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福岡堅樹が挑む東京五輪7人制ラグビーで日本がメダルを獲得する可能性

2020 1/26 11:00田村崇仁
福岡堅樹Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

W杯効果で東京五輪のチケットは人気沸騰

ラグビーのワールドカップ(W杯)で日本列島を熱狂に包み込んだ日本代表の快足WTB福岡堅樹(パナソニック)が「セブンズ」の愛称で親しまれる7人制ラグビーに挑戦する意向を正式に表明し、関心が高まっている。

東京五輪のチケットは「W杯効果」で他競技と比べても7人制ラグビーの人気が沸騰。15人制ラグビーとのルールや醍醐味の違いはどこにあるのか―。将来は医師を目指すスピードスター、福岡は15人制トップリーグの出場を当面見送り、7人制代表候補の活動に練習生として合流して東京五輪出場を目指す。

FW3人、バックス4人のチーム構成

最も明確な違いは人数で、7人制はFW3人、バックス4人で構成される。スクラムは3人同士で組むのが基本だ。グラウンドは15人制と同じ広さを使用し、ルールもほぼ同じ。スペースが広い分、FW陣も含めた全ての選手にダッシュを繰り返す走力の高さが求められる。

1対1の勝負となる局面も多く、切れ味鋭いステップやボールが大きく動くスピード感が最大の魅力だろう。モールやラックといった密集プレーは少なく、ボールをパスやキックでつなぐプレーが多いのも特徴だ。

7分ハーフで1試合5回まで交代OK

試合時間は7分ハーフで1試合につき1チーム5回まで交代ができる。大会は1日に複数試合をこなすのが基本。「トライ」が5点、トライ後にゴールポスト間に蹴り入れる「コンバージョンゴール」が2点、ゴールポスト間にボールをワンバンドさせて蹴り入れる「ドロップゴール」は3点、相手の反則時に与えられる「ペナルティーキック」のゴールが3点。

男女とも初採用された2016年リオデジャネイロ五輪では3位決定戦と決勝は10分ハーフだった。

1800年代に英スコットランドで資金難から発案

ラグビーの起源は1823年にイングランドのパブリックスクール、ラグビー校の生徒だったウィリアム・ウェブ・エリス少年がサッカーのルールを破り、ボールを抱えて走ったのが競技の始まりとされるのは有名な話だが、真偽のほどは定かでない。

ワールドラグビー(WR)によると、7人制の歴史は1883年にさかのぼり、英スコットランド南部で誕生。創立以来、財政難に悩まされてきた「メルローズ・クラブ」を救おうと地元の肉屋に勤めていたネッド・ベイグとデビッド・サンダーソンの2人が資金調達のため15人制でなく、15分ハーフの7人制を考案したのが始まりだった。

地元で人気が広がり、1976年に開催された初の香港セブンズ大会を起点に、国際大会の普及が急速に広がった。7人制ラグビーで世界一を決める大会は、発祥地から由来した「メルローズカップ」が今でも優勝杯となっている。

リオ五輪初代王者はフィジー、日本は4位

五輪ラグビーの歴史を振り返ると、1900年の第2回パリ大会、1908年ロンドン大会、1920年アントワープ大会、1924年パリ大会で15人制が実施され、その後長いブランクを経て2016年リオデジャネイロ大会で7人制ラグビーとして復活した。女子はリオ大会が初めての歴史的な実施だった。

リオ五輪の初代王者はラグビー王国ニュージーランドではなく、南太平洋の小国フィジー。ダイナミックな走りと型にはまらず自由につなぐパスは「フィジアン・マジック」と称され、決勝で英国に43―7で圧勝した。

南太平洋に浮かぶ300以上の島からなる人口約90万人のフィジーは15人制よりも7人制が親しまれ「国技」ともいえる絶大な人気を誇る。初参加の1956年メルボルン五輪から60年で同国初の輝くメダルともなった。3位は南アフリカ、4位は日本、5位はニュージーランドだった。

リオ五輪7人制ラグビー成績


リオ五輪で日本は初戦で強豪ニュージーランドを破る大金星で勢いに乗り、メダルが手に届くところまで迫ったが、準決勝でフィジー、3位決定戦で南アフリカに敗れた。

女子はオーストラリア、ニュージーランド、カナダがそれぞれ金、銀、銅メダルを獲得した。

王国NZの復活はあるか?ケニアや米国も選手強化

半年後に開幕する東京五輪は海外の勢力図も変化してくるだろう。男子はラグビー王国ニュージーランドが復活してくるのか、7人制では圧倒的な強さを持つフィジーが2連覇を達成するのか。

陸上界やアメフトからスプリンターを転向させて強化を進める米国や身体能力の高いケニアも7人制では強化を進めており、サモアやアルゼンチンも侮れない存在だ。

日本は福岡のほか、W杯8強メンバーのWTBレメキ・ロマノラバ(ホンダ)、FB松島幸太朗(サントリー)らが入ってくれば選手層がさらに厚くなる。WTBとしてW杯日本大会で計4トライを挙げ、初の8強入りに貢献した福岡のスピードとステップワークはまさに世界トップレベル。セブンズでも日本を再び盛り上げてくれるか期待が高まる。