芝馬並の瞬発力
例年夏場でメンバーが集まりづらいエルムSだが、今年は出走馬14頭中10頭が重賞勝ち馬という好メンバー。ダートGⅠ上位勢から芝GⅠで勝ち負けを演じた馬まで、バラエティーに富んだ強豪馬を参考レースから精査していく。
※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。
【アンタレスS】
向正面入口から12秒台前半のラップを刻み続ける持続力比べ。コーナー角の緩やかな阪神競馬場ということもあり、比較的差しの決まりやすいレースだった。
1着馬ウェスタールンドは下り坂もうまく利用して大外一気。残り600-400-200mで計時した11.2‐11.5は芝馬のそれであり、ダートの上級馬としてはやや特殊なタイプだ。ただ、ラスト1Fで抜け出してからの脚が他馬と一緒になるあたりは爆発的な瞬発力の弊害であり、戦法としては末脚に懸ける形に限られる。その点では追走スピードが上がり、直線も短くなる札幌ダート1700m替わりはプラスとはいえない。
2着馬アナザートゥルースは58キロのトップハンデ、かつ終始外々を回る距離ロスの多い競馬だった。ウェスタールンドには切れ負けしたが、失速率の低い個別ラップからもコースや展開が変われば逆転可能な力関係にある。先行策でしか好走できないタイプであるため、距離短縮でのポジション取りが鍵になるだろう。
8着馬ロードゴラッソ、13着馬ワイルドカードは1角手前で寄られて接触する不利。それが無ければ上位争いできたかは微妙だが、その点は考慮したい。
格の違いを証明する圧勝劇
【マリーンS】
先手争いが激化したことで序盤が速くなり、中盤も緩まないタフなレース。先行勢が総崩れした通り、差し有利の競馬であった。
1着馬タイムフライヤーは中団でタメて、3~4角から進出開始。上がり3Fは12.5-12.6-12.2程度と加速ラップで突き抜けた。流れには乗ったが、このメンバーでは力が違ったと言わざるを得ない。
3着馬アディラートは、タイムフライヤーに先んじてペースアップしたが、ラストはタイムフライヤーに突き放される一方。力差を感じる内容だった。
13着馬リアンヴェリテは先手争いに参加したが、枠の不利もあって3番手から。ペースも速く、さすがに厳しい競馬だった。
エアスピネルのダートでの可能性は?
【プロキオンS】
34.3-35.6の前傾1.3秒だが、阪神ダート1400mのGⅢなら平均ペースの部類。結果の通り、前後の有利不利は感じない。
2着馬エアスピネルは芝スタートの助けもあり、初ダートでもポジション取りに苦労せず。ただ、展開に沿った競馬での2着であり、勝ち馬サンライズノヴァには上がり1Fだけで0.4秒の差をつけられ、さらには4着馬デュープロセスにも0.3秒詰められている。やはりベストは芝1600~2000mだろう。
9着馬ワンダーリーデルはエアスピネルと同じ上がり3F時計を計時したが、前との差を詰め切れず、後ろの馬にも差される形。決め手に欠ける競馬が続いている。
GⅠ級の2頭
ハイペースのフェブラリーSを3番手追走から5着と粘ったタイムフライヤーは、ダートでもGⅠ級の器。前走のハイパフォーマンスはフロックではない。
ただ、同レースでさらに厳しい競馬を強いられたのがアルクトス。コーナーの緩やかな札幌なら自身のストライド走法も存分に活かせる。巻き返しに期待する。
▽エルムS予想▽
◎アルクトス
○タイムフライヤー
ライタープロフィール
坂上明大
元競馬専門紙トラックマン。『YouTubeチャンネル 競馬オタク(チャンネル登録者40000人強)』主宰。著書『血統のトリセツ』。血統や馬体、走法、ラップなどからサラブレッドの本質を追求することが生きがい。