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サッカー日本代表、コパ・アメリカ参戦から考える遠征の必要性

2019 3/31 15:00橘ナオヤ
サッカーボールⒸShutterstock.com
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二度目のコパ・アメリカ参戦

サッカー日本代表は、6月に開催されるコパ・アメリカ2019ブラジル大会に招待国として出場する。3月の親善試合は南米勢との2試合で、まさに前哨戦となった。

コパ・アメリカとは、南米サッカー協会(CONMEBOL)が主催するナショナルチームによる大陸選手権だ。他大陸でいえば、アジアではアジアカップ、ヨーロッパでは欧州選手権(EURO)に相当する。中でもコパ・アメリカは、1916年に第1回が開催された大陸選手権として最古の歴史を持つ大会なのだ。

特筆すべきは、南米の強豪国がしのぎを削って大陸王者を目指すというレベルの高さ。南米サッカー協会には、ブラジルやアルゼンチンを筆頭に10カ国が加盟している。他はウルグアイ、パラグアイ、チリ、ペルー、ボリビア、コロンビア、ベネズエラ、エクアドルだ。さらに2カ国が招待され、コパ・アメリカでは全12チームが戦う。

招待国としては南米の近隣国、メキシコやアメリカ合衆国、コスタリカの参加回数が多い。だが今回は日本とカタールが招待され、日本は二度目の参加となる。アジアカップ決勝では、カタールが日本を下し初のアジア王者となっている。

アジアのトップ2が参加する今回のコパ・アメリカ。招待当初は思いもよらない構図になったが、南米相手にアジアサッカーのレベルを試すこととなる。

国内マッチでは“相手の本気度が違う”という課題

同大会への参加は、日本にとって大きな意味がある。公式大会で最低でも3試合、アウェー環境で本気の南米勢と試合ができるからだ。このように、他大陸の公式大会に参加できるのは異例の機会。

W杯以外では、親善試合でしかアジア以外の国と対戦する機会がない日本代表。その親善試合の多くは、インフラが整っていること、そして興行収入の観点から国内で行っている。だがその場合、チーム強化の点で限界がある。

他大陸のチームから見て、日本はアジアの強豪国である。2月7日時点のFIFAランキングでは27位で、アジアカップ優勝やロシアW杯の決勝トーナメント進出などの実績もある。世界的にも中堅以上のチームであり、悪くない対戦相手といえる。

だが、ここで問題となるのが、他大陸からあまりにも遠いという日本の立地である。欧州、南米、アフリカから移動する場合、短く見ても片道8時間はかかる。これほどの長距離移動は選手のフィジカルに大きな負担をかけるため、トップクラブに所属する選手を招集しないことも多い。長友佑都も、欧州で行うリーグ戦と日本で行う親善試合では、選手の本気度が異なることを問題視していた。

日本で開催した2016年の親善試合に参加したボスニア・ヘルツェゴビナは、エースのエディン・ジェコを外し若手主体のメンバーにした。またブルガリアやアフリカ勢も、若手主体の構成でやってきた。3月に来日したコロンビアとボリビアについては、コパ・アメリカのテストマッチとして主力を招集したが、フレンドリーマッチで極東に出向くのはリスクが大きかったはず。

日本が実力面で問題ない相手であっても、長距離移動するぐらいなら東欧や中米の中堅国と試合する方が低リスクなのだ。

“遠征”の必要性

アジアのレベルが上がってきていることは、先のアジアカップで証明された。日本代表がステップアップしていくために、他大陸の強豪との強化試合を増やしたい。それには遠征が理想的。

日本はW杯をにらんで2017年、18年に欧州遠征を敢行した。そこでは主力を揃えたウクライナやベルギー、そして同じく欧州遠征をしていたブラジルとの対戦が実現している。実際に、欧州勢との試合を軸に置いて対戦相手にアジア勢を探していたとされるブラジルは、日本との試合の5日後にイングランドと試合をしている。日本は、この遠征でブラジルに力の差を見せつけられ、ベルギー戦である程度の手ごたえをつかんだ。

しかし、欧州勢はEURO予選とW杯予選でAマッチデーの多くが埋まっている。さらに2018年からUEFAネーションズ・リーグが始まったことで、より「内向き」になる懸念が強まっており、それが現実になれば欧州遠征ができる機会は限られるだろう。

少なくとも欧州にこちらから出向かなければ、ますます強豪と戦える機会は減っていく。こうした問題がある中で、今回のようなコパ・アメリカへの招待は日本にとって願ってもないこと。アウェーの南米大陸で本気の相手と対戦できる大会は、強化にはうってつけの環境だ。

コパ・アメリカは4年に一度の大会で、次回も招待されるとは限らない。今回の参加を機に、本気度が高い相手と戦うことの重要性を再確認し遠征増加の機運が高まれば、一層の強化につながるだろう。

日本はグループステージでグループCに入っており、6月18日にチリ、21日にウルグアイ、そして25日にエクアドルと対戦する。