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石川遼、復活Vの裏にパットの安定感 バーディー獲得率1位

2019 7/10 07:00田村崇仁
3年ぶりに優勝した石川遼Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

国内三大大会初制覇で3年ぶり15勝目

やはりスターの輝きがあった。約4メートルのイーグルパットがカップに消えると、27歳の石川遼は握りしめた右拳を突き上げ、雄たけびを上げて歓喜を爆発させた。この日の37ホール目となったプレーオフの1ホール目。7月7日、鹿児島県指宿市のいぶすきGC(7150ヤード、パー70)で行われた第87回日本プロゴルフ選手権で激闘を制した男の目には「夢なのかな、と思った」と涙がにじんだ。

国内三大大会初制覇でツアー通算15勝目。今季は腰痛で国内開幕戦を欠場するなど苦しんだが、2016年8月のRIZAP・KBCオーガスタ以来、3年ぶりのツアー優勝を果たした復活劇の裏には積極果敢にバーディーを狙う攻撃的なゴルフを支えるパットの安定感がある。

平均パット数2位

2017年のシーズン終盤、5年間戦ってきた米ツアーを離れて国内ツアーに復帰。ドライバーを課題として取り組みながらフル参戦した18年は、優勝争いに加わりながら突き抜けることができなかった。

石川遼の部門別データⒸSPAIA

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日本ゴルフツアー機構(JGTO)の部門別データによると、今季の石川は平均パット数1.7207でトップの星野陸也に次いで2位。1ラウンド当たりのバーディー獲得率は4.63で堂々の全体トップだ。ドライバーの平均飛距離も315ヤードで全体5位と数字の上でも持ち前のアグレッシブなゴルフを物語るが、パーオン率59位、サンドセーブ率105位とショットやアプローチの精度がもう一つの中、ようやく全てがかみ合った結果だった。

7打差から驚異の追い上げ

九州南部で続いた大雨の影響で、決勝の2ラウンド分となる1日36ホールの長丁場で行われた最終日。首位で迎えた朝の第3ラウンドは2連続ダブルボギーなどで一時は首位と7打差まで後退した。だが攻めの姿勢を取り戻すと、最終ラウンドで驚異的な追い上げを見せ、最後は同組で重圧のかかった黄重坤(韓国)が17番で池に落として並んだ。

「優勝の2文字がガンと来た」。通算13アンダーの269で並んだプレーオフは勢いの差は歴然としていた。

渾身のイーグル

曲がるのが怖くて一時は握れなかったドライバーで最後まで攻めた。18番(パー5)で行われた37ホール目の勝負のプレーオフ。会心のティショットはカート道で跳ね、好敵手のボールを運良くアウトドライブした。

苦悩してきた間、心に刻んだ戦う相手の基準はいつも世界の一流選手。マイナスの部分にも目を背けず、ノートに記してきた生活が土壇場で生きた。残り200ヤードの2打目を5番アイアンで2オンに成功すると、ギャラリーが見守る中、渾身のイーグルパットを決めた。

米再挑戦、東京五輪も目標

東京・杉並学院高1年だった07年5月20日、プロツアー初出場となったマンシングウェアKSBカップで15歳245日というツアー史上最年少優勝を飾った。あの時も1日36ホールでプレーがさえ渡り、首位に並んで迎えた17番(パー3)でバンカーショットがそのままカップに吸い込まれるスーパーショット。一躍「ハニカミ王子」として有名になった。

復活優勝で取り戻した自信と笑顔。悩まされた腰痛は筋力トレーニングの成果で快方に向かっている。

「今のゴルフなら、これから先もすごく楽しみ」。5年のシード権を獲得し、20年東京五輪出場と米ツアー再挑戦を目標に掲げた。