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宇野昌磨どん底から笑顔戻った!救世主は元世界王者ランビエル氏

2019 11/18 17:00田村崇仁
宇野昌磨Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ロシア杯で復調4位

コーチ不在でどん底の状態だった21歳の宇野昌磨(トヨタ自動車)にようやく笑顔が戻った。救世主となったのは元世界選手権王者のステファン・ランビエル氏(スイス)。

フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第5戦、ロシア杯は11月16日、モスクワで行われ、男子はショートプログラム(SP)4位の宇野がフリーでも4位の164.95点で今季ベストをマークし、表彰台こそ逃したが、合計252.24点で復調を印象付ける4位となった。21歳の友野一希(同大)はSPに続いてフリーも7位で合計237.54点で8位だった。

第3戦のフランス杯で2位のアレクサンドル・サマリン(ロシア)がSP、フリーともに1位の合計264.45点でGP初優勝し、シリーズ上位6人で争われるファイナル(12月5~7日・トリノ)に進出した。

ロシア杯成績ⒸSPAIA

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涙の8位から再起

今大会でリンクサイドに立ち、得点を待つ「キス・アンド・クライ」でも一緒に座ったランビエル氏の母国スイスで心と技を立て直した。ファイナルを含むGP13戦目でワーストの8位に沈み、たった一人のキス・アンド・クライで涙したフランス杯から約2週間。五輪チャンネルの公式ツイッターによると、宇野は2006年トリノ冬季五輪銀メダリスト、ランビエル氏の指導で演技に好影響を与えられ、心身を触発されたという。

シェイリン・ボーンさんが振り付け、昨季からエキシビションで演じる「グレート・スピリット」を演じたSP。冒頭の4回転フリップで回転が足りずに転倒したが、フランス杯で転倒した4回転トーループと得意のトリプルアクセル(3回転半)は勢いのある踏み切りから流れるように着氷して成功。出来栄えで2.51点の加点を引き出し、復活の兆しをアピールした。

フリーではスローテンポな曲調で、人気振付師のデービッド・ウィルソン氏が手掛けた「ダンシング・オン・マイ・オウン」の曲に合わせて演技を終えると、思わず苦笑いを浮かべた。

冒頭の4回転サルコーで転倒し、靴の中で左足の位置がずれるアクシデント。次に予定した4回転―2回転の2連続トーループを回避する異例のハプニングも意地で乗り越えた。終盤に両脚を180度開いて上体を反らせて滑る「クリムキンイーグル」などを入れた技を短くし、取り返すように演技の後半に4回転トーループに挑んだものの転倒。それでも宇野自身、この試合でトライしたのは自分の演技が試合でどこまで出るかを確認する作業だったという。

表現力を示す演技構成点は1位のサマリンと並んで86.78点でトップタイ。スピンも最高難度のレベル4を獲得した。表彰台には0.63点届かなかったが、その点でも最後に4回転トーループに挑んだことに意義があった。

V4目指す全日本にピークを

オフに5歳から師事した山田満知子、樋口美穂子両コーチの下を離れたが、新コーチが決まらずにシニア5年目のシーズンに突入。GPシリーズ2戦合計ポイントで上位6人に入れないことが確定し、シニア転向後4年連続で出ていたGPファイナルを初めて逃した。

ただ表情に暗さはない。4連覇が懸かる全日本選手権(12月19~22日・国立代々木競技場)に照準を定め、帰国して1週間ほどで再びスイスへ行き、ランビエル氏の下で指導を受けてピークを合わせる予定だ。

現役時代、スピンや芸術面で高い評価を受けて絶大な人気を誇ったコーチと新たな環境を整え、2018年平昌冬季五輪銀メダリストがどん底から巻き返しを図る。

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