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パトリック・チャンら引退 フィギュア強豪カナダは世代交代へ

2018 5/9 08:00川浪康太郎
パトリック・チャン,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

氷上のアーティスト、パトリック・チャンがリンクを去る

カナダの誇るスケーターが、競技人生に幕を閉じた。パトリック・チャン。その卓越したスケ―ティング技術で世界中のファンを虜にしてきた男が、惜しまれつつリンクを離れる。

シニアに移行した2007-08年シーズン、かつてのカナダを代表するスター、ジェフリー・バトルを抑えて史上最年少となる17歳でカナダ選手権を制す。その後も数々の国際大会で表彰台に上り、2010-11年シーズンからは世界選手権で3年連続の金メダルに輝いた。期待されたソチ五輪ではジャンプのミスが相次ぎ、悲願の五輪金メダル獲得はならず。

2014-15年シーズンは休養し翌年復帰すると、集大成の場となった平昌五輪は個人では9位に沈んだが、団体金メダルに貢献した。
「4回転時代」を迎えた男子フィギュア界の中で、唯一無二の存在であり続けたチャン。美しく繊細なスケーティング技術で、独自の世界観を紡ぎだしてきた。競技からは離れるが、数々の名演技はファンの心に残り続けるはずだ。

ペアのデュハメル&ラドフォードも引退を発表

チャンの引退から約10日後、またしてもカナダの名スケーターが引退を表明した。カナダのペア競技を引っ張ってきたメーガン・デュハメル、エリック・ラドフォードが共に平昌五輪を最後に競技から離れることを決めたのだ。

2010-11年シーズンにペアを組んだデュハメル&ラドフォード組。この年の世界選手権は7位。その後徐々に実力をつけ、2014-15年シーズンからは世界選手権連覇という快挙を成し遂げた。
2017-2018年シーズンはカナダ選手権で前人未到の7連覇を達成すると、平昌五輪に出場し、団体で金メダル、ペアで銅メダルを獲得。最後の舞台となった五輪で有終に美を飾った。

息の合った演技が持ち味で、スケーティング技術はもちろん、迫力のあるジャンプでも他を圧倒してきた二人。この二人も、チャンと共にカナダのスケート史に確かに名を刻んだ。

偉大な先輩たちを追う男子シングルとペアの次世代スケーター

カナダ男子の今後を引っ張ることとなりそうなのは、キーガン・メッシングだ。2017-18年シーズンに大きな飛躍を遂げ、平昌五輪では12位、世界選手権では8位に入り、存在感を示した。4回転ジャンプの種類は多くないが、個性的な振り付けと演技で観客を引き付ける。

現在26歳といわば遅咲きのスケーターだが、年齢が増すとともに深みを増しそうな独創的な演技に今後も注目だ。
ジュニア世代では、世界ジュニア選手権でジョセフ・ファンが4位、コンラッド・オーゼルが13位に入っているが、まだまだ世界トップレベルを見据えることができていないのが現状である。チャンを超えるスターは今後現れるのだろうか。

一方、ペアも後進の育成が急務となっている。平昌五輪では、伸びしろに期待がかかるジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組が9位、カーステン・ムーアタワーズ&マイケル・マリナロ組が11位に入っている。
デュハメル&ラドフォード組ほどの圧倒的な実力を手に入れるため、この2組を中心にし烈な争いが展開されることになりそうだ。

女子シングルは3番手の育成が急務

女子シングルを引っ張るのは、ケイトリン・オズモンドとガブリエル・デールマンの二人。
オズモンドは平昌五輪での銅メダル獲得後、世界選手権では各選手のミスが相次ぐ中圧巻の演技を見せ、見事世界女王の座を射止めた。デールマンも2016-17年シーズンの世界選手権で表彰台に上るなど、大きなジャンプを武器に活躍する実力者だ。

一方、この二人に次ぐ3番手が育ってきていないのも事実。
カナダ選手権では2位のオズモンドと3位のラーキン・オストマンで約50点の差があり、オストマンは平昌五輪、世界選手権共にフリーに進むことができなかった。二人の世界的スケーターを追い、ニューヒロインが現れることを期待したい。