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【菊花賞】淀の長丁場でゴールドシップの血が覚醒 三冠濃厚も狙うは大穴ブラックホール

2020年菊花賞 インフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

レース傾向に変化も?

10月25日(日)に京都競馬場で行われる菊花賞(GⅠ・芝3000m)。クラシック最後の三冠目をかけて牡馬18頭が未知の3000mという距離に挑むわけだが、注目は何といってもコントレイル。

秋諸戦の神戸新聞杯を危なげなく完勝し、父以来となる無敗の三冠に向けて死角はないようにも思えるが、他に抜けた存在はおらず相手探しは一筋縄ではいかないだろう。真に狙うべきは果たしてどの馬なのか。今週もデータを踏まえて検討していこう。

はじめに、当該レースにおける過去10年の傾向を分析する。

4角位置別成績ⒸSPAIA


全馬が未経験の長丁場とあって折り合い重視でレースが進むことが多く、キセキが勝利した不良馬場の17年を除いて前半は60秒から62秒程度に落ち着いている。

中盤に息が入りやすいという意味で距離への適性は問われにくく、勝ち馬の4角位置別成績を見ると、2〜5番手だった馬が6勝、6〜9番手だった馬が4勝となっており、最後の直線まで好位から中団で脚をためた馬が順当に上位に入っている。

とはいえ、そう決めつけるのはやや早計かもしれない。フィエールマンが制した一昨年はラスト3Fが34秒2という極端な上がり勝負になったが、昨年は一転して12秒台中盤のラップを刻み続けてラスト3Fが36秒2というタフなレースとなった。レース傾向に変化の兆しが見られている点にも注意を払いたい。

先週の秋華賞の勝ち時計2:00.6がレース史上2番目に遅いタイムであったことからもわかるように、直近の京都芝コースは時計がかかる傾向にある。馬場の低速化が進んでスタミナが求められるようなら、距離適性の差で台頭する馬もいるように思われる。

長距離で輝く新種牡馬

距離適性を見極めるうえでは長距離戦の好走経験が重要になってくるが、今年はアンティシペイトの除外によって芝2500m以上の経験がある馬はダノングロワール1頭となってしまった。そこで、今回は血統から潜在的な適性を追究してみたい。

過去3年 芝2500m以上の種牡馬別成績インフォグラフィックⒸSPAIA


距離を限定しても、リーディング上位の馬が当然のように良績を残しているわけだが、ここで注目すべきは新種牡馬の産駒。特にエピファネイア、ゴールドシップ両産駒はともに連対率35%超と好調であり、この世代だけでも距離延長で一変した馬が複数いるのは特筆に値する。

長距離のイメージが強い父ステイゴールド系はやや明暗が分かれており、ドリームジャーニー産駒は同時期の芝2400m以下で連対率17.2%に対して、2500m以上では10.7%と成績を落としている。該当するヴェルトライゼンデには少し心もとないデータだろう。

本レースのハナ候補はバビットとキメラヴェリテの2頭。枠順からバビットのほうが楽に先手を取れそうだが、競り合うようなら前半からペースが上がる可能性も十分にある。一昨年よりも昨年に近いタフなレースを想定して馬券を組み立てたい。

変わり身に期待

大本命コントレイルにはどうしても逆らえない面はあるが、馬券の中心に据えるという意味でブラックホールを本命に推したい。前走・札幌記念は9着に敗れたが、+20kgの太目残りで名だたるGⅠ馬たちを相手にしたと考えれば酌量の余地はある。

末脚に懸けるタイプでどうしても展開の助けは必須だが、断然人気馬を意識して各馬の仕掛けが早くなれば、後ろでじっくり構えるこの馬にもチャンスはあるはずだ。父ゴールドシップの制したこのレースで変わり身に期待してみたい。

対抗にコントレイル。これまでのレース運びを見るに、歴代の三冠馬と比較しても非常に死角が少ないように思われる。2枠3番という枠順から考えて崩れるシナリオがあるならば馬場状態の悪い内に閉じ込められるくらいだろうか。いずれにせよ能力が抜けているのは明らかであり、まず馬券的には疑いようがない。

3番手はヴァルコス。前走のセントライト記念は、上がり最速で追い込んで5着という競馬であり、明らかに中山コースが向かなかった印象。もともと大箱で良績を残しているし、舞台替わりは明らかにプラス材料。ここでこそ狙いたい一頭だ。

4番手には上がり馬からアリストテレスを推奨。前走・小牧特別は道中で内からハナを奪いそのまま押し切る競馬で、自在性と叩き合いを制する勝負根性はここでも侮れない。好調の新種牡馬エピファネイアの産駒ということでも評価を挙げたいところだ。

以下は実績馬を中心にヴェルトライゼンデ、サトノフラッグ、ディープボンドを押さえておく。加えてさらなる大穴としては、マンオブスピリットの名前を挙げておきたい。ここ2走はいずれも左回りでスムーズさを欠く競馬が続いているが、京都コースでは京都新聞杯2着をはじめ実績は豊富。一昨年3着のユーキャンスマイル、昨年1着のワールドプレミアとつばき賞勝ち馬が続けて好走していることも付言しておく。

逃げて連勝中のバビットに打倒コントレイルを託す向きもあるが、他にも有力なハナ候補がいる点や3000mという距離を考えれば近走ほど楽には運べないはず。ここは危険な人気馬とみなして「消し」評価としたい。

▽菊花賞予想▽
◎ブラックホール
○コントレイル
▲ヴァルコス
△アリストテレス
×ヴェルトライゼンデ
×サトノフラッグ
×ディープボンド
☆マンオブスピリット

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。


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