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紀平梨花4回転サルコー初挑戦「打倒ロシア勢」へ七転び八起き

2019 12/12 11:24田村崇仁
紀平梨花Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

GPファイナル4位、ロシア3人娘が表彰台独占

4回転時代に突入し、新世代が次々と台頭するフィギュアスケート女子。上位6人によるグランプリ(GP)ファイナルは12月7日、イタリアのトリノで行われ、ショートプログラム(SP)6位と出遅れた17歳の紀平梨花(関大KFSC)はフリー4位の合計216.47点で4位にとどまり、2連覇は達成できなかった。

それでも新時代に対応しようと4回転サルコーに公式戦で初挑戦。回りきって転倒したが、シニア1年目で躍進する「ロシア3人娘」に立ち向かう新たな一歩を示した。

初出場のロシア勢が表彰台を独占し、SP1位で16歳のアリョーナ・コストルナヤが3回転半を2度成功したフリーで2位となり、世界最高の合計247.59点で初制覇。15歳のアンナ・シェルバコワがフリー1位の合計240.92点で2位、同じく15歳のアレクサンドラ・トルソワが女子初の4回転フリップを決めて合計233.18点で3位となった。一方、2018年平昌冬季五輪女王で17歳のアリーナ・ザギトワ(ロシア)はミスが出て最下位の6位に沈む衝撃的な結末となった。

GPファイナル女子成績

攻めの決断、ミスでも手応え

フリーの冒頭、シニア2年目の紀平は迷わず大技に挑んだ。SP6位と出遅れたことで気持ちが吹っ切れ、今季の演目に入れることを目指した4回転サルコーに初挑戦。着氷で重心が後ろに傾いて転倒し、スコアにも大きく響いたが、ジャンプの回転軸では一定の手応えを得た。女子に訪れた4回転時代に対応するため、ロシア勢の背中を追う攻めの決断だった。

起き上がって直後に跳んだトリプルアクセル(3回転半)はリズムを崩して回転不足に。ただ練習でなく、本番で4回転に挑んだからこそ、これまで感じたことのない体へのダメージも分かった。

9月に左足首をひねり、ルッツを跳ぶと痛みがある状態でも、その後は踏ん張ってミスなく演じ、4回転を入れた構成を滑りきれる力を証明した。

異次元の4回転時代、トップと30点差

トップ3はシニア1年目のロシア勢が独占し、昨季とは比較できない異次元のレベルに上がっている。優勝したコストルナヤは3回転半を入れて4回転は跳ばなかったが、30点以上も紀平を離した。2位のシェルバコワは4回転を3本着氷、3位のトルソワは4回転を5本組み込む驚異的な構成に挑んだ。

紀平の技術点は77.90点。技術点トップのトルソワは96.80点で18.90点差、同じトリプルアクセル(3回転半)を武器に初優勝したコストルナヤとは10.97点差がついた。

表現力を示す演技構成点でもトップのコストルナヤは73.27点で、紀平の68.86点とは開きがある。昨年より優勝スコアは14.47点もアップ。この差を埋めていくには今後もフリーで4回転に挑戦し、攻めの演技構成にしていくことが近道だろう。左足首を完治させ、新たな武器である4回転サルコーを習得できればまた違う展開の勝負に持ち込める。

「練習の虫」で知られる紀平が大舞台で4回転サルコーに挑戦し、新境地を開拓できたのは大きい。初優勝がかかる次戦の全日本選手権(12月19~22日、代々木)で、4回転を組み込んだプログラムに再び挑む覚悟だ。

追われる立場から追う立場に変わっても、飽くなき情熱と向上心に変わりはない。現在は左足首のけがで回避している3回転ルッツも来年3月の世界選手権(モントリオール)までに解禁する意向という。継続して4回転サルコーに挑戦した上で、3回転ルッツも組み込んだ演技構成で「打倒ロシア勢」に再び挑む。

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