黄金世代」を形成する。館沢亨次、阪口竜平、鬼塚翔太、関颯人の4人だ。彼らがこのチームの要だが、箱根の前哨戦となる全日本ではこの4人が全員出場しなかった。それでも優勝したのである。そして、全日本で力を発揮したのは塩沢稀夕、西田壮志、名取燎太といった、黄金世代の影に隠れていた3年生たちだった。

学生3大駅伝デビューとなった名取はアンカーを走り、青山学院大を逆転してMVPに輝いた。西田も4区で区間賞を獲得。箱根ではここに黄金世代の4人が加わる。選手層の厚みが他校より頭一つ抜けていると言える。

とは言え、近年の学生駅伝をリードしてきた青山学院大も黙ってはいない。全日本の7区でチームを一時トップに押し上げた吉田圭太ら、力のある選手がそろう。とにかく、箱根に必要なスタミナのある選手を育てることに原晋監督は長けており、東海大を脅かす一番手には青山学院大がくる。

今季の日本人の学生ナンバーワンの相沢晃を擁する東洋大は、箱根の往路で優勝した昨季のように、前半でどこまで逃げられるかにかかっている。予選会突破組では東京国際大が面白い。初出場となった全日本では4位に入った。昨季の箱根は15位だったが、大躍進を遂げる可能性もある。

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