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【ローズS】素質開花アンドヴァラナウト! 勝ち馬以外に本番で警戒したい馬とは

2021 9/21 11:00勝木淳
2021年ローズSのレース結果,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

福永騎手の試行錯誤が導いた理想形

オークス4、5着馬が参戦したものの、重賞ウイナーはクールキャット1頭。オープン在籍は同馬のみで、3勝クラス4頭、残る13頭は2勝クラスという組み合わせ。やや小粒な印象は否めず、ハイレベルなオークスを好走した馬とそれ以外では差があるとみられた。だが、1着アンドヴァラナウト。2着エイシンヒテンともに2勝クラス在籍馬。特に勝ち馬は1勝クラスを勝ったばかりの昇級戦かつ格上挑戦を制した。

1勝クラスを勝ったばかりでローズSを勝ったのは17年ラビットラン以来。00年以降4頭目の記録だ。このうち重賞初挑戦はアンドヴァラナウト、ラビットランを含め3頭。04年レクレドールがいる。キャリア6戦すべてで手綱をとる福永祐一騎手が丁寧に競馬を教え込んだ成果が見事に出た。

混戦のトライアルらしく道中はスローペース。馬群がひと塊になり、リズムを崩す馬もいるなか、不利を受けにくい外目にポジションをとり、かつ馬の後ろに入るという理想的なレース運び。でき過ぎの印象もあるが、馬が難しいポジションで我慢できたことは今後に向けて強みになるだろう。

緩い流れのため、後続の押しあげが早めに来たが、勝負所で馬の後ろから外目に少し動いただけで、アンドヴァラナウトは瞬時にスイッチが入った。この反応のよさが後続を封じ、かつ逃げるエイシンヒテンを捕らえた勝因。

短いキャリアのなかで、マイル戦で飛ばし、2000mで好位に控えるなど理想形の競馬ができるように試行錯誤しながら馬を作りあげる、ここ最近の福永祐一騎手は職人気質が強い。ローズSはアンドヴァラナウトにとって理想の競馬だったのではないか。

血統に目を転じれば、母グルヴェイグ、母の母エアグルーヴのダイナカール牝系。この血統は基本的に晩成型が多く、3歳から4歳にかけての成長力が半端ない。全姉ゴルトベルクが同日中山で3勝クラスを突破したように、じっくり成長力を促すことが大事。それだけにこのあと秋華賞への連戦がどう出るか。一気に軌道に乗るかどうか注目したい。

本番で警戒したいのは

2着は12番人気エイシンヒテン。逃げが得意な松若風馬騎手を起用。発馬直後から先手を主張、内の馬が控え、マイペース。ただ1コーナー手前で外から一気にオパールムーンが切れ込むように番手にきて、10.9とレース最速ラップを刻んだ。その後は終始外に張るような走りになり、松若騎手が矯正する場面が目立った。そういった若さを見せながらも、前後半1000m61.2-58.8で逃げ粘った。

母エイシンサンバレー、母の父は快速エイシンワシントン。短距離型も多いが、半姉エイシンルカーノは中距離の逃げ先行でしぶとさを発揮。エイシンヒテンも春はマイル戦中心だったが、忘れな草賞、ローズSと2000m戦で逃げてオープン2着2回。中距離の先行がもっとも合う。相手のレベルがあがるほどに能力を発揮するタイプなので、本番も組み合わせと馬場状態次第で一発あってもいい。恵まれたといえばそれまでだが、最後の200m、アールドヴィーヴルにとらえられそうで捕まらなかった。甘く見ると痛い目に遭いそうだ。エイシンワシントンも単なる快速型ではなく、しぶとさを併せ持ったスプリンターだった。

3着アールドヴィーヴルは勝負所での反応が悪く、エンジンがかかってからは鋭く伸びたが、届かなかった。これはオークス以来の休み明けだったからだろうか。3勝クラス所属馬で秋華賞出走は安泰ではない。トライアルをひと叩きといった余裕はなく、しっかり仕上げてきた。

だからこそ、距離が短いという敗因も視野に入れたい。ハイレベルなオークスはクロフネ産駒ソダシが沈み、ゴールドシップ産駒ユーバーレーベンが勝ったように、どちらかというとスタミナを問われるステイヤー寄りのレース。ここで最後まで伸びて0.3差5着のアールドヴィーヴル、ローズSでの反応の悪さはそういった面が出た可能性もある。であれば、本番はハイペースになった際に出番はあるか。

以下は出走権を逃した組から。先行して粘り込んだ4着ストゥーティよりは5、6着タガノディアーナ、オヌールを評価したい。タガノディアーナは序盤で内と外の馬に寄られ、スムーズさを欠き、勝負所ではアールドヴィーヴルと接触する場面もありながら、最後まで集中して走った。本来はもっと前で競馬ができるので、2勝クラスを突破する力はある。

オヌールはさらに後ろから競馬を進め、勝負所でごちゃついた。フローラS1番人気、母アヴニールセルタン、全姉デゼルの超良血馬。古馬になって強くなる血統だ。

2021年ローズSのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)。


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