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サッカークラブ経営を助ける欧州CL新方式で懸念されるケガのリスク増大

2021 5/23 06:00中原康太
リオネル・メッシⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

負債合計は約1兆円、コロナ禍で直面した欧州クラブの財政危機

レアル・マドリードのペレス会長が中心となり、4月18日に発表された欧州スーパーリーグ(ESL)構想は、まもなく激しい批判にさらされ撤回を余儀なくされた。翌19日、欧州サッカー連盟(UEFA)は2024-25シーズンからチャンピオンズリーグ(CL)新方式を実施すると発表した。

コロナ禍の影響でテレビ放映権収入・スポンサー収入・スタジアム関連(入場料・物販)収入など各クラブは軒並み大幅減となり、財務面で大打撃を受けた。CL新方式の導入は、試合数を増やすことでこれら減収分の補てんに充てる狙いだ。

しかし早くも欧州リーグの監督や選手からは「どこにそのスケジュールがあるのか」などと批判が相次いでいる。

これを受けUEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長は「CLの改革案は財政危機にあるクラブへのサポートを目的に生まれた。試合数を減らすことなど修正はできるが選手の給料も減ることになる。今のままではクラブが廃業してしまう。新構想はすべての人にメリットがある。どんな変更も可能だ」と批判に対し、柔軟な対応をする見解を述べている。

CL新方式は試合数が100試合増加、出場枠も32から36へ拡大

現行のCLとの違いは以下の通り。

チャンピオンズリーグのフォーマット


32チームから36チームへ増加する4枠については次のように報じられている。

1.UEFA係数5位のリーグに対して追加1枠
2.前回優勝したチームのリーグへ1枠
3.UEFA係数の高いチーム(ヨーロッパリーグ、ヨーロッパカンファレンスリーグを含め過去5年間で実績があるチーム)へ2枠

1については現在のUEFA係数ではリーグ・アンのあるフランス。2と3もUEFA係数や過去実績から興行収入が得られるような人気クラブが選ばれるよう考えられている。

リーグ数については、現行の8つから1つのリーグステージで行われる。リーグステージは36チームをUEFA係数をもとに9チームずつ4つのグループに分け、ホーム&アウェーで5試合ずつ合計10試合する。決勝トーナメントに進めるのは16チームと変更はないが、新方式は上位8チームが決勝トーナメントに進出し、9位から24位までの16チームによるプレーオフで8枠を争う点が現行と異なる。

新方式により試合数が125試合(グループステージ96試合、決勝トーナメント29試合)から225試合(リーグステージ180試合、プレーオフ16試合、決勝トーナメント29試合)と100試合増える。

週末は国内リーグ、週の半ばはCLという現行でもタイトなスケジュール。さらに試合数が増えることは怪我のリスクも高まることを意味する。将来のサッカー界を背負う選手たちへのこれまで以上の配慮が各クラブに要求される。

UEFAチェフェリン会長に求められる新たなCLの形

選手や監督への高額年俸や放漫経営が問題視されている欧州クラブは、今回のパンデミックにより一層赤字が膨らみ予想を超える負債額が明らかになった。CL新方式は、世界最高峰の欧州リーグを維持し繁栄させていくための苦渋の決断だったと推察できる。

欧州リーグへ注目を集め、ブランディングやサッカー界の頂点を引き上げていくという発想はサッカーファンにとっても非常に嬉しいことである。しかし、もっと試合を増やしてほしいというクラブオーナーやファンのエゴは、選手たちにとっては怪我の原因にもなってしまう。

夢の舞台を維持できる打開案が出ることを願いたい。

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