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サンウルブズ、来季でSラグビーから除外 ラグビー日本代表の強化につながったのか

2019 4/14 15:00藤井一
サンウルブズ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

サンウルブズ除外は突然のようで実は必然

3月21日、サンウルブズが2020年を最後にスーパーラグビーから除外されることが決まったと日本協会から発表された。

大変残念だが、サンウルブズは昨季までの3年間で通算6勝しかしていない弱小チームである。スーパーラグビーを統括するSANZAAR(南アフリカのSA、ニュージーランドのNZ、オーストラリアのA、アルゼンチンのAR)の各チームにとっては、サンウルブズと対戦するため、わざわざ日本やシンガポールに遠征するなどもう御免と考えても不思議ではない。

除外が決まったと報道された時、日本の各メディアはかなり騒ぎ立てたが、そもそもサンウルブズは5年契約で参加が認められたチーム。「5年経過したから除外」という措置がとられたというだけのことだ。

さらに付け加えるなら、サンウルブズ2季目のシーズン終了後、スーパーラグビーは参加チーム数を18から15に削減している。そのとき削減の対象となったのは南アフリカ2チーム、オーストラリア1チームである。5年契約であっても初年度が1勝で最下位、2季目は2勝で17位のサンウルブズが除外3チームの中に入っていないことに首を傾げたスーパーラグビー関係者は少なくなかった。

そして15チームになった昨年の3季目も3勝したものの最下位。徐々に強くなってきたと感じている方もいるかと思うが、客観的に見たら、やはりサンウルブズはスーパーラグビーで最も弱いチームなのである。

サンウルブズは日本代表強化のためのチーム

ところで、今季が参戦4季目ではあるがSPAIA読者の皆さんでもサンウルブズとは?という人がいるだろうと思う。これは、2019年のワールドカップ日本開催に向け、日本代表を強化する狙いで、日本もスーパーラグビーに参戦できないかと働きかけ、2016年に創設・参戦したチームなのだ。

スーパーラグビーは南半球各国の複数のプロチームでのリーグ戦なので、参加するチームは当然プロチームという扱いになる。そのため国代表のチームである日本代表と兼務することができるのだ。集まったのは日本代表選手に加え、トップリーグでプレーする選手たち。「日出ずる国のオオカミたち」ということでサンウルブズと名付けられたのである。

では、ここで4季目の今季も含め、今までのサンウルブズのメンバー構成を振り返ってみよう。①はサンウルブズのスコッドの人数、②は日本生まれ日本育ちの人数である。

2016年 ①42人②29人
2017年 ①56人②41人
2018年 ①53人②25人
2019年 ①60人②20人

おわかりのように、一旦は日本人選手の比率が高まったものの、3季目、4季目と急激に外国出身選手の比率が高まっている。「日本代表になりうる外国人を起用すること※」は代表強化には違いないので必ずしも悪いことではないが、もっと日本に生まれ育った選手に経験を積ませ強化するチームであってほしいと願うのは私だけであろうか。日本人比率の高かった2017年が2016年を、わずかであるが、上回っていることを考えれば継続という観点からも意味があったはずだ。

※3年居住すれば国籍関係なく、その国の代表になれる。2020年からは5年に変更

今季ここまで消化した8戦(4月8日現在)で先発メンバー15人中、日本に生まれ育った選手数は最多で4人。秩父宮で行われた5戦目のレッズ戦など2人に過ぎない。しかも、それで成績は2勝6敗。劇的に勝率が上がったわけでもない。これでは「外国籍選手ばかりなのになぜ日本のチームとして出場させているのだ」という疑問さえも湧く。本当に代表強化につながると言えるのだろうか?

ラグビーはグローバルな発想を持ったスポーツ

念のためお断りしておくが、私が言いたいのは外国籍選手を代表にするなということではなく、戦績が上がったわけでもないのに日本国籍を有しない選手ばかりで構成することに意味があったのかということだ。

ラグビー代表資格には出身国ではなく選手の帰属意識を優先する、懐の深い制度がある反面、一度代表選手になれば他の国の代表にはなれなくなるという決まりもある。母国よりも日本代表として戦うことを選んでくれた外国籍選手には敬意を表したい。

また、世界、それもトップを争うような強豪国でも、日本同様に、国籍を有しない代表選手は決して少なくはない。ワールドカップ2連覇中のニュージーランドも、決して「ニュージーランド人」だけの力で世界一になっているわけではない。そして、これはニュージーランドのみならずほとんどの国がそうである。

しかし、当然ながらどの国でも外国籍で代表として選ばれる選手は、自国の選手よりも優れたパフォーマンスを発揮しているからこそ選出されているという事実がある。

サンウルブズのスーパーラグビー除外は戦績を考えればやむをえない。だが、繰り返すがサンウルブズは日本代表強化のために存在する。今まで悲惨な勝率しか残せていないが、それが礎となって日本代表が9月20日に開幕するワールドカップ日本大会で結果を残せたのなら、それで十分役割は果たしたことになる。

日本代表のワールドカップベスト8入りに向け、今季の残る8戦、回り道はもう許されない。

最後に、ワールドカップがアジアで初めて開催される今年、これまでラグビーに親しむ機会がなかった観戦初心者の方々には、ぜひこの機会にラグビーとは国籍に縛られないグローバルな楽しみ方ができるスポーツであることも認識していただけたらと思う。