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不屈の三原舞依、5年ぶりフィギュア四大陸女王に輝いた再起力

2022 1/27 11:00田村崇仁
三原舞依,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

北京五輪代表は逃すも「私は幸せ者」

22歳の不屈のスケーター、三原舞依(シスメックス)が四大陸選手権女王に返り咲き、力強く新たな一歩を踏み出した。

2021年12月の全日本選手権では惜しくも4位に終わり、3枠の北京冬季五輪出場を逃した。それでも2シーズン前には心身ともに体調を崩し、リンクに立つことさえままならなかった時期を考えれば、苦境を克服した「再起力」は目を見張るたくましさがある。

1月22日、エストニアのタリンで開かれたフィギュアスケートの四大陸選手権。ショートプログラム(SP)で三つのジャンプを全て成功させ、自己ベストを更新する72.62点で首位に立った三原は、フリーもトップの145.41点をマーク。自己ベストの合計218.03点で2017年大会以来2度目の復活優勝を果たした。

日々、ファンから送られてくる手紙や絵に「私は幸せ者だな」と思って励まされ、中野園子コーチの励ましに背中を押されて第一線に戻ってきた。演技後の中継局インタビューでは「始まる前から涙をこらえていた。表彰台の一番上に立つことができて本当にうれしくて、夢じゃないかなって思ったりもするんですけど、夢じゃなさそうなのでうれしいです。感謝の思いでいっぱい」と涙ながらに喜びを表現した。

自己ベストで魅了した「レ・ミゼラブル」

「緊張で地に足がついてなかった」というSPでは「レ・ミゼラブル」の「夢やぶれて」をほぼ完璧に演じきり、両拳を握りしめた。

「感情を込めて滑れた」との言葉通り、持ち味の表現力で女性の持つ芯の強さを取り入れたプログラムで観客を魅了。冒頭のダブルアクセル(2回転半ジャンプ)を軽やかに決めると、ジャンプは全て成功させた。ステップや持ち味のスピンでも最高評価のレベル4を得た。

女性ボーカルが入った壮大な音楽に乗せて情感豊かに演じ、技術点も演技構成点もトップ。3シーズンぶりに自己ベストを1.68点更新し「スピン、ステップの取りこぼしやジャンプの回転不足もなく、自信になった。ちょっとは前進できたかな」と本人も納得の演技だった。

涙、涙の「キス・アンド・クライ」

勝負のフリーは祈る思いで得点を待った「キス・アンド・クライ」でスコアが表示されると、歓喜の涙があふれ出た。

冒頭のルッツ-トーループの連続3回転から、7つのジャンプを大きなミスなく着氷させた。ほぼ完璧な内容で迎えた最後のスピンで珍しくミスも出たが、氷上の「妖精」のように華麗に舞い、スピンの指先にまで神経を行き届かせる細部にまでこだわった表現力は圧巻の出来だった。

総合力の高さで5年ぶりに頂点に立ち「終わってみると、最後のスピンがすごく悔しいなっていうのがあって(笑)。でも最後まで滑りきることができて本当にうれしかった。5年前は全然優勝とか考えず、すごくわくわくした気持ちで滑っていたと思うんですけど、今回はまた全然違って日本代表としてしっかり悔いなく責任持った演技ができるようにと、自分にプレッシャーを掛けていた。一番うれしい金メダルかなと思います」と万感の表情で喜びをかみしめた。

「元気の源に」と恩返しの思いで競技継続

今大会は欧州以外の国・地域(アメリカ、アジア、オセアニア、アフリカの4大陸)が参加する国際スケート連盟(ISU)主催のの主要国際大会。三原は4回目の出場で優勝2度、2位と3位が1度となり、全てで表彰台に立っている。

「日本代表として金メダルを持ち帰ることができるのは本当にうれしくて。全日本での悔しさを晴らせたかなと思います」と率直に語った。さらに「君が代をエストニアの素敵な街の舞台に流してもらうことができてすごくうれしいです」という言葉をさらりと言えるところも、彼女の人柄の素晴らしさが表れている。

いくつもの困難を乗り越え、戻ってきた氷上の舞台。リンクで舞うだけで見ている人たちが幸せな気持ちになる。そんな魅力を持った三原は「まだまだ恩返しして見ている方の笑顔や元気の源になりたい」と再び世界を見据え、来季以降も自身のスケート人生に重ねながら演技の中に「力強さ」を追求して現役を続ける。

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