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ラグビーイングランド代表の実力は?日本代表はW杯で「ニースの奇跡」を起こせるか

2022 7/25 06:00江良与一
ラグビーイングランド代表,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2023年フランスW杯予選プール最強の敵

2023年のラグビーフランスW杯予選プールで、日本代表(7月18日現在の世界ランキング10位)が戦うチームの中で最も世界ランキングが高いのがイングランド代表(同5位)だ。番狂わせが最も少ないスポーツとされるラグビーで、このランキングの差は勝利が限りなく困難であること示す。

しかし、ジャパンは2015年W杯で当時ランキング13位でありながら、同3位の南アフリカ代表を34-32で破る「ブライトンの奇跡」を起こした実績がある。

果たしてジャパンは「ニースの奇跡」(現地時間2023年9月17日にニースで対戦予定)を起こすことができるのか。7月16日に行われたイングランド対オーストラリア(21-17でイングランドが勝利)の一戦からイングランドの強みと弱みを探ってみたい。

伝統的な手堅い戦法を踏襲しながらプレーの質は格段に向上

イングランドの基本的な戦法は、実にシンプル。まず自陣から距離の長いキックを使って敵陣深くまで攻め込む。ゴールラインが近くなってからはFWがピック&ゴーや短いパスで密集近辺をしつこく攻める。そのまま敵ゴールになだれ込むこともあれば、機をみてBKで勝負することもある。

ラグビーの教科書にそのまま掲載したいような戦法だが、キックの精度の高さ、FWの強力さのレベルが世界屈指であるが故に貫ける戦法でもある。特に2015年の12月にエディー・ジョーンズ氏がヘッドコーチに就任してからは、強靭なフィットネスと、反則を極力減らす規律の正しさをチームとして徹底している。

プレーのタイプこそ、ラグビーという競技が始まって以来の古臭さだが、プレーの質は世界一と言ってよいほど突き詰められている。ゴール前のFWラッシュに見舞われてしまったら、止め続けるのは至難の業だ。この試合でも、トライに結び付いたのは一度だけではあったが、ゴール前では、再三オーストラリアFWを圧倒する場面があった。

BK陣は要注意人物揃い

まずはSOまたはCTBを務める、元主将でもあるオーウェン・ファレル(サラセンズ)。彼のプレースキックは正確無比と言ってよく、距離、角度に関係なく、自陣で反則を犯せばPGで即3点の失点を覚悟しなければならない。通算100キャップ間近という経験の豊富さもチームの財産である。

元々SOだったファレルをCTBに追いやってSOのレギュラーポジションを獲得しそうなのが、マーカス・スミス(ハリクインズFC)。23歳と若いが、視野が広く、FW、BKともに効果的に動かすことに長けている。また、ディフェンスを一瞬で置き去りにするスピードとそのスピードを持続できるのも強みである。

オーストラリア戦では右WTBに入っていたジャック・ノーウェル(エクセター・チーフス)。得点に絡むプレーこそなかったが、パントキックのチェイスでは常に先頭に立って相手と競り合う、またはボールをキャッチした相手に最初にタックルに行く、というタフさをみせていた。キックされたボールの処理が課題の一つであるジャパンにとっては地味ながら手ごわいプレーヤーとなりそうである。

キックの競り合いという意味では、FBのフレディ・スチュワード(レスター・タイガース)も脅威となりそうだ。196㎝という高身長でありながらランのスピードもあり、ジャンプ力にも優れているので、特にハイボールの処理に強い。ジャパンのバックスリーはスチュワード対策をしっかり講じておく必要がある。

ジャパンの勝機はどこにある?

まずは、イングランド以上にしつこく、力強くディフェンスし続けることが大前提。FWは試合開始から終了まで息つく間もないほどのパワープレーを強いられることになるので、今まで以上に過酷な修練を課せられるだろう。

FWが力負けしないという前提に立った上で、改めてこの試合を見直してみると、FWの強力さに比して、BKのラインデイフェンスには細かいほころびが度々生じていたように見受けられた。FW第3列の守備範囲の外側でBKが1対1の場面となった時に、CTBにタックルミスが生じてトライに結びつけられた場面があったのだ。

また、この試合で左WTBとして起用されていたトミー・フリーマン(ノーサンプトン・セインツ)はテストマッチ経験の浅さからか、デイフェンスの際のポジショニングが悪く、ライン際を簡単に抜かれたシーンが何度かあった。

ジャパンとしては、特にスクラムでは少しでも優位に立っておきたい。敵ボールを奪うことはできなくても、同等以上に組むことができれば、FW第3列の出足を遅らせることが可能だ。その上でCTBあたりの仕掛けで、BKのディフェンスにほころびを生じさせ、ジャパンの強力な武器であるWTBのスピード勝負に持ち込めれば、得点のチャンスは大いにある。

ジャパンにとっては、イングランドはエディー・ジョーンズ門下の「弟弟子」に当たる。今のところ残念ながら「恩返し」ばかりされてきたが、この辺でなんとか兄弟子の貫録を示したいところだ。

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