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【AJCC】瞬発力よりも総合力の高さがものをいう アリストテレスより狙いたい馬とは

2021 1/23 17:00山崎エリカ
2021年AJCC PP指数インフォグラフィック
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ⒸSPAIA

上級条件では3コーナー入口からペースアップすることも

AJCCが行われる中山芝2200mは、最後の直線の入り口からスタートして高低差5.3mの頂上を目指して坂を上り、向こう正面で坂を下るコース。外回りで円状コースということもあり、前半のペースが上がりにくい。

円状コースで最初のコーナーで外を回ると、終始外々を回ることにもなりかねないため、特に外枠の馬はロスを嫌って、前の位置を取れない馬は下げて内という選択をしてくることが多い。このためペースが速くないのに隊列が縦長となり、結果、後方勢が前を捕らえ切れずに終わる現象が起こりやすい。

しかし、上級条件だと前半5F目までがスローペースでも、向正面の下り坂で勢いに乗せ、3コーナー入口(おおよそラスト5F地点)から一気にペースアップする場合がある。実際に過去10年のAJCCでラスト5F目が最速だったことが2度あり、その年は3コーナー10番手以下だったヴェルデグリーン(2014年・1着)と2017年のゼーヴィント(2017年・2着)が連対している。

今回はジェネラーレウーノの逃げが濃厚だが、同馬は昨秋のオールカマーでは前半5Fを64.3というかなり遅いペースで逃げながらも、前記のような早仕掛けをされて失速している。今回は武藤騎手への手替わりとなるが、オールカマーの二の舞となり、差し馬が台頭するレースになる可能性も否定できない。

しかし、前半のペースが速くならないということは、好時計決着にはならないということでもある。このため平均的にスピードを持続させることが得意な馬が展開に関係なく上位入線することが多い。

最も狙いたいのはヴェルトライゼンデ

2021年AJCC PP指数インフォグラフィック


能力値1位のアリストテレスは、コントレイルを最も脅かした菊花賞2着馬だ。菊花賞ではコントレイルが最も取りたい位置である同馬主のディープボンドの後ろを取って、内のコントレイルを外に出さないようにふさぐ形で追走。しかし、4コーナーでディープボンドが内に進路を取り、アリストテレスが遠心力でやや外に膨らんだ間をコントレイルが突いて抜け出すと、最後まで2頭のマッチレースとなった。

3着のサトノフラッグを3馬身半差引き離していることからも、強かったのは間違いなく、4歳馬の中ではコントレイルに次ぐ、NO.2の評価ができる。また、前々走で芝2200mの小牧特別を早め先頭から押し切って勝利しているように、距離も問題ない。ただし、今回は菊花賞を大目標にした後の再始動戦。太目が残りやすい厳冬期でもあるだけに、半信半疑だ。それならヴェルトライゼンデの方に重い印を打ってみたい。

ヴェルトライゼンデは菊花賞で本来の能力を出し切れていないと見ていること、平均的にスピードを持続させることが得意と見ているからだ。同馬は菊花賞では7着に敗れたが、これは休養明けの神戸新聞杯でコントレイルと0.2秒差、2着まで追い詰めた反動だろう。その神戸新聞杯ではジリジリと最後までしぶとく伸びている。

また、神戸新聞杯では後方でじっと我慢し、3〜4コーナーでも最後方に近い位置で進めながら、できるだけロスなく内目のスペースを拾って4コーナーの出口に楽々と誘導できていたあたりからレースセンスもある。日本ダービーで完敗したサリオスのような切れる脚はないが総合力が高く、平均的にスピードを持続させることができるタイプだ。

菊花賞ではアリストテレスを徹底マークで乗り、後方からレースをした後の一戦となるために、今回で後方からの位置になり過ぎた場合を考えると上位の印を打つのは怖かった。しかし、内枠の今回はある程度前を意識して動いて行くだろう。本質的にはステイヤーだけに、楽に前の位置が取れればしぶとい粘りを見せてくれるだろう。

その他の能力値上位馬

【能力値2位 ステイフーリッシュ】
前半5F62.4-後半5F60.6のスローペースで流れた昨年のAJCCでは、最内の2番手から粘って2着。その時に記録した指数「-22」が同馬の最高値である。また、昨秋のオールカマーはかなり遅いペースで逃げるジェネラーレウーノの2番手だったが、3コーナー手前でカレンブーケドールが我慢できずに動いたことで同馬を目標に切り替えて動き、3着を死守することができた。

切れる脚はないが、平均的にスピードを持続させることが得意な馬。中山芝2200mなら前の位置を取ることができるし、後半が速くなっても前半のリードでカバーできる。ただし、同馬も今回は休養明けで急仕上げの感は否めないが、この中間かなりハードに追い切られているので、悪くない。当然チャンスはある。

【能力値3位 サトノフラッグ】
今回と同距離・コースの昨秋のセントライト記念で2着。同レースは、いかにも中山芝2200mらしく5F通過62.6のスローペースだったが、3歳戦としては後半の仕掛けが早く、ラスト4F目が最速。3コーナーで前がペースを上げたタイミングで一気に外から仕掛けて、2列目で直線を迎えたにせよ、逃げたバビットとの差は詰まらず、ラスト1Fで少し離された。

しかし、菊花賞ではバビットを逆転。出遅れて後方からのレースとなり、しっかりと脚を温存したことも良かったが、菊花賞3着は立派。自在性があり、能力や適性面でも問題がない。

ただ、同馬も昨年の目標は菊花賞で、今回はそこから立て直しての再始動戦となる。前走菊花賞でかなり後方からレースをしているだけに、最内枠でも前の位置を取るのは難しいだろう。序盤で置かれてセントライト記念の時のように、3コーナーの外から位置を押し上げる形となると、しまいが甘くなりそうだ。

【能力値4位 ジャコマル】
力の要る馬場で行われた昨年暮れのグレイトフルS(3勝クラス)を逃げ切った。同馬は前に行ってしぶとく粘る形になると能力を発揮する。前走で一気の距離延長に対応したあたりからも、豊富なスタミナがあると言える。雨が降ってスタミナが要求され、実績馬が休養明けの影響で息切れを起こした場合には、使われている強みが生かされそうだ。

【能力値5位 サンアップルトン】
芝の長距離が得意で、4走前には芝2500mのサンシャインS(3勝クラス)を勝利している。昨秋はオールカマーをひと叩きして、アルゼンチン共和国杯でも3着と好走したが、アルゼンチン共和国杯はペースも速く外差し馬場にも恵まれた。二の脚が遅いため芝2200mだと前の位置が取れず、展開待ちになってしまう可能性が高く、他力本願タイプだけに狙い下げたい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)アリストテレスの前走指数「-25」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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