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ケプカ時代到来へ「ザ・メジャー・マン」が全米プロ史上5人目の完全制覇で2連覇

2019 5/21 11:00田村崇仁
全米プロを完全制覇で2連覇したケプカⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

米ツアー6勝中、4勝がメジャー

「ザ・メジャー・マン」―。米メディアに「メジャー男」と呼ばれる29歳のブルックス・ケプカ(米国)がまたもメジャー大会でその勝負強さを発揮した。

男子ゴルフのメジャー第2戦、全米プロ選手権は19日までニューヨーク州ファミングデールのベスページ・ステートパーク・ブラックコース(パー70)で行われ、通算8アンダーの272で大会2連覇を達成。これで米ツアー6勝のうち、メジャーで通算4勝目と改めて底力を証明し、賞金198万ドル(約2億1780万円)を獲得した。コースレコードの63をマークした初日から独走し、単独首位を守り切る完全優勝は大会史上5人目で36年ぶりの快挙となった。

最終日6位で出た松山英樹は通算3オーバーの16位。ダスティン・ジョンソン(米国)が2打差の2位に入った。

全米プロゴルフ成績表ⒸSPAIA

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ウッズ以来12年ぶり連覇

最終18番グリーン。ウィニングパットを沈めたケプカは右拳を振り下ろし、満面の笑みでようやく緊張を解き放った。2007年のタイガー・ウッズ(米国)以来となる12年ぶりの大会連覇。

「間違いなく、ゴルフ人生で最高にうれしい瞬間だ。メンタルの勝利。最高に興奮している」。

7打リードで出た最終日は11番から4連続ボギーをたたき、一時はD・ジョンソンに1打差まで詰め寄られたが、大崩れせず、大きな貯金を生かした。ゴルフが4日間、72ホールの戦いであることを証明した形だ。

公式サイトによると、ウッズをはじめ各国のライバル選手も「メジャーで驚異的な勝率」「異次元の強さ」「勝ち方を知っている」と称賛の声を上げ、勝利をたたえた。

ケプカのメジャー全成績ⒸSPAIA

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鍛え上げた鋼のような肉体と同様、簡単にぶれないメンタルに強い芯が備わる。17年6月の全米オープン初制覇から開催されたメジャー8戦の勝率は驚異の5割。昨年は全米オープンでも2連覇を達成した。世界ランキングも3位から1位に復帰し、ケプカ時代の到来を印象付けた。

宮崎牛がパワーの源

12年にプロ転向し、主に欧州ツアーで戦って14年に初優勝。主戦場を米ツアーに移し、世界屈指の飛距離を武器に頭角を現した。

全米プロは7459ヤードの長いコースで、パワーを生かした抜群の飛距離は大きなアドバンテージ。フェアウエーを外すとトラブルになる今大会も平均313.2ヤードでランク11位と安定していたが、特に光ったのはグリーンに乗せるパーオン率で73.6%は全体1位。強風と長いラフの難コースに各選手が苦しむ中、バーディー数19個も1位と抜群の強さを誇り、ダブルボギーを一つもたたかない安定感が優勝につながった。

大会前、歴代王者を集めたチャンピオンズディナーが開催されるが、前年覇者ケプカがホストとして選んだメニューの一つは「パワーの源」という大好物の宮崎牛。日本ツアーのダンロップフェニックス(宮崎)で16、17年と2連覇しているケプカは宮崎牛のおいしさにいたく感動したそうで、今回は自ら購入して取り寄せたという。

10キロの減量成功

男子ゴルフ界をリードするケプカはムキムキの鍛え抜いた体でも知られるが、太すぎる腕はスイングの邪魔になるとの考えから減量を図り、昨秋から10キロほど体重を落とした。周囲からは「体のバランスが崩れ、スイングに悪影響が出る」と当初批判の声も出たが、武器である飛距離は落ちず、むしろ精度が上がったと自負する。

フロリダ州出身で強すぎるケプカに対し、ニューヨーク州で開催された今大会ではギャラリーの野次やブーイングも目立ったが、それも憎らしいほどの強さの表れで意に介さなかった。

4月のマスターズ・トーナメントは2位。世界の話題をさらったウッズ復活劇の引き立て役となったが、今回はその実力と勢いを見せつけた。ドライバーからアイアン、アプローチ、パッティングまで総合力の高さは誰もが認めるところ。1カ月後には、全米オープン3連覇の新たな偉業に挑む。