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FIFAが推進するクロスボーダーリーグとは

2020 1/14 17:00Takuya Nagata
FIFAのインファンティーノ会長Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

クラブは、統括団体の承認が得られれば転籍可能

国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長が前向きな発言をしているクロスボーダーリーグ。その名の通り国家間のボーダー(国境)をまたいだクラブ参加を認めるリーグのことで、実は、これまでも例外的に国境をまたいでのリーグへの参加は認められている。

所属する協会と転籍先の協会の同意があり、FIFAやUEFAといった、協会の上位に位置する統括団体から承認されれば、異なる国の協会に転籍することが出来るのだ。

英国のケース、プレミアもクロスボーダーリーグだった

イングランド・プレミアリーグにも、実はイングランド外から参加しているクラブがあった。ウェールズのカーディフ・シティとスウォンジー・シティだ。現在は、降格しているが、依然としてイングランドのリーグシステムに所属している。

さらに、スコットランドのビッグクラブ、グラスゴー・レンジャーズとセルティックFCがイングランドに転籍するという話も頻繁に取り沙汰されている。この他にも、イングランド近隣では、ブレグジットで国境問題の議論が加熱している北アイルランドとアイルランド共和国のクラブが、オールアイランド(全島)リーグの可能性について検討中だ。

ちなみにラグビーでは、アイルランド全島合同で大会に参加し、アイルランド代表は、既に連合チームを形成している。また、アイルランド、ウェールズ、スコットランドが、ケルティックリーグを形成し、後にイタリアや南アのチームも加えて、プロ14という広域に及ぶクロスボーダーリーグが創設された。

過去には欧州5大リーグと同等の規模のリーグ案も

ラグビーの事例に似た構想がサッカーにも見受けられる。以前から存在する案だがオランダ、ベルギー、ルクセンブルクのベネルクスリーグというものがある。ベルギーの北半分を占めるフランデレン地域は、オランダ語と同じ低地フランク語に属するフラマン語を話す地域で、言語的にも地理的にもオランダとは非常に近い。

オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの人口を合わせると約3,000万人。有力選手を多く輩出する地域だけに、域内に統一リーグが誕生し発展すれば、地元選手が国内に留まる可能性も高まり、さらに盛り上がるだろう。

過去には、オランダ、ベルギー、ポルトガル、スコットランド、スカンジナビア諸国のクラブによるアトランティックリーグ創設が画策されたが、UEFAはその動きを阻止した。実現していれば、5大リーグと肩を並べるくらいの人口圏に新リーグが形成される可能性があった。これらの国のクラブは幾度となく話し合いを行っており、この案が再燃することも十分にありえる。

ロシア周辺の動き

ロシアにも旧ソビエト連邦圏の国々と、旧ソ連リーグの復刻版であるCIS選手権なるものを発足させる動きがあったが、FIFAに反対され実現しなかった。賛同国にはウクライナ、ベラルーシ、アルメニアなどがあった。

その後、ウクライナ紛争が起こると、ロシアが実効支配するクリミア半島のクラブの転籍申請をロシアサッカー連合は受け付けたが、国際的にクリミア半島のロシアへの編入は承認されていないとして、UEFAは認めなかった。その結果として、クリミア半島はウクライナともロシアともいえず、空白地帯と化しており、国際大会への出場ができない状況になった。

中央・東欧諸国の連携、米国MLSにはカナダのクラブが参戦

他にも、チェコ・スロバキアリーグ、バルカン半島リーグ、中欧・東欧のハプスブルクリーグ、エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト三国リーグといった提案もなされている。

アメリカ大陸では、米国のメジャーリーグサッカー(MLS)にカナダの3クラブ(トロントFC、バンクーバー・ホワイトキャップス、モントリオール・インパクト)が参加していることが知られている。

今後は大々的なリーグ合併も

数ある事例を見ると、ケース・バイ・ケースのようだが、複数国によるリーグ開催が承認されてきたのは、部分的な越境が大半だ。統括団体の承認が取り付けられなかったためだが、今後は、FIFAが旗振り役となって、より大規模なクロスボーダーリーグが次々に形成される可能性が出てきた。