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【菊花賞予想】確固たる主役不在なら振り回せ 東大HCの本命は長距離戦で本領発揮する大穴馬

イメージ画像ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
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ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

“長距離らしい”ペースではない

10月20日(日)に京都競馬場で行われるのは菊花賞(GⅠ・芝3000m)。牡馬クラシックの最終戦だ。皐月賞、神戸新聞杯の勝ち馬サートゥルナーリア不在で一気に混沌としたメンバー構成になった一戦で狙うべき馬はどれか。

まずはレース展開や馬場傾向、コースの特徴といった点を分析していく。

前中後半5Fと1~3着馬の脚質ⒸSPAIA

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過去10年、最初の1000mが62秒以上かかったのは直近の2回だけ。2017年は歴史的な不良馬場、昨年はソラ癖のあるジェネラーレウーノが逃げたことでペースが上がらなかった。それ以外の年はだいたい1000mを60秒程度で通過しており、中距離戦とそれほど変わらない。むしろ神戸新聞杯の方がスローになりやすいくらいだ。

もちろんその分中盤で息は入るのだが、これがマクりたい馬にとってはおあつらえ向きの展開になるので、先行すると後続に「動いてこないでくれ」と下駄を預けるような競馬になりがち。末脚のある馬の方が計算は立ちやすい。

データ上も、17年の日本の競馬とは思えなかった不良馬場を除外すると前走で上がり2位以内だった馬が連対率23%、3位以下だった馬は連対率3%と明暗がはっきり分かれる。

今回の想定逃げ馬だが、最初は神戸新聞杯で逃げたシフルマンは押し出されるようにして仕方なく行くと見たが、それならセントライト記念で2番手だったナイママが外枠の距離ロスを嫌って逃げるか。いずれにしても長距離歓迎でスタミナを生かしたいタイプではないため、中盤が緩んで出入りの激しい展開になりそうだ。先行馬は割り引きたい。

やはり菊花賞は内枠優勢

現在、京都芝3000mで施行されるのは菊花賞と万葉Sの2レースだけ。そこで今回は過去10年に広げて枠順別成績を見た。

過去10年の京都芝3000m枠番別成績ⒸSPAIA

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勝率トップは2枠で単複回収率も100%超え。また、万葉Sは少頭数になりやすいためまだ外枠でも戦えるが、多頭数になる菊花賞では近10年で1~3枠が7勝、対照的に8枠は【0-1-1-28】と圧倒的に不利。コースデータ以上に内枠が有利だ。

続いて馬場傾向を考えていく。先週月曜の京都メインは内でためて直線は外という進路をとった2頭で決着。土曜に暴風雨の中でレースをやった影響が心配されたが、意外にも内の傷みは小さかった。今週の土曜にまた雨予報が出ているため馬場状態が変化する可能性もあるが、コースとレースの傾向からは内枠の差し馬が狙い目になる。

特大ホームランを狙って

神戸新聞杯の内容“だけ”を見れば3000mにも対応できそうな気配を見せていたサートゥルナーリアが回避。セントライト記念を勝ったリオンリオンも浅屈腱炎を発症して回避と混戦模様となった今年の菊花賞。それならば、高額配当を狙って人気薄から振り回したい。

本命はレインボーS3着から臨むヴァンケドミンゴ。中山、福島でしか好走実績がないのがネックだが、中距離戦だとなかなか進んでいかないレースぶりからして距離延長は歓迎だろう。そのズブさ故に外々を回らざるを得なかった前走は3着に敗れたが、9月の中山開催は総じてイン前有利の傾向だったので内容としては悪くない。ヒシゲッコウやホウオウサーベルといった2勝クラス勝ち馬が穴人気するなら同等の実績を持つこの馬だってもう少し評価されていいはず。スタミナはかなりありそうだし後方からの脚質という点も好材料。

対抗にはワールドプレミア。こちらも距離延長に不安がなさそうなのは好感。前走は超スローペースで後方からレースをしたためヴェロックスを脅かすには至らなかったが、サートゥルナーリアと同じ上がり32.3は能力の証しといえる。春の評判通り夏を越して急成長を見せた。

鞍上も京都長距離が超人的にうまい武豊騎手。16年、3000mは明らかに長いと思われていたエアスピネルで3着に入った際は、神戸新聞杯でそれまでとは変わって後方待機策をとって5着。この騎乗には当時批判もかなりあったが、今から思えば本番を見据えて我慢を覚えさせる布石だったのだろう。ワールドプレミアに関しても前走は「菊花賞を勝つため」の組み立てに映る。内目の好枠を引き当てたこともあり、人気勢では一番安定して結果が出せそうだ。

3番手はヴェロックス。以前にも書いたダービーの馬場状態から判断して能力の高さは言うまでもない。前走でドスローの神戸新聞杯でもなんとか折り合えていたように、距離が延びても我慢できるようには思うが、血統的にも本質は中距離までというタイプだろう。このメンバーで川田騎手なら好位に付けて器用にレースをしそうだが、菊花賞に関しては先行できてしまうことが逆に不安要素。7枠13番と外枠になったこともマイナス。

セントライト記念では春の勢力図的に2・3番手グループだったリオンリオンやサトノルークスを脅かす新星も出ず、やや内容的に寂しい一戦だった。上位馬も状態のいい内をロスなく立ち回ったもので、正直強調点に欠ける。ルメール騎手への乗り替わりで注目を集めるニシノデイジーだが、ダービーは内にこだわって直線にかけた判断がはまった分の5着と見ているので単純にヴェロックスとの比較で非常に厳しい戦いが予想される。内枠を加味しても△をギリギリ回すかどうか、という程度。

以下、△には別路線組で差す競馬をしてきた馬からディバインフォース、スミヨン騎手が騎乗するヒシゲッコウ、2年続けて菊花賞で穴を開けた阿賀野川特別勝ち馬のホウオウサーベルをチョイスした。

▽菊花賞予想▽
◎ヴァンケドミンゴ
○ワールドプレミア
▲ヴェロックス
△ニシノデイジー
△ディバインフォース
△ヒシゲッコウ
△ホウオウサーベル

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《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。