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村元哉中、高橋大輔組は「超進化」の途中、五輪逃すも世界選手権で勝負へ

2021 12/29 17:00田村崇仁
村元哉中と高橋大輔,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

1.86点差、北京五輪切符は全日本4連覇の小松原組

1枠を争ったアイスダンスの直接対決で結成2シーズン目の村元哉中、高橋大輔組(関大KFSC)は惜しくも夢の五輪切符に届かなかった。

「超進化」の途中という2人の急成長ぶりは誰もが認めるところだが、フィギュアスケートの全日本選手権(さいたまスーパーアリーナ)で12月25日、4連覇を達成した小松原美里、小松原尊組(倉敷FSC)が最終選考会の成績を評価されて五輪代表に決定。

わずか1.86点差で2位となった「かなだい」ペアは2022年1月の四大陸選手権(タリン=エストニア)、2022年3月の世界選手権(モンペリエ=フランス)代表に選出され、世界との勝負に挑むことになった。

RDの転倒響くもフリーで意地の1位

フリーで演じたバレエの名曲「ラ・バヤデール」。村元、高橋組は優雅なステップとスケーティング技術で独特の世界観を演じきると、万感の思いを込めて抱擁を交わし、互いの背中をぽんぽんとたたいた。

リズムダンス(RD)の転倒が響いて4.81点差から逆転を狙った合計点では2位に終わったが、フリーは112.96点で意地の1位。スピン、リフト、ツイズルの全てで最高評価のレベル4を獲得した。

1年前は23.37点差で敗れたライバル小松原組と互角以上に渡り合えるまで「進化」した力を改めて証明した形だ。

合計点の自己ベストは11月のワルシャワ杯でマークした日本歴代最高の合計190.16点で、小松原組を17.96点上回る。それだけに2人が「悔しい」と繰り返したのはRD。ソーラン節や琴の音色が流れる「和」の演目で前半のステップで距離感が合わず、互いの足が引っかかるミスにつながった。

スポーツに「たられば」は禁物だが、仮にRDの転倒による2点の減点がなければ優勝できた可能性もある。35歳の高橋にとって、日本勢最年長と最多4度目を懸けた五輪は持ち越しとなった。

4項目の選考基準で拮抗も全日本の成績重視

アイスダンスの北京五輪代表選考基準は4項目。小松原組は全日本選手権最上位、今季を含む3シーズンの国際スケート連盟(ISU)世界ランキング最上位の基準を満たした。

村元、高橋組は今季のISU世界ランキング最上位、ISUシーズン最高得点でライバルを上回り、それぞれ2項目ずつを満たす全くの五分の状況となっていたが、選考理由は最終選考会の全日本の成績を重視した形だ。

アイスダンサーとしての将来性、来期以降も意欲

世界一のステップと評される高橋は男子シングルで出場した2014年ソチ五輪以来8年ぶりの夢舞台を逃したが、アイスダンサーとしての将来性も感じている。

リフト強化のための肉体強化に着手し、息の合ったツイズルや見せ場のリフトなど技術面も周囲も驚くスピードで成長。中継局のインタビューで高橋は「自分が滑る自信はかなりついてきている。だいぶ(2人の)世界観をつかんできた」と手応えを口にし、前回の2018年平昌五輪代表で28歳の村元も「理想的というか、進化しているスピードは速いと思う」とパートナーの成長を実感する。

現役引退からブランクの時期を経て復帰した高橋は、来季以降の現役続行に1年、1年が勝負になるとの意向を示した。北京以降の五輪への思いは「白紙」を強調したが、まずは四大陸選手権での表彰台、世界選手権での10位以内を目指すという。2人の「超進化」が世界の舞台で再びどんな輝きを放つのか興味は尽きない。

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