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車いすラグビーのルールは?前方へのパスも男女混合もOK

2019 11/24 11:00田村崇仁
日本のエース池崎大輔(中)Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

東京パラリンピックは「イケイケ」コンビの日本が金候補

「ガツン!」「ドン!」。車いすをタックルでぶつけ合う激しさから「マーダーボール(殺人球技)」とも呼ばれる人気急上昇中の車いすラグビーをご存じだろうか。1970年代にカナダで考案され、2000年シドニー大会から正式競技となった。パラリンピック競技で唯一、車いす同士の接触が認められ、時には車いすが転倒したり、タイヤがパンクしてしまったりすることも珍しくない。

ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会は「ワンチーム」を掲げた日本代表が史上初のベスト8進出で日本列島を熱狂させたが、2016年リオデジャネイロ大会で銅メダルに輝いた車いすラグビーの日本代表もエース池崎大輔(三菱商事)、主将の池透暢(日興アセットマネジメント)の「イケイケ・コンビ」を中心に東京パラリンピックの金メダル候補だ。

昨年8月の世界選手権で日本は2016年リオ大会金メダルのオーストラリアを62―61で破り、初優勝した。車いすラグビーで日本が世界の頂点に立つのはパラ、世界選手権を通じて初めての快挙だった。

1ピリオド8分×4、楕円球でなく4人対4人

基本ルールから紹介しよう。ボールは楕円球でなくバレーボールに似た専用球を使い、1チーム最大12人編成の4人対4人で争う。チーム内で男女の区別なく混合でプレーできるのもユニークな点だ。

1ピリオド8分間で、4ピリオドの総得点で勝負。同点の場合は3分間の延長戦がある。ボールはパスやドリブル、膝の上に置くなどして運ぶ。

ルールⒸSPAIA

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コートの広さはバスケットボールと同じ。反則すると、ボールの所有権が相手に移る。また攻撃側が40秒以内にゴールしないと相手にボールの所有権が移る「40秒ルール」、ボールを持ってから12秒以内にセンターラインを越えなければならない「12秒ルール」があり、スピーディーさと駆け引きが醍醐味だ。

ボール持ってゴールラインを越えると1点

四肢に障がいのある選手を対象として障害の程度に応じて選手には0.5~3.5(小さいほど重度)の「持ち点」があり、出場する4人の合計は8点以内でチームを編成する必要がある。それぞれの持ち点で攻守の役割分担が明確なため、綿密なチーム戦術が大きな見どころ。選手交代は自由だ。

本家の15人制ラグビーと違って前方へもパスができ、ボールを持ってゴールポスト間のゴールラインを越えると1点の得点が認められるのが攻防の基本パターンとなる。

日本の最大の特徴は、障害の程度が比較的軽い「ハイポインター」として、得点源の池崎、池の「イケイケ・コンビ」を擁していることだろう。

障害が比較的重く持ち点の少ない「ローポインター」の選手が防御的な役割を担うスタイルで多彩な戦術を生んでいる。ハイポインターがチェアワークと呼ばれる華麗な車いす操作で得点を重ねる裏で、ローポインターの献身的な動きが光るチーム競技だ。

キーマンは唯一の女子選手、倉橋香衣。女子選手を起用すると、チームの持ち点は合計点の上限に0.5点の加算が認められ、大きな鍵を握る。もし、女子選手が2人含まれれば、チームの持ち点合計は9.0点で編成できる仕組みだ。

通称「ラグ車」と呼ばれる競技用車いすは激しいぶつかり合いに対応して基本的な頑丈なタイプ。小回りが利く攻撃型と足元にブロック用バンパーが付いた守備型によって車いすの仕様が異なるが、どちらも機敏に動けるようにタイヤはハの字型でスポークカバーが側面に装着されている。

日本は世界ランク3位

最新の世界ランキングで日本は3位。1位は五輪2連覇中のオーストラリア、2位は米国で、4位英国、5位は発祥国カナダと続いている。

世界ランキングⒸSPAIA

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10月に東京で開かれた国際大会のワールドチャレンジで日本は英国との3位決定戦に54―49で勝ち、3位だった。決勝は米国がオーストラリアを59―51で破って優勝した。

日本代表の監督は米国人のケビン・オアー氏。過去に米国、カナダの代表監督を歴任して実績を上げてきた名将だ。ベテランの池や池崎に頼っていたチームの選手層を厚くし、日本を世界選手権初制覇に導いた。悲願の頂点へ着実に鍛練を重ねている。